ホロライブオルタナティブ@upside down 作:風木守人
ラミィを正気に戻したぼたんは、村や町を避けて高速で移動することにした。
既設の街道こそ通るものの、その間に情報収集した地理や地形の知識から、ここアマティアスの首都――その名もアマティアスだった――を目指していた。
ひとまず、他のホロライブメンバーの情報を収集する事を目的とするなら、人口が多い場所に行った方が都合がよく、自身の能力を考えるならば、多少強い敵は蹴散らせる。
そう言った判断から、ゲーム性を無視して他のホロライブメンバーと主にラミィの安全を考慮したししろんは、本日、朝日を浴びてこの辺りを縄張りとする
「うううーーーーーん!!」
「……ぅうう。すぅ、すぅ」
隣でぼたんの起床を感じ取った青髪の令嬢がうなっていたが、直ぐに眠りの世界に落ちてしまったらしく、かわいらしい寝息を立てていた。
布団を被せ直すと、機嫌が直ったように笑みを浮かべる彼女の頬をつんつんして、一人でニンマリするぼたん。
「ししろぉん……」
「……ラミィの夢に私がっ!!?」
思わずベッドから立ち上がる獅白ぼたんは、寝言すら可愛いラミィに[自主規制]な笑みを浮かべながら、未だに寝ている無防備なラミィを残して部屋の外に出た。
その時には朝のまどろみや、少しだらしがない笑みは既に消えている。キリリとした冷静なまなざしと引き締まった口元からは、高い知性と確かな自信がにじんでいた。
「おーい統領、ここらで私たちは失礼するぜー」
「おう、起きたのか」
片手を上げる粗野な振る舞いで返事をしたのは、朝から骨付き肉なんぞをほおばっている初老の男性だった。
彼こそ何を隠そう、この場所――既に家がとり潰しになった貴族の元別荘――を根城にした盗賊団の統領である。
「首都では、俺が言うのも野暮だが気をつけろよ。俺達みたいな目に見える悪い奴なんぞ、三流もいいところだ」
「ははっ、ギャンブルでイカサマして成り上がったっていう統領が言うと、なんか説得力あるね。気を付けるわ」
【クエスト】でこの統領と若頭の間で発生した対立を解消した獅白ぼたんは、盗賊団の面々から一定の敬意を払われていた。
統領の貴族と豪商しか襲わず、基本的に敵対しない人を殺さない義賊的な派閥と、とにかくお金を稼いで貴族などとの繋がりを得て地盤を固めたい改革派な若頭。
両者の仲裁をかって出たししろんは、全員を拳で分からせるという、非常にシンプルでえげつない方法を採用した。
①戦闘開始、②殴る、③起き上がるのを待つ、④戦意を確認、①に戻る。
これを相手の心が折れるまで全員に繰り返したのだ。
反抗的になるかと思いきや、その圧倒的カリスマと武力を前に、むしろ信仰に近いまなざしを向けられたので、
「こいつら全員ド〇なの?」
「ししろんっ!? センシティブだよ!?」
という会話がぼたんとラミィの間で発生したりしたが、それはさておき。
そしてそれは、ちょっと運動していい感じに体が温まってきた獅白ぼたんにより、特に意味もなく受理され、着地地点が誰にも分からない
そして、行き着くところまで行った結果、獅白ぼたんVS盗賊団全員という戦いになり、それでも圧倒的力でねじ伏せるししろんに、盗賊団側が一周回ってなんだか楽しくなってきたのは事実。……殴られすぎて頭がおかしくなっていなければ。
一部の感想を抜粋すると、「勝てる気がしねぇ……」「開始と同時に姿が見えなくなったぞ!」「姐御ぱねぇ!」「相手一人なのに複数の方向から飛び道具が飛んでくるんだけどぉ!?」「なんだか派閥争いが馬鹿らしくなってきたわ」「一撃だけでもいれるぞ統領!」「おう、おめぇ意外と根性あるじゃねぇか」「姐御のお陰であの剣呑だった統領と若頭に友情が……」「姐御……初めからこれが狙いで」「あるあ……無ぇよ、ただただ合法的に遊べて楽しそうな顔してんじゃねーか!」「逃げられないから立ち向かってるだけで既に心は折れてんだよぉぉ!!」
心が折られた者達の阿鼻叫喚はさておき、概ね丸く収まった。歯車のデコボコを適当に叩いて丸くするような方法ではあったが。
「統領、もし私達みたいな不思議な格好の奴がいたら、私に知らせてよ」
「おお、分かってるぜ。探してるお仲間だな。……野郎ども!」
現在、彼らがいるのは比較的大きなホールで、現在は食堂として使われている。
朝のいい時間という事もあって、統領の呼び声に応える部下は多い。
「応! わかってんぜ姐御!」
「見つけたらすぐ知らせるからな!」
「姐御のご指示とあらば何が何でも!」
そこはかとなく熱心なファンのような反応であった。
彼らの決意表明の声が大きかったのか、遅れてラミィが姿を現した。
まだ少し眠そうで、青い長髪もどこかほつれており、一度顔を洗った方がよさそうだ。
「ラミィ、ちょっと身だしなみを整えに行こう」
「うぁ……うん、わかったぁ……」
完全に寝ぼけた様子のラミィの手を引いて、ししろんは部屋に戻らせると、【アイテム】から身だしなみを整える道具とともに、僅かに青みがかった透明な液体が入った小瓶を取り出した。
「はい、寝ぐせ直すから後ろ向いて」
「はーい。ししろんは良いよね。私寝ぐせ酷くてさぁ」
「別に、ラミィの役に立てることが増えるからいいよ」
「ふふ、またそんなこと言って」
いちゃこらしながら髪をくしけずり終えたぼたんは、先ほど取り出した青い液体が入った小瓶の蓋を開け、明鏡止水の眼でその正体を確認した。
【ラミィ水:雪の令嬢が生み出した氷雪が溶け出した水。非常に純度が高い水だが僅かに混ざった成分により、体力等が回復する。売ると割と早く売り切れる。常温で放置すると変質することがあるので、取扱注意】
(ど う し て こ う な っ た !)
ラミィのスキル、【雪の令嬢】で発生した雪を飲み水にできないかと溶かしてみたところ生まれた、謎のアイテムである。
ぼたんは、それをためらいなく飲み干した
効果がいかほどかは不明だが、ラミィ水という響きが今日もししろんの活力となる事は間違いない。
「ししろん、それ飲むの好きだねぇ」
「……うん、好きだよ」
「ねー、今なんで照れた感じになったの?」
アイテム名は、口が裂けてもラミィには教えられないが。
現在の状況まとめ
天音かなた、姫森ルーナ、大空スバル
・某所の村にて【クエスト】で鳥の群れ(スバルの逆ハーレム)と交戦中。
・ゲームのような異世界とは気づいているが、ローブ男たちとは未遭遇。
・状況把握を優先し最寄りの村に移動中。
獅白ぼたん、雪花ラミィ
・アマティアスという現在いる国の首都へ移動RTA中。
・【クエスト】で盗賊団を配下に従える。
・ローブ男たちと交戦し、危機感を覚える。
百鬼あやめ、白上フブキ、大神ミオ
・三人ともローブ男の支配を受ける。
・……と思いきや、あやめは操られておらず現在スパイ活動中。
・赤ローブ男や【魔王】たちの目的とは?