遊戯王ARC-V 黒竜を従えしデュエリスト   作:鈴木颯手

12 / 42
第十二話「レジスタンスの影」

「え!? この次元にエクシーズのレジスタンスが!?」

「可能性の話だ」

 

 スタンダード次元におけるリリーサーズの拠点にてNo.4はリョーマから聞かされた事に驚いていた。

 

「LDSの関係者を襲撃している人物が榊遊矢にそっくりだったらしい。俺はその人物をエクシーズ次元で会っている。そいつを目撃した奴らがそろって似ていると言っているのだから間違いはないだろう」

「榊遊矢ってエキシビションマッチに出場していたユーリに似ている奴の事ですよね? それでエクシーズにもいるとなるとやっぱりシンクロにも……」

「可能性はある。No.11には調査を進めさせている」

「成程……。そう言えば隊長は舞網チャンピオンシップに出場する予定とかありますか?」

「何だそれは?」

「まぁ、この次元でプロになるために必要なものですね。今年は俺も出場するつもりでいるんですよ。もし出場するのなら公式戦で6回連勝する必要がありますけど」

「……状況が状況だ。参加するつもりはない。お前は予定通りにそれに出るといい」

「了解しました」

 

 No.4はそう言うとデッキを広げて調整を始めた。それを見たリョーマは一言呟く。

 

「……あ(・)の(・)カ(・)ー(・)ド(・)は抜いておけ。まだ使うな」

「っ! やっぱりだめですか? あれ強いから気に入っているんですけど……」

「まだ使う時ではない」

「……了解しました」

 

 No.4はリョーマの断固とした意志を見てトホホとデッキからそのカードをぬきとった。そして、代わりのカードを入れてデッキの調整を進める。それを見たリョーマは立ち上がると拠点を後にして町へと繰り出した。

 

―LDSの関係者を襲撃しているという事は……、レジスタンスはLDSがアカデミアと繋がっていると思っているのか。いや、おそらく赤馬零児だろうな

 

 アカデミアの頂点にいるプロフェッサーの名は赤馬零王だ。赤馬零児の父親であるため父親をおびき寄せようと思っているのだろうとリョーマは予想する。そうしている内に気付けばLDSの前に来ていた。LDSは闇討ちを受けているせいか警備が厳重になっており関係者でなければ入る事は難しい状況にあった。特に用事はない為そのまま通り過ぎようとした時だった。

 

「あれ? リョーマじゃん。どうしてここに?」

「……素良か」

 

 LDSの周りをうろついていた素良が話しかけてくる。相変わらず菓子を食べており自身の顔の半分はありそうなぺろぺろキャンディーを持っていた。

 

「君もLDSに用事? もしかしてあの赤馬零児?」

「いや。偶々だ」

「あ! やっぱりここにいた!」

 

 そこへ柚子も現れた。彼女の視線から素良に用事がある事が分かる。

 

「今度は赤馬零児の事を狙っているんでしょ」

「え? なんでわかったの?」

「遊矢の時と同じ! 興味を持ったらすぐについて行こうとするんだもの!」

「だが相手は社長だ。そう簡単に会う事は難しいだろう。それに、この状況ではな」

 

 リョーマはそう言いながらLDSの正面ゲートを見る。たくさんの警備人が居り入る人には指紋認証で必ず確認を取っている程に厳重だった。リョーマがエキシビションマッチを見る前に訪れた際にはここまで厳重な警備ではなかったことからもどれだけ重大な事が起こっているのかが分かる。

 

「兎に角! 一緒に来て! あ、リョーマさんも!」

「え? ちょ、ちょっと!」

「……」

 

 柚子は素良とリョーマの腕を取るとそのまま走り出す。突然の事で驚く素良は制止の声を出すも聞き入れてもらずリョーマは困惑したままなされるがままとなっていた。

 そして、そんな三人を見ている人物がいる事に、終ぞ気付く事は無かった。

 

 

 

 

 

「何なの? こんな所に連れてきて」

 

 柚子が連れてきたのは港に存在する倉庫の一つだった。素良は不思議そうに中に入りリョーマも大人しく入る。それを確認した柚子は扉を閉めると二人に向き直った。そして、何かを決意したような表情をすると息を大きく吸って言葉を発しようとした時、リョーマは爆弾を投下した。

 

「……逆レ〇プか」

 

 その言葉はその場を凍らせるには充分すぎる威力を誇っていた。柚子は硬直し、言葉の意味を理解すると顔を真っ赤にして、素良は意味を知らなかったのかキョトンとしている。

 

「……ねぇ、リョーマ。逆レ〇プって何?」

「それh「そんなわけないでしょっ!」……何でもない」

 

 柚子のハリセンを顔面に受けたリョーマは一瞬の間の後に言葉を撤回した。素良もあまり突っ込まない方がいいと判断したのかそれ以上聞く事は無かった。

 改めて少し顔を赤らめつつも柚子は言った。

 

「お願い! 私に融合を教えてほしいの!」

「融合を?」

「うん」

「……ここでか?」

「駄目?」

「なんでまた……」

「強く成りたいの。今のままじゃ、駄目だから」

「……もしかして、あのお姉ちゃんに負けたの、悔やんでるの?」

「……」

 

 素良の言葉に柚子は黙り込む。その通りらしいがリョーマは寝ていた為どのようなデュエルだったのかは知らないが少なくとも敗北している事は分かっていた。

 

「……私も遊勝塾を守れるようになりたい、あの光津真澄に勝ちたいの! だから……!」

「融合を使う俺達に教えて欲しいという事か」

「そう、だからお願い!」

「うーん……」

「俺は構わない」

 

 悩む素良に対してリョーマは即答した。別に教えたところで問題ないと判断しての事だった。

 

「え、いいの? 僕たちが教えたら確実に強く成っちゃうよ?」

「いいじゃない。私を誰にも負けないくらい強くしてよ」

 

 素良の自信満々な言葉に柚子はさらに詰め寄るように言う。そして、根負けした素良はリョーマと共に教える事となった。

 

「はい、これが“融合”のカードね。この魔法カードを使って素材となるモンスターを融合させる。それが基本中の基本だから。いい?」

「うん、大丈夫」

 

 素良が取り出した融合カードを柚子は受け取りテキストを読む。そんな柚子にリョーマは捕捉すように言った。

 

「“融合”のカードは専用のカードも存在している。融合使いの女が使っていた“ジェムナイト・フュージョン”がいい例だ。大体そう言った専用の融合カードは他に何かの効果を持っている。俺が使った“真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)”はデッキからも融合素材を使う事が出来、“真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)”として扱える。“ジェムナイト・フュージョン”はそう言った効果はないが墓地から手札に戻せる能力がある。ターン1制限がないから素材さえあれば無限に融合が可能だ」

「成程……」

「だが、そう言ったものを使わないのなら融合カードは手札、フィールドから墓地に送りエクストラデッキから融合召喚するだけだ」

「だから大事なのは呼び出す融合モンスターの素材がそのどちらかに全部そろっている事。リョーマが言ったような例外はあるけどね」

「融合を発動したら融合素材モンスターを墓地におくって融合モンスターをフィールドに出す……」

「そうそう……っ!」

「誰だ!」

 

 それに気づいたのはほぼ同時だった。素良はその人物を追いかけリョーマは回り込むように走り出す。何が起こっているのか分かっていない柚子を放っておいて二人を挟み込むように覗ていた人物にデュエルディスクを向ける。その人物もデュエルディスクを構え前後の二人に警戒している。

 

「君、何者? こっちの人じゃないよね」

「……素良、前に言っていた奴だ。まさかつけられていたとはな」

「……お前も「あ!」っ!」

「貴方、この前の……!」

「え? 柚子の知り合い……?」

「あ、うん。この前沢渡とここで……」

「……成程」

 

 柚子の言葉を聞きリョーマは理解する。彼が沢渡を襲った結果顔がそっくりな遊矢が犯人と間違われたという事だろう。

 

「今度の事件も貴方がやったの?」

「事件?」

「LDSの講師が襲われたらしいの」

「LDSの? ……ああ、それであんなに警備が厳重だったのか」

 

 素良は納得がいったのか改めて目の前の男の方を見た。

 

「……で? 君がその犯人」

「の可能性は高いな。若しくは協力者か」

「……」

 

 素良の言葉に答えたのはリョーマだった。ここまでの情報だけでもその可能性は高いだろう。

 

「……貴方、何物なの? 沢渡とデュエルをしたのは私を助けるため? それともLDSに恨みが?」

「……それは」

「犯人はお前か!」

 

 男が何かを言おうとした時だった。閉められていた扉が開き一人の女性が姿を現した。遊勝塾を賭けたデュエルで柚子が対戦した女性光津真澄だった。その瞳は憎悪に溢れ男を睨んでいた。

 

「光津真澄!?」

「マルコ先生に何をした。答えろ!」

「貴方まで、何故ここに……?」

 

 柚子は予想外と言える人物の登場にうろたえている。

 

「最初の事件現場に行けば何かあると思ったけど、ここに潜んでいたのなら探す手間が省けたわ!」

 

 そう言うと真澄はデュエルディスクを装着して起動した。しかし、そんな彼女の行く手を柚子は妨害する。

 

「ちょっと待ってよ! まだ私はあの人に話が……!」

「話はこっちが先だ!」

「何言ってんの!? それに、今回の事件の犯人が彼かどうか……」

「それは! そいつがエクシーズを使うかどうかを見ればわかる!」

「エクシーズ? へぇ、そうなんだ」

 

 真澄の言葉に素良は不敵な笑みを浮かべる。

 

「確かめてやる……! さぁ、私と戦え! 行くぞ! デュエルだ!」

「ちょっとやめてよ! もういい加減にして」

 

 柚子は問答無用で話を進める真澄に更に詰め寄る。その時だった。柚子が付けていたブレスレットが光り誰もの視線がそちらに向かう。そして、光が収まった時には既に男はいなかった。

 

「え?」

「あ……」

「いない!?」

「……」

 

 四人はそれぞれ違う反応をしつつも一瞬で消えた事に驚いていた。リョーマは一瞬転送系の機能を疑ったが何か不審な動作などしておらず明らかに柚子のブレスレットが原因と思われた。

 

「あの時と同じ……」

「おーい! 柚子―! いたら返事してくれー!」

 

 思わず柚子がそう呟いた時だった。外から遊矢の声が聞こえてくる。その声と共には知って来る足音も近づいており倉庫の中にいる柚子を見かけると止まった。

 

「遊矢!」

「あ! 柚子! よかったぁ、塾長が心配だから俺に探しに行けって……。何してんだよ、電話にも出ないでまたこんな所で……」

 

 遊矢はそう言って心配そうに柚子に話しかけているがこの場に置いて遊矢の登場は最悪と言えた。案の定、光津真澄の表情は険しくなる。

 

「榊遊矢! やはりお前もあいつの仲間か!」

「え!? お前は……、って素良も?」

「答えろ! あいつを何処へやった!?」

 

 一人状況が呑み込めていない遊矢は間抜けな表情をしているがそんな彼の胸倉をつかみ真澄は問いかける。しかし、その口調は荒々しく完全に遊矢を犯人の仲間として見ている様だった。

 

「あ、あいつ?」

「とぼけるな! 早くアイツを出せ!」

「だからアイツって誰だよ!」

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 困惑し真澄の成すがままにされている遊矢と真澄を引き離し柚子も遊矢の方を見た。

 

「遊矢も本当に知らないの?」

「柚子まで……。何言ってんだ?」

「……前の時も、遊矢が来たら彼が消えた」

「? 彼?」

「いいから! 奴を出せ!」

 

 柚子は自分の周りで一体何が起きているのか分からないようで眉を落とし自身のブレスレットを眺めている。そんな柚子を遊矢は不思議そうに見ているがそこへ再び真澄が詰め寄る。再び胸倉をつかみそうになる真澄に遊矢が一歩後ろに下がりそうになった時だった。

 

「あ! あそこに!」

「え?」

「いたよ今! あっちに逃げてった! ほら、急いで追いかけないとまた逃げられちゃう!」

「くそっ! 逃がすか!」

 

 素良の言葉にハッとした真澄は遊矢を押しのけて倉庫を出て言った。その後ろ姿をぽかんとした表情で見送る柚子と遊矢。彼女の姿は遠くになった時、遊矢は素良に尋ねた。

 

「誰かいたのか?」

「嘘だよ。あのお姉ちゃんがいたら特訓の邪魔だしね」

「特訓? ここで柚子と?」

「うん。柚子が次は絶対に……あ」

 

 そこで素良は秘密だったかもと思い柚子の方を見るが当の本人はブレスレットの光が気になってほとんど話を聞いていなかった。

 

「もしかして、僕とリョーマから融合を習っているのって秘密だった?」

「柚子が融合を? それってジュニアユース選手権の為に……」

「え?」

「……」

 

 そこまでの様子を黙って見ていたリョーマはデュエルディスクを外しながら倉庫を出る。そこで漸くリョーマの存在に気付いたのか遊矢は驚いた顔をしていた。

 

「……どうやら今日はここまでにした方がよさそうだな。教えを請いに来た本人は集中できる状況にはなさそうだからな」

「それもそうだね。そう言えば選手権って何? 僕も出られるの?」

「年間の勝率六割以上必要だったはずだ。それも五十戦以上でな」

「リョーマさんの言うとおりだよ。お前、舞網市に来てから日が浅いだろ? 50戦もしてないだろ」

「えー!? 駄目なの?そんなぁ……。僕も遊矢と一緒に出たいのにぃ」

「……あ! そう言えば確か試合数が少なくても負けなしの6連勝なら出場できるって規定もあったような……」

「素良にはぴったりな条件だな。6連勝など楽勝だろう。後は対戦相手だな」

「んー、実はニコ・スマイリーが俺の対戦相手を紹介してくれるっていうし頼んでみる事も出来るけど……」

「ほんと!? それじゃお願いするね!」

「リョーマさんはどうしますか?」

「俺は出る予定はない」

 

 遊矢の言葉にリョーマは即答する。それを聞いた遊矢は少し残念そうな表情をする。最初に出会った時に行ったデュエルの続きをしたかったのだろう。あれから色々あり未だにデュエルの再戦は出来ていなかった。

 とは言え遊矢は柚子が強く成りたいと思っていた事が嬉しいの笑顔を浮かべていたが柚子は先ほどの現象の事を考えこんでいる様子だった。それを見たリョーマは心の中で再び負けるかもしれないなと思うのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。