ホロライブオルタナティブ@upside down 作:風木守人
「天音どなただよっ!?」
雷のように空から落ちてきた少女、自称「剣豪かたなそ」に思わず突っ込んだ百鬼あやめだったが、その答えが返る前にその手に光る刀が一閃された。
「お、やるじゃん」
「ちょ、いきなり何を――!?」
数回、刀同士が打ち合う金属音がした。
しかし、その速さゆえに常人には一つの音に聞こえたことだろう。その太刀筋の正確さ、体の急所と攻防の合間を縫うような剣戟は、あやめが舌を巻くほどだ。
しかし、かたなそはなぜかあやめをまじまじと見て、しょんぼりと肩を落とすと、その刀を鞘に納めた。
よもや、実力に不満を抱いたのかと闘争心と対抗心をかき乱されるあやめだったが、
「ふわぁ、せっかく見つけたボクの斬撃を全部受け流せる達人なのに、愛刀持ちかぁ……」
「???」
「その柄巻の手擦れやら何やらを見れば分かるよ。君、その二刀相当使い込んでるよね」
「そうだが、お互い様だろうに」
「はぁっ、やっぱりかぁ」
よくわからないことを言ってうなだれるかたなそ。
声は天音かなたによく似ているが少しハスキーで、よく見れば金髪に褐色の肌だけでなく、その翼は烏の濡羽のように艶やかに黒々と、しとやかに光っていた。
(やっぱり、かなたちゃんじゃないぞ)
あやめは主にかたなそのお腹より上、首より下の部分を最後に観察してそう結論づけた。
一体何があるというのか。あるいは、オリジナルは
「でも、すごいよ君! ボクの斬撃を全部受け流して平然としてるし! しかも本来は二刀流なんでしょ!?」
「ん? ああ、そうだがお主は誰なのだ?」
戦意を感じないかたなそに毒気を抜かれたあやめの口から、素直な疑問が飛び出す。
「剣豪かたなそって知らない? 結構有名なんだけどなぁ」
「すまないが知らぬな。余はこの辺りに来たばかりなんだ。しかし、お主は私の友人によく似ている」
「えっ! それってボクみたいに強いって事!?」
百鬼あやめは少し考える。
天音かなたは確かに強い。主に握力が。
その握力の強さは一流のアスリートにすら引けを取らず、一部にゴリラなどと呼ばれるものの、体躯はあやめ同様小柄な方で、
また、刀を握り振るうことを考えると、握力が強いということは意外に重要な要素である。
「強いどころか手の力(握力)だけなら、余より遥かに強いぞ。強すぎて、ゴリラなどと不届きなことを言う者がいるほどだ」
「きゃはっ⭐︎ 世界は案外広いなぁ。今日だけで二人もお気に入りを見つけるなんてね。ところで、」
一瞬にして二閃。
かたなそは会話のスキを見て近づいてきた大神ミオと白上フブキをその大太刀の峰打ちにて下がらせた。
(やはり、余に攻撃した時もじゃれついた程度か。本気を出し合えば分からぬが、刀の速度だけなら二刀流では負けるやもしれんな)
試してみたい気持ちはあれど、実行すればそれはすなわち、試合にあらざる○し合いである。
「うー、ボクこの二人嫌いー!」
当のかたなそはそんな雰囲気は微塵も感じさせずに、白黒獣耳コンビを嫌そうにジト目でにらんでいた。
「そう邪険にしないで欲しいな。あのお二人は余の友人なんだぞ」
「あ、ごめん。君……えーっと」
「なぞなぞ仮面……などと言っとる場合ではないな。百鬼あやめだ余!」
「ボクはかたなそって呼ばれてるけど、なんか気が抜けるからカタナって呼んで欲しいな」
かたなそ改めカタナは、好敵手と認めたのかあやめにそう名乗ると、すぐさま視線に怒りを乗せる。
「戦場に出る誠意がない。というか、雑魚が遊んでんじゃねーよ!!」
再び抜刀したカタナの剣戟は怒りを乗せてなお正確無比。
それでいて急所を外しながら峰打ちと牽制攻撃を織り交ぜる。
「戦う意志が、戦禍に戦華を添える。君たち誰に操られてるの!?」
ほんの少しの交戦で、どうやらカタナは二人の攻撃に意志の重さがないことを看破したらしい。
しかし、彼女一人で退けられる程、白黒獣耳コンビは甘くない。
あやめより速度があるものの、大太刀一刀による攻撃は見切りやすいのか、ミオは的確に間合いを外し、時折ふぶきが援護するように割って入る。
(なるほど、最高速で突っ込んで斬り合ったのち、遠心力を利用して手足で攻撃しつつ、勢いを殺さず離脱する。技のモーションが大きい割に、空も飛べるせいで相手には反撃のスキが無く、何より常にトップスピードで駆け回る)
その姿はさながら、
数度の切り結びを静観したあやめは、カタナの力量を把握した。
これなら、あるいは。
「うー、もう! 意志のない攻撃って気持ち悪い!」
「なあ、ここはカタナちゃん?」
「うん、仕方なさそう」
二刀流を使いこなす鬼には一撃必殺の威力があり、大太刀を振るう黒翼の天使には雷光の如き速度がある。
「ひとまず、」
「共闘だ。きゃはっ⭐︎」