ホロライブオルタナティブ@upside down 作:風木守人
服が脱げないことに気がついた天音かなた、姫森ルーナ、大空スバルの三人は何故なのかと首を傾げる。
言われてみれば、名前の通りの大空をあれだけ飛んでいて帽子が脱げなかったスバルも異常だったし、残りの二人も服を脱ぐ機会などなかった。
「はっ、まさかルーナに「臭ぇのら!」って言わせるために……!?」
「んな馬鹿な!」
「しゅば!」
ああでもない、こうでもないと三人で話し合っていたところで、突如として大空スバルはある共通点に気がついた。
(そういえば、かなたもルーナも初期衣装というか、姫森ルーナ、天音かなたって言われたら一番に想像する服装ッス)
そして、先のクエスト発生時の、
【error! 大空スバルを人間にしてください。】
というアナウンスを思い出した事がトリガーとなって、何かがスバルの中でカチリとはまった。
まるで雲を突き抜けてその上へと飛び立つように、視界が開けていくのが分かる。
(まさか、海外ニキに認知されたせいで大空スバルより、スバルドダックが多くの人に知られて、有名になったとして……)
服が脱げない理由、自分がアヒルになっている理由。
そして、人間にしてください、というさも本人の意思によって変えられるかのようなーー【設定】的なシステム音声により、大空スバルは理解したのだ。
(メニュー画面さん!
【ッ!? 使用条件を満たしました。メニュー画面に【アウトフィット】を追加します】
(きちゃあーーーー!!)
隠し機能を強引にこじ開けたアヒルは、その本来の姿を取り戻す。
アヒルの時と同じやや大ぶりな帽子を被った黒髪短髪の小柄な少女。
青、赤、黄緑と言った鮮やかな色を織り交ぜた服装は、利発かつ活発に走り回る姿が目に浮かぶようだ。その瞳はカラフルな服装を反射して、水色に近い瞳に僅かなグラデーションを与えていた。
「おっしゃぁーー! 強靭! 無敵! 大空すばーーう!」
自重しろ。
そう言いたくなるくらいポジティブで、太陽のように明るい彼女こそ、大空スバルである。
「スバル先輩!?」
「しゅばが人間になったのら!」
「こちとら元から人間じゃーーー!」
「天使です」
「姫様なのら」
「オチを求めんじゃねーーー!」
これこそスバルだ、となぜか嬉しくなる二人。
あとかなたはこっそり、ツッコミ役が来たからボケに回って大丈夫だと
そんな風に、スバルの負担が目に見えないところで増えていたことはさておき、人間に戻ったスバルは他の二人と同じようにメニュー画面を開いて首を傾げる。
本来、【スキル】【アイテム】【仲間】【クエスト】【アウトフィット】と表示されるはずのメニュー画面が、【しゅばっ!】【しゅばぁ】【しゅしゅば】【しゅばる】【しゅばしゅば】【しゅばぁ】と謎の選択肢に変化していた。
(まさか……最初アヒルだったせいでアヒル語で書かれてるんじゃねーだろーな!?)
どうやら、お察しの通りである。
推測を重ねればメニューの機能は使えなくはないが、スキルは全くの不明であった。
【しゅばば!】
【しゅばー】
・【しゅーばー】
・【しゅばるるる】
なんか楽しそうな言語だなぁ、とスバルは現実逃避した。
「0と1だけのプログラムほどじゃねぇけど、なんとも言えねぇ言語なのらね」
「そもそも、鳴き声というかなんと言うか……」
「ちょ、こんなスバルを見るなッス!!」
横からスバルのメニュー画面をのぞき込んでいた二人のうちルーナは、試しにルーナイトを喚んでみることにした。
「うーん、さすがに鳥言語わかるルーナイトいなさそうなのらぁ」
「逆にいたら怖ぇよ!!」
いつもの召喚に応じたルーナイトだったが、そのルーナイトは一切の武装をしていなかった。
すらりとした体躯と燕尾服のシルエットは、まるでどこかの物語から出てきた執事さんのようだ。
「うぅん、無理に喚んですまねぇのら」
申し訳なさそうにそう言ったルーナにペコリと美しい礼をするや、ルーナイトはどこからか、控えめなデザインだが明らかに高価なティーセットを取り出して手招きした。
慣れた様子のルーナ、仕方なく続くかなた、最後に何が起きたのか理解していないスバルが席につく。
「あ、ありがとうッス」
音もなく椅子をひいてくれたルーナイトに礼を言うスバルだったが、なんとなくオチを察してちょっと涙目だった。
ルーナイトが手慣れた手つきで紅茶を入れ、一番初めにそれを口にしたルーナが一言。
「いい感じにお茶をにごせたのら!」
「てめぇの執事腕良すぎてむしろ透き通っとるわ!!」