遊戯王ARC-V 黒竜を従えしデュエリスト   作:鈴木颯手

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デュエルはないです。後、結構無理やり話が進みます。


第十五話「合流」

 セレナとの突発的デュエルもあったが無事にスタンダード次元に戻ってきたリョーマ。スタンダード次元の舞網市ではもうすぐ始まるチャンピオンシップに向けて町中が大騒ぎとなっていた。

 

「調子はどうだ?」

「あ! リョーマさん!」

 

 リョーマが遊勝塾に行くと素良と遊矢がいた。遊矢はリョーマの顔を見ると笑顔で駆け寄って来る。

 

「聞いてくれよ! 俺、ジュニアユース選手権に出られる事になったんだ!」

「僕も6連勝出来たんだ。まぁ、どれも楽勝だったけどね」

「そうか。それは良かったな」

 

 その後、少しやり取りをしたリョーマはそのまま遊勝塾を出た。しかし、そこには本来ここにいないはずの人物がいた。

 

「……なぜここにいる? ね……セレナ」

「……」

 

 リョーマは思わず目の前の少女、セレナに尋ねる。セレナは顔を隠しているつもりなのかフード付きのローブを羽織っているが余計に怪しさを醸し出していた。

 そんなセレナは一瞬猫女と言いそうになったリョーマを睨むが直ぐに自信満々に言った。

 

「何、貴様の後をついてきただけだ。それにしても素晴らしいな。こんなにも簡単に抜け出せるのならもっと早くこうしていればよかった」

「……デュエルディスクは持ってきたのか?」

「いや、カードだけ持ってきた。こちらにもデュエルディスクはあるだろう?」

「……」

 

 リョーマはセレナの行動力の高さに溜息をついて呆れるが直ぐに彼女の腕に自信のデュエルディスクを装着しようとする。転移機能がついたアカデミア製のものだ。しかし、それを感じ取ったのかセレナは素早く離れる。

 

「……今すぐ帰れ」

「何故だ? 私はあくまで貴様の支援をしてやろうと思ってきただけだ。プロフェッサーの許可も取ってある」

「何?」

 

 そう言ってセレナは一枚の命令書を見せてくるがそこに書かれていたのは「リリーサーズの事務や書類整理の補助をア(・)カ(・)デ(・)ミ(・)ア(・)内(・)で(・)手伝う事を許可する。それ以外は隊長である赤城リョーマの許可の元行う事」と書かれていた。明らかに命令違反だがセレナは言った。

 

「何、ここに書いてある通り赤城リョーマ、お前が許可を出せば私は外(・)で(・)も(・)活(・)動(・)出(・)来(・)る(・)という訳だ。ほら、さっさと許可を出せ」

「……」

 

 完全に事後承諾である。しかし、もしここで許可を出さなければリリーサーズやリョーマにも処罰が行く可能性があった。そうなればリリーサーズの動きも完全にプロフェッサーに知れ渡る事になる。それだけは避けたいと考えリョーマは仕方なく、仕(・)方(・)な(・)く(・)許可を出す。

 

「……今から言う三つの事に従え。一つ、基本的に外出は俺かリリーサーズの隊員とのみ。二つ、余計な業務に関わらない。三つ、プロフェッサーには伝える。これが約束できるのなら許可を出す」

「……」

 

 セレナはリョーマの言葉に少し悩んだ後に了承した。そしてリョーマは直ぐにプロフェッサーに連絡を取る。

 

『……なんだ?』

「セレナがスタンダード次元にまで付いてきました」

『連れ戻せ』

 

 プロフェッサーの返事は完結で、即答だった。予想通りの言葉に面倒くさいと思いつつ駄目もとで提案する。

 

「一応こちらの命令は聞く気があるようです。基本的に拠点に置き外出時は俺が同伴するという条件を出しました。このままこちらに置くのはどうでしょうか?」

『貴様、ふざけているのか?』

「大いに真面目です。セレナは3年前にも脱走を企てたと聞いています。ですが、今後も行わないとは限りません。それならばこちらが譲歩し、安全の確保がしやすい環境に置くのが今後の為にもなると愚考します」

『……』

「侵攻を行わせるわけではありません。スタンダード次元の調査をしていますがその辺のチンピラ以上の存在が介入する事はありませんでした。エクシーズ次元に置くよりはマシかと思います」

『……』

 

 プロフェッサーは黙って話を聞いていたがやがて結論が出たのか話し始める。

 

『セレナはアークエリアプロジェクトの要だ。絶対に手元に置いておかねばならない。セレナがいなくなった場合の責任は貴様程度で取れるものではない』

「ですがセレナが脱走した事は私が報告するまでは分からなかったのでしょう? もし、セレナがこのまま雲隠れをしていたらこんな話をしている場合ではなくなりますよ?」

『……』

「今ならセレナの欲求を満たしつつこちらで制限が可能です。セレナも一度外で活動すれば脱走騒ぎを起こす事もなくなるでしょう」

『……』

 

 リョーマの説得にプロフェッサーは再び黙り込むが少しして息を吐く音が通信先から聞こえてくる。そして

 

『絶対にセレナを手放すな。アークエリアプロジェクト始動までの期間のみ活動を許可する』

「感謝します」

 

 それだけ返事をすると通信を切りセレナへと向き直る。セレナは先ほどまでとは違い少し不安そうな顔をしておりこちらに視線が向けられたことでびくりと肩を震わした。

 

「プロフェッサーからの許可は下りた」

「っ! それじゃ!」

「ただし、エクシーズ次元に入ることは出来ないし基本的にスタンダード次元の調査のみだ。そして俺が言った約束は絶対に守る事だ」

「勿論だ。色々と無理を言った以上これ以上我儘を通すつもりはない」

 

 セレナの言葉に大きく息を吐くとリョーマはセレナと共に拠点へと向かう。アカデミア以外の光景は珍しいのかセレナの視線はきょろきょろと周囲を見回していた。そんなセレナに気付きつつもリョーマはこの世界の事を話し始める。

 

「基本的にこの世界は全ての次元の中で最弱と言える。融合・シンクロ・エクシーズ。・それらを使えるのは一握りしかいない」

「何だと? ではここの者達はどのようなデッキを使うのだ?」

「基本的にアドバンス召喚などで上級モンスターを出す形だ。だがそれもパワー重視でテクニカルを極めている奴は少ない」

「何だそれは。アカデミアなら瞬殺ではないか」

 

 アカデミアではパワーのみならずバーンや特殊勝利にも力を入れており決してパワーでごり押しする戦術だけを教えている訳ではなかった。

 

「無論強い奴はいる。故に侮って良いわけではない。特にLDSと言う塾に所属する者達はな」

「LDS?」

「LDS(レオ・デュエル・スクール)。プロフェッサー赤馬零王の息子が社長を務めているレオコーポレーション傘下の塾だ。このスタンダード次元ではあり得ないと言っていい融合・シンクロ・エクシーズを教えている」

「……それは手強そうだな。そこの者達の実力は?」

「ピンキリだ。少なくとも講師含めてオベリスクフォースに瞬殺される程度の腕前だ。だが1対1なら十分にやりあえる奴はいる」

 

 そう言ってリョーマが思い浮かべたのは融合使いの褐色娘、光津真澄だった。未だに名前を覚えていないリョーマは融合使い、褐色肌、女というあり得ない情報のみで覚えていた。そんな事を知らないセレナは質問を行う。

 

「その赤馬零児というのはどれほどの腕前だ?」

「……少なくとも、オベリスクフォースなら手も足も出ない。俺でも本気で挑む必要がある」

「っ! そんなにか!?」

「少なくともこの次元では異常な強さを誇っている。加えて、奴が使えるのは融合・シンクロ・エクシーズ。すべてに精通していると言っていい」

「……」

 

 セレナはリョーマの言葉にごくりと喉を鳴らす。格下という評価のスタンダード次元における猛者。リョーマの言った通り侮って良いわけではないと改めて思い知っていた。

 

「そしてこの世界ではアクションデュエルという独特の戦い方がある」

「アクションデュエル?」

「アクションデュエルは様々なフィールド魔法によって形成されるエリアで実態化したモンスターと共に地を蹴り宙を舞いながらデュエルする」

「それはすさまじいな。この次元はそれだけソリットビジョンが発達しているのか」

「ああ、リアルソリットビジョンというらしい。そして、そのフィールドにはアクション魔法という物が落ちている。それを拾えば任意の時に使える」

「セットしないで発動できる罠カードのようなものか」

「そう言う認識で問題ない。基本的に落ちているアクション魔法を拾ったらそれは手札に加えられる。だがアクション魔法は基本的に1枚しか持つ事が出来ない。他のアクション魔法を拾うにはそのカードを使わないといけない。アクション魔法は中には自分にダメージを与えたり攻撃力を下げたりするカードもあるが基本的に発動者の支援を行ってくれるカードが多い」

「成程。それは盤面が簡単に逆転するな」

「ああ、一枚のカードで逆転する事もある。とは言え結局は運に頼らないといけない面が大きい。負けそうになった時や止めを刺しきれない時の補助カードと思っていればいいだろう」

「ふむ……」

「そして、この世界ではデュエルは塾やスクールで教わる。先程俺が出て来た建物は遊勝塾というエンタメデュエルを教えている塾だ」

「エンタメデュエル?」

「アクションデュエル内で観客を楽しませる事を教えているらしい。アカデミアの紫雲院素良はそこに所属している」

「……そこに何かあるのか?」

「ああ、新しい召喚方法を生み出したやつがな」

 

 その言葉にセレナは驚く。新しい召喚方法があるという事は生み出し、それが受け入れられているという事だ。スタンダード次元恐るべしと思っているとその詳細をリョーマは話し始めた。

 

「ペンデュラム召喚と言ってペンデュラムモンスターという独特のモンスターを二体使用し一気に大量展開を行う召喚方法だ」

「……」

「基本的に1ターンに1度。ペンデュラムモンスターは墓地へは行かずにエクストラデッキに表側表示で行く。そして、エクストラデッキに行ったペンデュラムモンスターはペンデュラム召喚で召喚が出来る」

「それは便利そうな召喚方法だな」

「ああ、俺もそう感じている。素良もそう思っているのだろう。そこの奴の周囲をうろついている」

「お前は気にならないのか?」

「俺はスタンダード次元のみならずシンクロ次元の担当も任されている。彼だけに構っている暇はない」

「そうか」

 

 それからはスタンダード次元における基本的な事や注意事項を話し、ここで生活するうえで問題ない知識を叩きこんだ。セレナもスポンジのようにドンドンと吸収していき拠点に到着する頃には一人でも問題ないくらいの常識を頭に叩き込んでいた。

 

「これで俺から伝える事は以上だ。次はその服だな」

「? これでは駄目なのか?」

 

 素で言い放つセレナにピクリと眉を震わせるリョーマ。セレナが着ている服はアカデミアの制服を改造したもので赤いジャケットに黒いインナー、赤いスカートにスパッツという格好だった。知っている人が見ればすぐにアカデミアの関係者若しくはその戦士だと分かるだろう。ただでさえレジスタンスがこの次元にもいるのだ。どうぞ襲撃してくださいというような恰好はするべきではなかった。

 

「……レジスタンスの目撃情報もある。アカデミアの制服は着るべきではない」

「何か問題があるのか? 返り討ちにすればいいだけだろ」

「いいわけないだろ天然娘」

 

 セレナのとんでも発言に即座に答えるリョーマ。その表情は「マジで何言ってんだ此奴」という別の生物を見るような表情だった。

 

「お前分かっているのか? 騒ぎを起こしてもいい事は無いぞ」

「む、だが……」

「なんだ? その制服が気に入っているのか?」

「そんな訳ではないが……」

 

 セレナは不服そうにしつつも答える。逃げる様な行いが気に喰わないという事は何となく想像できるためリョーマは話す事は以上だと切り上げて拠点へと入る。拠点ではNo.4がソファーに寝転がりながらポテチ片手にテレビを見ていた。そんな彼はテレビの脇にある扉から入って来たリョーマとセレナに驚き口に含んでいたポテチを吐き出しながら慌てて立ち上がる。

 

「た、隊長!? お早いお付きで……」

「ああ」

「何だこいつは?」

 

 セレナは汚そうにNo.4を見る。その顔には嫌悪感しか浮かんでおらずポテチを吐き出したのを見ていやがっていた。そんなセレナに気付いたNo.4はセレナとリョーマの顔を行き来しながらやがて何かに気付いたように言った。

 

「……ああ! 隊長の恋人ですか?」

「は? 何馬鹿な事を言っているんだ。さっさと吐き出したゴミを片付けろ」

「リョーマ。こいつは貴様の部下なのか? もう少し部下は選んだ方が良いぞ」

「あれー? なんでそんな反応なの?」

 

 No.4としては慌てて否定するのを求めたが帰って来たのは容赦ない隊長の命令と結構本気で部下として必要ないのでは?と言ったセレナの言葉だった。No.4は困惑しつつ容赦ない二人の言葉で半泣きになりながら自分の吐き出したポテチを片付ける。

 そんなNo.4は無視してリョーマはセレナに説明する。

 

「こいつはNo.4。スタンダード次元に派遣している部下だ。ここはスタンダード次元における拠点。シンクロ次元に比べれば規模は小さいが済む分には問題ない。地下もありデュエルの訓練を行える。地下には電波遮断装置もある。基本的にそのデュエルのエネルギーを察知される心配はない」

「成程」

「部屋は合計6つ。二つは俺とこいつが使っている。好きな部屋を選ぶと言い。必要な家具とかは此奴に言え。全て揃える」

「あれ? それって一人で買って来いって事?」

 

 No.4はパシリにされる未来を想像しながら恐る恐る尋ねるも再び無視される。

 

「この世界でエクストラデッキからの召喚方法は珍しい。そう言う事も気を付けるように。また、アクションデュエルは覚えておいた方が良い。この舞網市ではこちらが主流だだからな。いざという時に対応できるようにした方が良い」

「分かった」

「では服を揃えるか。自分で選ぶか?」

「勿論だ。サイズとかが違ったりするのは嫌だからな」

「とは言え流石にそのかっこで出る訳にはいかないな。ちょっと来い。確かNo.11のスタンダード次元用の服があったはずだ。それを着ろ」

「それは何処に?」

「案内する」

 

 そう言うと二人は置くの方へと向かって行った。一人残されたNo.4はため息をつくと吐き出したポテチを袋に入れてゴミ箱に入れるのだった。

 

 その後、リョーマの前で抜き出したセレナに「異性の前で脱ぐな痴女」と言われる事になるのは完全な余談である。

 




次回からは舞網チャンピオンシップです
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