ホロライブオルタナティブ@upside down   作:風木守人

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13. 敵から見たらどう考えても初見殺ししらみ

 夜。

 それも、煌々と輝く松明を並べてもなお、夜空の星々が輝いて見えるほどの暗い夜には、思わずあくびが漏れてしまいそうになる。

 アマティアスを二分する暗部、裏の組織である東の盗賊団と抗争を繰り返す、西の山賊団のアジトで見張りを務めている男は、高く組まれた矢倉の上で暇そうにしていた。

 

 背後には山賊団の居城である古城、前方には鬱蒼とした森林と真黒な山脈が星々を遮るカーテンのように陰影を落としている。

 その男が見張りに立っているのは木で組み上げられた数メートル程度の高さの矢倉で、四角い塔のような形をしており、見張りと防御、戦争時には遠距離攻撃の拠点となる防御施設であった。

 

「ウチに攻めてくる命知らずなんていないのに、ボスは神経質だな」

「……おい、夜中とはいえ、誰かに聞かれたら――」

 

 たしなめる真面目な相方の声が突然聞こえなくなったため男がそちらを見ると、

 

「ったく、寒いからってきつい酒を飲みすぎたかオイ」

 

 男は呆れた様子でその、明らかに哨戒(みまわり)中に飲むべきではない火酒をあおると、相方の横腹をコツコツと蹴った。

 

「おい、ふざけてんじゃねぇぞ!」

 

 コツコツ、がいつしか打撲音に代わる頃、その衝撃でうつ伏せから仰向けに転がった男の額には、何やら注射器?のようなものが突き刺さっていた。幸い死んでいないようだが、金属でできた数センチの物体は、何らかの攻撃であることは明らかだ。

 

「て……ててて、」

 

 急速に冷める酒気に、ようやく事態の認識と呂律が追いつく。

 

「敵襲! 敵襲だ!!!! 野郎ども!!!」

 

 

 

 §

 

 

 

「状況は?」

 

 腕を組み、部下の報告を待っていたボスはやや神経質に人差し指で腕を叩いていた。

 顔はローブのようなもので隠れて見えないが、いらだつ声はボスが若い女性であることを示していた。

 

「分かりません。敵の数、距離ともに不明。正体不明の飛び道具で次々に手下どもがやられています」

 

 報告を聞くや、ボスは外に繋がる扉を蹴破るような勢いで開けて外へ出た。

 

「ボス!?」

「しっ……静かに」

 

 目を凝らして、ボスはじっとアジトの外の暗い森の、影絵のようなざわめきやどっしりと不動を貫く山脈を見つめた。

 そして恐ろしいことに、それは音を貫いてボスと報告した部下の眼前まで到達する。

 

「ひっ」

「……」

 

 それは、銃弾だ。

 しかし奇妙な事に、その弾丸はボスと部下の目の前で静止してそれ以上動かなかった。つ、とボスはその弾丸を摘まみ上げて観察する。

 

「……この世界(・・・・)にも銃があるの?」

「ボス?」

 

 数秒観察した後、ボスが摘まんでいた銃弾は不思議な輝きの後、消失した。

 

「通達! 武器の性質は分かりました。おそらく、超遠距離からの狙撃です。遮蔽物に身を隠しなさい! この武器は直線的な攻撃しかできません!」

「は、はいぃ!!」

「魔法が使える方は壁を作るか、風や水の流れで軌道をそらしなさい! 勝てる戦です! 冷静に身を守りなさい!」

 

 そう言いながらも毅然と足を進めるボスに何度も銃弾が飛んでくるが、その全ては見えない何かにからめとられるようにして、空中に静止しては消されていく。

 

「落ち着いてください。この攻撃は、せ……ボスの防御を突破できていません」

 

 的確な判断と指示でもって士気を高めながら、山賊団のアジトから打って出ようとしたボスだったが、突如としてさらなる異変を感じる。

 暗い。そして、極度に寒い。

 

 先ほどまで満天の星空が広がっていた空は、ところどころかすんでしまって、雪が降り始めていた。

 極端な温度の変化は再びの混乱を生む。

 

 そしてそれを皮切りに敵が銃弾をボス以外へと標的を変えた。

 

「くっ」

「なんだこれ、うわっ」

「モンスターまで出やがったぞ!」

 

 さらには、何故か雪が降り積もり始めたあたりから、周囲に白い熊のような小型のモンスターが出現し、山賊たちを襲い始めていた。

 幸い、相手にこちらを〇す意図はないようで、撃たれた山賊たちは皆気絶しているようだが、それにしても超遠距離からの狙撃に、古城の防衛機構を無視した城内へのモンスターの召喚。

 どう考えても相性が悪すぎる。

 

(籠城は……すべきではありませんね)

 

 拠点という地理的な優位性が完全に失われているうえに、自分たちには援軍を要請する相手もいない。ならば、迅速に敵を排除すべきである。

 ボスは即座に判断すると、先ほど報告をしてきた部下に一旦指揮権を委譲する。

 

「単騎で出ます」

「……人数が多ければ行軍速度が落ちていい的、散開すれば能力に劣る俺たちは各個撃破されるから、ですか」

「理解が早くて助かります。軍師くん」

「ガラじゃねぇです、ボス」

 

 ツルツル頭をバンダナで覆っている大柄な部下が恥ずかしがっているのを一瞥すると、少しだけ笑って肩の力を抜きながら、ボスは古城の外へ駆けた。

 

「テメェらしけたツラしてんじゃねぇ! ボスの出陣だ! 声張れ!!!」

「おおおおおぉぉぉおおお!!!!」

 

 軍師、などとからかわれた意趣返しか、残された部下はボスの勝利を祈願し、自らを鼓舞するために部下とともに野太い咆哮を夜闇にささげた。

 

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