ホロライブオルタナティブ@upside down 作:風木守人
「なぁ、そろそろ手駒増やさね?」
「俺もそう思ってたところ」
「だ、大丈夫かな?」
白上フブキ、大神ミオ、百鬼あやめを支配した(と思っている)三人のローブ男たちは、数日をかけて一通り支配下の三人のスキルや自身のスキルの確認を行い、支配する相手を増やすべきでは、という意見が出た。
しかし、百鬼あやめを支配した【呪文】のローブ男、メガネをかけおどおどとした彼は、どうやら慎重派らしかった。というより、他者を傷つけることに忌避感を覚える程度に、優しさを持っていたと言うべきか。
「なぁに言ってんの? リスクのない勝負なんてないし?」
「そうそう、終わりよければ結果オーライ的な」
しかし、彼ら三人にも明確な力関係があるようで、二人は馬鹿にするように鼻で笑うと、百鬼を召喚したローブ男の肩に腕を回した。
「なぁにシケたこと言ってんのよ、問題ナッシング」
「俺達ぁ、こんなスキルもらったんだから無敵だって。それに彼女らぁも強いからな」
「……」
その強さを証明されたからこそ、メガネのローブ男は苦言を呈したのだが、他の二人はわかっていないらしい。
なにせ、白神フブキと大神ミオにセンシティブなことをしようとして、二人が死にかけたのだから。
それを目の当たりにした眼鏡のローブ男は、人間が放物線を描いて空を飛んだ場合、割と地味な音で墜落するんだな、と現実逃避気味に眺めていた。
というか、素手で殴っただけなのにそれだけの威力が出せるのは、アイドルの身体能力としてどうなんだ、とも思う。
しかし、これらの出来事から、おそらく彼らの支配スキルには、一定以上相手の嫌悪感がトリガーとなるのか、あるいは彼女達の活動している動画配信サイトの制限に準じているのかは分からないが、隠しパラメータ的な拒否権のようなものが設定されているようだ。
(ぼ、僕らのスキルには、僕らが知らない制約と効果がある。そ、それを理解するのには、まだこの世界に来てからの期間が短すぎる)
もし戦闘中に支配が解けたらどうするのか、支配する駒の数に上限がある可能性は。
そもそも、三人の支配するスキルに差があることから考えて、まず間違いなく長所や短所があるはずだ。
しかし、それらの主張が理解されることなく、とある村に滞在するホロライブメンバーをターゲットとして、村への奇襲作戦が計画されていった。
「な、百鬼さん、ちょっと相談があるんだけど」
「なんだ人間様、改まって?」
眼鏡のローブ男は、百鬼あやめにかいつまんで状況を説明した。
「ふぅむ、なきりしもあらずだな」
「あ、あのね、本当に話聞いてた?」
「ああ、あの二人を止める密命ということだな。しかも、他の人間様二人に気づかれずにか」
「い、意外と的確に理解してたね!?」
そう、眼鏡のローブ男は今回の襲撃をこっそりと失敗させ、あわよくば他の二人の警戒心をあおろうと考えたのである。
しかし、そのためには。
「先輩二人を相手に、正体を隠したまま引き分け以上の結果を出さねばならんということか」
「そ、そうなんだ」
「わかったぞ」
困難という言葉すら生温い条件を聞いて、百鬼あやめは腕を組んだものの、笑顔でうなずいた。
その姿に、眼鏡のローブ男はある種の憧れを抱いた。
「すごいな、百鬼さんは」
「……? どうしたのだ?」
「な、なんでもないよ。た、ただ……」
眼鏡のローブ男はきっと、百鬼あやめ達の対極に在る存在だから。
夢を見て追いかけ、がむしゃらに努力を続けて、いずれ追いかけた夢よりなお、遥かに輝く存在になる彼女達とは。
「うらやまし――いや、悲しいんだろうね。僕には僕が成功する未来が見えないし、君みたいに任せてって言えない。せいぜい、このスキルがなくなっても、君に見捨てないでって祈ることしかできない。僕には」
「……人間様、それは出来ない相談だ」
しかも、彼らは彼女達の敵なのだから。
「余や余の友達に手を出した人間様達を、余は許さない」
「……」
「しかし、」
この時、眉根を寄せていた百鬼あやめは、眼鏡のローブ男の前で、初めて心の底から花の開くように笑った。
「葛藤しながらも進もうとする人間様は、嫌いじゃない余っ!」
§
さて、数刻後。
とある村へと夜襲をかけようとした白黒獣耳コンビの前に、顔を布で隠した不審者が立っていた。
「余は百鬼あやめではない」
最初から、全部白状した。
「なぞなぞ仮面だ」
ブハッ、と猫っぽい白狐が吹き出した。
なぞなぞ仮面
かつてホロライブメンバーのライブ配信に現れ、突如なぞなぞを出題して去っていく謎の人物として知られていた。
その正体は不明とされているが、時折猫っぽく鳴く、白上フブキと声がよく似ている、ガチャで大爆死したらしい、などと言う証言もある。
その正体は一体だれなのかなぁ。