ホロライブオルタナティブ@upside down   作:風木守人

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11.飛ぶ鳥を落とす勢いってたぶんそういう使い方しねぇのら

 空を舞う鳥類の群れの中から、的確にアヒルと化したスバルを見つけるのは非常に困難だった。

 その小さな翼で空を飛ぶかなたは、間違えてスバル先輩を攻撃してしまったら、と思うとためらってしまい、伸ばしかけた手を何度も引っ込めていた。

 天使の翼と悪魔(ゴリラ)の握力を持つ彼女の攻撃は、空を飛ぶために華奢な形態をとる鳥たちにとっては、必殺に等しい。

 

 しかし一方で、地上からルーナイトの射かけた矢は一羽、また一羽と寸分たがわず鳥たちの翼を射抜いていった。

 

「すげぇのらけど、君、スバル先輩の見分けついてるのら!?」

 

 コクコク、とうなずく弓を構えたルーナイト。

 頭を押さえるような動作から、帽子で見分けていることが分かり、一安心するルーナ。しかし、まだ不安がぬぐえないのか、落ちてくる鳥たちをみて言葉を繋いだ。

 

「それじゃ、どうして翼を狙うのら?」

 

 首元をかっ切るような動作をした後、ルーナイトは手に持った何かをひっくり返すように腕を動かした。

 

「血抜きするつもりなのら!? ガチなのら!!?」

 

 どうやら、姫様に可能な限り新鮮でおいしい野鳥のアヒージョを提供するつもりらしかった。

 やめて差し上げろ。

 

「え、それなら早く言ってほしかったのらって?」

 

 勘違いに気が付いたルーナイトは、弓に複数の矢(・・・・)をつがえるや、先ほどの二倍以上の速さで射出し、鳥たちを射抜いていった。その精度こそ、胸元やお尻のあたりに時折当たっているのを見ると僅かに落ちているようだが、外れた矢は一つもなかった。

 恐ろしい精度である。

 

「ヤベェ奴が来たのら」

 

 打ち抜かれた鳥たちは魔物と同様、墜落する途中で絶命したのか光の粒子になって散り、雪のように解けていった。

 ひとまず、血抜きの必要はなさそうである。

 

 さて、非常に頼れるルーナイトに若干引き気味の姫様はおいておいて、かなたとルーナの目的はスバルの救出である。

 

「スバルせんぱーーーい!!!」

 

 上空で必死で叫ぶかなただったが、その声をかき消すように鳥たちが鳴く。

 と、ルーナが地上から手を振っているのが見えたかなたは、一度地上に降りることにした。

 螺旋を描きながら降下し、最後にふわりと大きく、翼を振って着地する。

 

「ルーナイトがスバルちゃ先輩の見分けつくみてぇなのら」

「ほんとに!?」

 

 コクコクとうなずいた後に空を指さすルーナイトだったが、かなり高速で移動しているらしく、その指先は夜空の星座を結んでいるかのようにふらふらと動いていた。

 とてもではないが、指示をもらってから飛び立って追跡できる速度ではない。

 

「うーん、何とかリアルタイムで方向が分かるといいんだけど……」

「この子抱えて飛ぶのら?」

「飛翔能力までゴリラちゃうわ!」

 

 わちゃわちゃと言い争っていると、やれやれ、といった雰囲気を醸し出したルーナイトがルーナに片手を握り締めて上にあげる動作を繰り返した。

 かなたは首をかしげていたが、ルーナにはそれが何を意味するか分かったようだ。

 

「え、“応援”してくれたらいけるのらって? そんなうまい話があるわけねぇのら。君、ルーナにセンシティブな事でも言わせたいだけなのら!」

「なんで身振り手振りで意思疎通できてるのかはおいといて、ルーナイトはなんて言ってるの?」

「ルーナが“応援”したら魔法の矢が撃てるらしいのら」

 

 ルーナの目から見ると「やれやれ、嘘とは失敬な。姫様は自分の力をまだ自覚していない御様子。滑稽極まりないですな」といった、とても具体的かつ繊細な雰囲気を醸し出すルーナイト。

 かなたから見ると一人でルーナが勝手に怒っているように見えるので、何故意思疎通が成立するのか甚だ疑問であった。

 正直シュールである。

 

「あー、もしかして、スキル?」

「……あ」

 

 ルーナは思い当たる節があったらしく、すぐさまメニュー画面からスキルを選択した。そこには確かに、【アクティブスキル:ルーナイト召喚 パッシブスキル:応援】と書かれていた。

 ちなみに、これらの画面は使用者の意思で遮断・共有可能なので、うっかりしていた姫様の見ている文章は、残念ながら横からのぞき込んでいた天使や騎士も見ることができた。

 ものすごい、ジト目で。

 

「……すまねぇのら」

 

 屈辱的な顔で謝る姫様に、騎士はやれやれといった雰囲気を醸し出しながら【応援】を要求した。

 

「うーん、なるほどなのらぁ」

「どうしたの?」

「どうやら、ルーナの言葉でやる気が出るとバフがかかるらしいのら」

「なんてアバウトなスキル……」

 

「士気が満ちあふれていれば、あの空に浮かぶ月でも射抜いて御覧に入れましょう」と言いたげなルーナイトと、何を言えばいいのか思案するルーナ。

 

「えっと、頑張ってくれたらルーナとっても嬉しいのら!」

「……」

「……」

「……」

「草に草を生やすんじゃねぇのら!」

「ふふっ、今回はなんて言われたか分かったよ」

 

 おそらく、「草w」と返したルーナイトは弓に矢をつがえる動作をする。ただし、その手に矢はない。

 と、まるで鳥やモンスターを倒した時とは逆にその手に光の粒子が集まり、半透明の矢が形成された。当然のようにその矢を射出したルーナイトだったが、撃たれた矢は数メートル進んだ後に空中に静止する。

 すると、ルーナイトは手招きするような動作をした後、グッと手のひらを握って見せた。

 

「あまねちゃ、あの矢をつかんでほしいって言ってるのら!」

「わかった」

 

 ルーナに言われた通り無警戒にその矢をつかんだかなただったが、直後に後悔することになる。

 矢がものすごい速度で目標まで飛び始め――信じられない事にかなたの体を引きずるように空に向かって飛び始めたのだ。

 まるで、空に落ちていくような速度である。

 

「あああああぁぁあぁぁぁぁ!!!!」

「あまねちゃ!?」

 

 見上げると、既に鳥たちがいる高度に達していた天使に、何もできないと悟った姫様が無意識のうちにとっていたのは「敬礼」の姿だった。口がぽかんと開いているのはご愛敬である。

 そういえば、某ゲームでいたずらで空に射出された時、ルーナもこんな風に焦った記憶があった。

 

「……ところで君、クールなフリして意外とテンション上がってるのらね?」

 

 現実逃避も兼ねて、どや顔で尋ねる姫様から、ルーナイトは目をそらすように明後日の方向を向いていたという。

 

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