ホロライブオルタナティブ@upside down 作:風木守人
「ふむ、戻ったか【黄】」
「【赤】かよ。【青】のやつはどうしたんだ?」
「さっき戻った。そういうお前は随分やられたようだが?」
「はっ、そっちこそ後進育成に御執心なようで?」
「そういう契約だからな」
その場に居合わせたものがいればーーそれこそあやめ達を操っているローブ男達がいれば背筋が凍るどころか、凍って砕け散りそうな重圧をかけ合いながら、赤ローブの男と黄色ローブの男が煽りあった。
もっとも、二人にとってそれはあいさつに等しいし、険悪な間柄でもない。
「今回喚ばれた奴らはそれほどに強いのか?」
「いや」
否定の言葉に首を傾げる赤ローブ男だったが、懐かしい名前とスキル名を聞いて、その感情の機微を理解した。
「使ってきたスキルが【
「……そうか」
コツコツと二人の靴音が響く
しかし、白亜の石材で作られたそれらを観察した者や知識あるものは度肝を抜かれるだろう。
なにせ、それらには一切の継ぎ目がなく、一個の途方もない巨岩をくり抜いて作られたものだと理解できてしまうから。
「ずいぶん遅かったじゃねぇか(何かあったのかって心配したよぉ)」
と、柱廊の半ばで青いローブをまとった男が現れ、非常に大きなキンキン声でそう叫ぶように言った。
「どこかでくたばっちまったのかと思ったぜ(無事で良かったよぉ)」
偽悪的なセリフの割に、副音声で内心が漏れ聞こえるほどに赤黄ローブ男二人は、この青ローブと付き合いが長すぎた。
「【魔王】を待たせるんじゃねぇ、早く行くぞ(魔王ちゃんも心配してるはずだから、早く行って安心させてあげなきゃ!)」
ぶっきらぼうに言い置くや、青ローブ男はズンズンと先に進んでいく。
赤黄ローブ男は顔を見合わせて肩をすくめると、足早に歩を進めた。
同じ景色が繰り返される柱廊を抜けると、開け放たれた扉の先に大きく開けた空間があった。
その奥には、三人の男達にとっては見慣れた玉座があった。
玉座に座するは長身の女性。
白銀の長髪に切長の眼差しはやや鋭く、肌は目が覚めるように底抜けに白い。アメジストを思わせる紫色の瞳は、今は3人の男達を冷たく見下ろしていた。
「【魔王】、そろったぞ?」
代表して赤ローブ男が
「一体なぜ?」
部下に問いかけているようでも、あるいはパズルでも解いているようでもある伽藍堂な声音は、冷たい石材でできた彼女の部屋の中に小さくも、響き渡った。
「お前達魔王四天王は三人しかいないのだ?」
しかし、続く問いかけに答える声は意外にも否定的かつ騒がしかった。
「またその話かよ。つーかてめぇがんなこと言い出すから、【赤】の奴がポンコツ教育に苦労してんだろーが」
「待て、今あいつらをポンコツと言ったか? 訂正しろ」
「あん?」
急に配下をかばうのかと黄ローブ男が怪訝な声を上げたが、
「あいつらはポンコツどころかかなりのクズだ。一緒にされたポンコツに謝れ」
「どこの誰を擁護してるんですかねぇ!」
論点がずれていた。
「はっ、ケンカなら受けて立つぜ(仲裁しなきゃ)」
「【青】は黙っておけ。……ところで、そもそも信号機のように赤青黄と名乗っている俺たちに4人目が加わった場合、一体何色になるんだ……!?」
「ぺーぺーの青二才なんざ無色でいいだろぉ(みんなちゃんと働く前は無職だよね)」
「大喜利始めんじゃねぇよ自由か!」
意外と仲良く口論を続ける三人だったが、続く言葉は予想を裏切るものだった。
「試験的に数人【支配】しておいた」
コツコツと複数の足音が三人の男達の背後、柱廊から聞こえてぴたりと立ち止まる。
「【青】よ、彼女達を任せる。好きに使え。【赤】は引き続き奴らの育成を続けろ。【黄】は情報収集しながら……ホロライブメンバーといったか? 彼女達の情報収集と偵察を一任する」
「わかったぜ! 任せな(ふえぇ、初対面の相手は緊張するよぉ)」
「承った」
「はいよー。ま、頑張らせてもらうわ……それより、【魔王】よぉ?」
黄ローブ男は自身の手元で光を押し固めた針のようなものを生成するや、玉座の足元に向けて放った。
「分かっている。ネズミが入り込んだらしいな」