ホロライブオルタナティブ@upside down   作:風木守人

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4.ルーナイト召喚

「【ルーナイト召喚】!」

 

 紫と緑のオッドアイに決意を宿し、ピンクを基調としたドレスをはためかせたルーナがそう叫ぶと、地面に不思議な魔法陣が走り、光り輝いた。

 思わず目を閉じた彼女が目を開いた時には、目の前に甲冑の騎士が片膝を折り、かしずいていた。

 

「んなぁっ!?」

 

 かなたが立ち向かっているゴリラのようなモンスターかと警戒して、ルーナは悲鳴を上げたが、その様子を見た甲冑はおろおろと両手と首を振りながら、土下座をし始めた。ガン、ガン、と重い金属鎧の頭を、繰り返し地面に打ち付ける音が響く。

 その様子はまるで、言葉を発せないのにしきりに敵意がないことを示そうとしているようだった。

 

「え、えっと、ルーナイトなのら?」

 

 ルーナに声をかけられた甲冑は、ビクッと反応し、俊敏に両膝と手を地面につけながらコクコクとうなずいた。

 その様子は申し訳なさそうでありながら、声をかけられてどこか嬉しそうでもあった。

 

「敵じゃねぇのら?」

 

 そう問われた甲冑は自分の腰元を見降ろした。

 そして腰に帯びた巨大な剣を見つけると鞘から引き抜くや、己の首の装甲の隙間に差し入れながら、次のルーナの言葉を待った。

 そこはかとなく、悲しい覚悟を決めた哀愁が漂っていた。

 

「んなぁあ!!?」

 

 ルーナに疑われ、怖がられ――そして何より彼女が望むというなら、無条件で自害すらいとわぬ覚悟であることは、明らかだ。

 見上げた忠誠心である。

 ルーナは慌てて呼び出した本来の理由を話した。

 

「今、あまねちゃが戦ってるアレと戦ってほしいから喚んだのらけど……」

 

 ルーナイトは振り返って状況を把握したようで、立ち上がるとルーナに背中を見せる。

 

「あ、待つのらよ」

 

 ルーナの命令に従って、甲冑の手足が歩みを止める。

 そして、天命を受けとった。

 

「ルーナイトとして、忠誠を尽くしてくれるのは嬉しいのらけど、死ぬんじゃねぇのらよ! ルーナ、君が傷ついたら泣くのらよ! 悲しいのらよ! 強くても、負けそうなら逃げていいのら! 絶対に、自分を犠牲にするんじゃねぇのら!」

「!!?」

 

 甲冑はほんの一秒ほど、カタカタカタカタと、不自然な震える音を響かせてから、かなたが戦うゴリラの方へ走る前に、重く重く、うなずいた。

 ルーナイトの身長は遥かにかなたより高いが、それでも異世界のゴリラの身体は異常に頑健であった。

 だが、悲鳴を上げたのはゴリラの方だった。

 

「ごぁぁぁあああああ!?」

 

 ルーナを愛するルーナイトという存在は、ゲーム上ではあるが自身の身体より数倍大きな怪物に立ち向かい姫を守り切った実績すらある。そして、それを成してなお、名乗りもせずに去っていく真正の騎士であった。

 それが、姫直々の勅命――それも自身が傷つけば姫が悲しむという――を受けて奮い立たずに何が騎士か。今、彼の士気は空より高く、もとより、忠誠は海より深い。

 そして、ルーナイトの戦闘能力は、もし現実世界に全員が顕現すれば姫の一言で世界征服すらできるのでは、と言われるほどに高かった。

 そんな騎士の一人である甲冑はゴリラに大剣で追撃を加えると、空を舞うかなたに頭部を向ける。

 

「ないすぅ!」

 

 意をくんだかなたは、一気に加速してゴリラの頭部に両手を向けた。

 岩を砕く握力に野生の勘が危機を伝えたのか、ゴリラは初めて魔法のような能力を行使した。

 それは一つの方向に向けた放電に近い。

 

 対象は、かなただ。

 

「ごぁあ!?」

 

 だが、その一撃を甲冑は許さない。

 自身の大剣を振るい射角を狂わせた。明後日の方向に走る青白い雷に冷や汗を流すかなただったが、頭部はがら空きだった。

 そして、天音かなたが両の手をゴリラの頭部にかざす。

 

「ぎゅっ、ぎゅぅぅぅう!」

 

 ぐちゃ、とトマトがつぶれるような音がした。

 

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