ホロライブオルタナティブ@upside down 作:風木守人
「うるせぇのら」
ルーナは町が視認できるくらいの距離になった頃、少し眉をひそめてそうつぶやいた。確かに、「クァ!」だの、「ガァ!」だの、「プォ!」だの、「シュバッ!」だの鳥の鳴き声が響き渡っていた。
周囲には白い羽毛がおびただしく散乱しており、途方もない数の鳥たちが周囲をはばたく影が、小さな陰影を大地に落とし込んでいる。
「気のせいか、僕今スバル先輩の……その……」
「鳴き声が聞こえたのら!」
「ちょ、折角言葉を選ぼうとしたのに!?」
かなたのツッコミが鳥の鳴き声にかき消された一方その頃、上空を飛び交う鳥の中に一羽、一線を画す存在がいた。
空を飛ぶために洗練されたフォルム、純白の羽毛にかたどられたやや小さな翼、黄色のくちばし。
しかし、その鳥の頭には何故か、やや淡い赤白青の
「しゅばぁぁああああ!!(訳:誰か助けろぉぉおおおお!!)」
まあ、スバルである。
より正確には、スバルドダックと呼ばれる、スバル初期装備の帽子をかぶったアヒルである。
しかし、中身は正真正銘、ホロライブ所属のアイドル大空スバルだった。
「しゅば! しゅば! しゅばぁ!(訳:異世界ものくらい知ってるっすけど、転生したらアヒルはねぇだろぉ!!)」
スケルトンとか、スライムとか、ゴブリンが定番だが、そのどれより弱そうである。
さて、【オルタナティブ】をプレイしていたスバルは、現在の状況を詳しく把握しそこなってはいたが、“夢オチでなければ非常識かつ異常事態”であることまでは理解していた。
ゆえに、空を飛んで状況把握に努めていたのだが、どういう訳だか周囲の似たタイプの鳥たちが追いかけてくるのだ。初めは縄張り意識のためかと思っていたスバルだったが、その考えが間違いだと、鳥たちの様子から理解するに至る。
「しゅばっ! しゅばぁああ!(訳:他の鳥マネしたら飛べるようになったっすけど、何でこいつらスバルに変な視線を向けながらついて来るんすかぁああ)」
そう、異世界系につきものな、逆ハーレム状態なのである。
ただし、相手は鳥だ。
主にカモとアヒルとハクチョウだ。
そんな風に、スバルが鳥類相手に誰も幸せになれない逆ハーレムを構築しつつある頃、地上ではかなたとルーナが首をかしげながら空を見上げていた。
どうやら、村が襲われているというよりかは、群れを成した鳥類がスバルに向かって殺到しているらしかった。
「どれがスバル先輩かわかる?」
「そもそも、どれがアヒルなのら?」
「……」
「……」
もしも、この場に獅白ぼたんがいればスキルと持ち前の視力、そして深い知識から見分けがついたかもしれないが、この二人には無理だった。
どうしようか、と考えあぐねている二人の頭に直接響くような機械的な声が聞こえたのは、その時だった。
【クエストの受注条件を満たしました】
「え?」
「なんなのら?」
困ったときのシステム画面と、二人がメニューを開くと新しく【クエスト】という欄が追加されていた。
いぶかしげにその欄を選択すると、
【クエスト:野鳥のアヒージョ】
「僕たちに何をさせる気だよっ!!?」
「さすがに食いたくねぇのら!!」
野鳥を倒して食料にしろという意味なのか、それとも、某ウサミミ少女の
「僕は空を飛んでスバル先輩探すから、ルーナは援護をお願い」
「気を付けて行ってくんだぞ!」
飛翔する天使としゃがみこむ姫君は、舞い散る白い羽毛も合わさって少しだけ神々しかったという。
「ルーナイト、来てほしいのら」
ところでこの時、ルーナは無意識に願っていた。
これまで二回召喚したルーナイトだったが、彼らはどちらも近接装備であり、現在のように飛行する敵を相手にすることは向いていない。
だから、遠くを攻撃できるルーナイトに助けて欲しい。
「【ルーナイト召喚】」
地面に光輝いた魔法陣から、甲冑が立ち上がる。
「むむむ……? 君、
胸元や関節を保護する軽装の装備に、木でできた大弓、矢筒。
簡易な
露出した筋肉が見て取れる肌は日焼けして、悠久の時を経た岩盤のように固く引き締まっていた。
「ルーナイト、スバルちゃ先輩を助けて欲しいのら」
こくこく、とルーナイトはうなずくと弓に矢をつがえる。
【ルーナイト召喚:弓兵解放】
もし、獅白ぼたんがこの場にいれば、ルーナのスキルが成長したことを理解できただろう。
スバルちゃんは某動画で空を飛ぶ鳥を見て「スバルだ!」って冗談めかして言うくらいオルタナティブに出たそうにされてました。
さらに、オルタナティブに出るならスバルドダック(アヒル)以外で出たいと切望されていましたので、空気を読んでアヒルとして登場してもらうことにしました。