遊戯王ARC-V 黒竜を従えしデュエリスト   作:鈴木颯手

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第十七話「最悪との再会」

 舞網チャンピオンシップの初日は無事に終了した。そして、二日目は権現坂と遊矢のデュエルがある。権現坂のデュエルでは元兄弟子が相手であったが何やら裏側であったらしく権現坂は追い詰められていたが最終的には逆転勝ちをした。

 そして、次は榊遊矢と沢渡シンゴのデュエルだった。

 

「沢渡シンゴ……。成程奴か」

「誰だあいつは?」

「聞いた話だが榊遊矢のペンデュラムモンスターを無理やり奪い取り柚子たちを危険な目に合わせながらデュエルを強行したらしい」

「は? なんだそいつは。デュエリストとして恥知らずだな。私だったら二度と姿を見せられないぞ」

「神経が図太いのか馬鹿なのか」

 

 リョーマの話はセレナにとって許せる話ではなかったようだ。明らかに怒りと侮蔑の表情をしながら画面越しの沢渡シンゴを見る。リョーマも同意しつつテレビを眺める。沢渡シンゴのデュエルは見事と言えたが言動や行動がその全てを台無しにしていた。そして、その姿を見たリョーマは気づけば歯を食いしばり握り拳を作って怒りの感情を抑えている様だった。

 それは隣に座っているセレナにも伝わったようで怪訝そうにリョーマを見て絶句した。その顔は無表情を繕っているが怒りの感情が漏れ出ており他者を威圧する迫力を持っていた。セレナは恐怖を感じつつ声をかける。

 

「り、リョーマ? 一体どうしたんだ……?」

「……」

 

 リョーマはセレナの言葉にじろりと見るとそこで漸く気づいたのか呼吸を整えるとゆっくりと話し始めた。

 

「いや、少し昔の事を思い出しただけだ」

「そうか?」

「ああ、もう大丈夫だ」

 

 リョーマが言う通り先ほどまでの威圧は消え、いつも通りの表情となっていた。そうこうしているうちに追い込まれていた遊矢は沢渡シンゴに逆転勝ちを決め沢渡は無様に沈んでいった。

 そして次は紫雲院素良対黒咲隼のデュエルである。予想外の対決に二人は一瞬驚きつつも勝敗を見守る。

 

「……素良に黒咲隼の情報は届いているのか?」

「分からない。恐らく見ているとは思うが……」

 

 セレナの言葉にリョーマは率直に答える。そもそもあまり交流がない二人は偶にあった時に情報交換をすること以外は何もしていなかった。故に素良が黒咲隼の実力を知っているかは分からなかった。

 観客の熱気を後押しするようにフィールド魔法が展開される。しかし、その展開されたフィールド魔法はエクシーズ次元のハートランドそっくりだった。これには黒咲隼のみならずリョーマも驚愕する。

 

「これはエクシーズ次元の都市……」

「は!? それってソリットビジョンの開発者にエクシーズ次元の者が居るという事か?」

「若しくはその上とかな。この状況に対してこのフィールド魔法。意図的な者を感じる……」

「それはつまり」

「主催者、レオコーポレーションの社長。赤馬零児」

 

 リョーマは最悪の展開を感じつつ考える。赤馬零児が敵か味方が分からなかったが黒咲隼と繋がりがあるという可能性が出てきた。その場合、スタンダード次元にはなかったはずの様々な召喚方法をLDSが出している事にも納得がいった。

 

「……プロフェッサーの息子だからこちら側とも考えたが読みは違ったようだな。セレナ、スタンダード次元は融合次元の敵の可能性が出て来た。そして、各次元の事も知っている可能性がある」

「……ならばその赤馬零児を倒せば」

「出来るわけないだろ。相手は社長。この次元でそれなり以上の地位を持っている。闇討ちなんて出来ないし何より奴は強い。恐らくオベリスクフォースでも相手にならない程度にはな」

「何だと……!」

「とは言え状況を見るにあくまで防御の姿勢の可能性が高い。侵攻に備えて色々と準備する必要がありそうだな」

 

 そんな事を思っている内にデュエルは始まっており素良は自慢の“デストーイ・シザー・ベアー”を出して攻撃している。しかし、その返しのターンで黒咲はエクシーズ召喚を行いランク4の“ライズ・ファルコン”を出していた。その後も応酬が続きハートランドはどんどんと破壊されていく。それを見たセレナは信じられないといった顔をしている。

 

「馬鹿な……! 何故街を破壊する必要が……!」

「……確かに、あれはやりすぎだな」

 

―自分の首を絞める結果にならなければいいがな

 

 リョーマがそう思っていると遂に素良は切り札とも言える“デストーイ・マッド・キマイラ”を出す。その姿は素良が言う通り結合魔獣という言葉に相応しい姿をしていた。そして、黒咲のエクシーズモンスターを破壊して奪い取るもRUM(ランク・アップ・マジック)を使われそのエクシーズモンスターは消え、新たなモンスターが誕生した。そして、その効果により“デストーイ・マッド・キマイラ”は破壊されてしまいその攻撃力の半分のダメージを受けそうになる。素良はそれを回避しようとアクション魔法を取ろうとするが崩れてきた塔によりそれは失敗し素良は敗北した。

 

「……破壊される街を見ながらモンスターの殴り合いを楽しむ、か」

「あの黒咲という奴はかなり強いな」

 

 リョーマが吐き捨てた言葉は聞こえていなかったのかセレナは真剣な表情で黒咲を分析する。その顔からは汗が出ており黒咲を脅威と受け取っている様だった。

 そして、素良は倒れそれを見たスタッフたちによって運ばれていった。それを見たリョーマは立ち上がる。

 

「……素良を回収する。セレナ、お前はどうする?」

「勿論行く」

「だろうな」

 

 セレナの言葉は予想できたようでリョーマはそう返すとフード付きのパーカーを羽織りマスクとサングラスを付ける。セレナもフード付きの服を着て顔を隠すようにする。

 

「一応言っておくが目的はあくまで素良の回収だ。余計なもめ事は起こすなよ?」

「勿論だ」

 

 セレナもそこは分かっている様で即答した。それを確認したリョーマはデュエルディスクの通信機能を使いNo.4へと通信を入れる。三人の中で唯一自由に出歩く事が出来る彼はスタジアムで観戦を行っていた。数回のコール後にNo.4が出る。

 

「No.4。素良を回収する」

『了解。誰に返(・)送(・)す(・)れ(・)ば(・)い(・)い(・)?』

「関係者だ。決して気付かれるなよ?」

『その辺は問題ないですよ。俺の腕を疑っているんですか?』

「能力はともかく性格が心配だ」

『酷い!』

「いいからさっさと取りかかれ。以上だ」

 

 軽口を挟みつつ淡々と伝えた。そして通信が終わったリョーマはセレナに向き合うと頷く。セレナも頷き返すと二人は拠点を出た。

 外は夕方となっており今日の大会は終了していた為スタジアムから帰って来る者達の波に逆らうように歩き出す。そして、彼らが付くころには日は完全に落ちていた。

 

『隊長。どうやら紫雲院素良はLDSの医務室に運ばれたようです。その地図を送ります』

 

 道中、どうやって知ったのかLDSの詳細な地図を送ってきた。医務室までのルートも表示されておりNo.4の能力の高さがうかがえた。

 

「No.4は一体何者なんだ……?」

「元は特殊工作員の訓練を受けていた奴だ。何か大きなミスをしてその道からは外れたらしいがその能力の高さはこの通りという訳だ」

 

 リョーマが説明をしている内にLDSの前までやってきた。しかし、入り口には警備員が居りバレないで入るのは難しそうだった。

 

「……強行突破をするしかないか?」

「数は三人、センターコートの関係者用の入り口だから周囲は誰もいない。多少の物音を立てても気づかれにくいか……」

 

 セレナの強引な言葉にリョーマは周囲の状況を確認して肯定する。そして、気づかれないように近くまで来て一気に決めようとした時だった。一人の警備員が持つトランシーバーから声が聞こえてくる。その声は紫雲院素良が脱走したと言っておりそれを聞いたリョーマは強行突破を止めてセレナを連れてその場を離れた。

 

「何だ? 行くのではないのか?」

「状況が変わった。紫雲院素良が脱走したらしい。No.4、紫雲院素良のデュエルディスクは何処を指している?」

『んーと、これは……近くの公園ですね。そこからの道は案内します』

「頼む」

 

 リョーマはNo.4の案内のもとその公園へと向かう。そして、遂に発見した。が、そこには予想外の人物の姿もあった。

 

「あれは……」

「榊遊矢か!?」

 

 そこにいたのは榊遊矢、に似た誰かだった。確かに榊遊矢に似ているがリョーマはその人物を知っていた。

 

「……あれもレジスタンスの一人だ」

「何!?」

「やはり複数人いたか……。しかし、何故ここに……?」

 

 そう思っていると二人は話し始める。どうやら先ほどの試合で黒咲隼に負けたのがよほど悔しかったようで素良は全力を出せば勝てると言い、エクシーズの人間は狩られる運命にあると言うもそれは目の前の男、ユートの怒りを燃やす結果になった。

 そして、ユートはデュエルディスクを起動させると素良は悠々とそれに乗るがリョーマはセレナに隠れているように短く指示を出すと素良の近くに飛び出した。

 

「素良」

「リョーマ!? なんでここに?」

 

 素良は突然の事に驚いているがリョーマは構わずに続ける。

 

「撤退しろ」

「……は? なんで?」

「お前は傷を負った。その状態で戦ってもいい事などない。今は傷を治せ」

 

 淡々と伝えるリョーマに素良は眉を顰めて反論する。

 

「僕はもう大丈夫さ! それに! あいつはエクシーズの人間だ! このまま放置するわけには……!」

「もう一度だけ伝える。撤退しろ」

「っ!」

 

 素良の反論を叩き割りリョーマは告げた。そして、公園の円柱の上に設置された一台の監視カメラを見る。既に自身の正体を知られていると想定し素良に続ける。

 

「素良、貴様が余計な事さえ言わなければ良かったのだがな。あんな言動をした以上いずれこちらにも追及が来る。これは上官としての命令だ」

「……」

 

 素良はリョーマを睨むように見ているがそれ以上の冷たいまなざしで見下ろすと渋々デュエルディスクを弄り始める。すると素良の体は光で包まれ始め薄くなっていく。そして、完全に消える前に素良はリョーマに言った。

 

「傷を治したらすぐに戻って来る! そしてあいつを倒す! それでもいいでしょ?」

「傷が完治しているのなら何も言わん。さっさと戻って休め」

 

 素良の言葉にリョーマが返答し終えると同時に素良はその場からいなくなった。再び静寂が訪れた公園でリョーマはユートに顔を向けた。

 

「久しぶりだな。レジスタンス。エクシーズ次元以来だな」

「……」

 

 リョーマの言葉にユートは何も言わずに睨むように見ていた。しかし、そこでリョーマが言った言葉がユートの表情を崩す事になる。

 

「黒咲瑠璃」

「っ!」

「黒咲隼の妹で使用デッキは“LL(リリカル・ルスキニア)”。柊柚子と同じ顔をしているが髪色は紫」

「貴様! どこでそれを!」

「知りたいか? ならば……」

 

 そう言うと右手をユートに向けるリョーマ。

 

「俺と共に来い。そうすれば感動的な再会が可能となるぞ」

「瑠璃は! 瑠璃は無事なのか!?」

「それは自分の目で確かめると良い」

 

 ユートの言葉にリョーマは笑みを浮かべて言う。しかし、その笑みは他者を見下すような冷たい笑みであった。リョーマの提案に一瞬悩んだ様子を見せるが直ぐにデュエルディスクを構えた。

 

「それは出来ない! アカデミアのいう事を信じる事など!」

「それはそれで構わない。貴様を叩き潰し確保すればいいだけの話だからな」

 

 そう言うとリョーマはデュエルディスクを起動して構えた。そして改めてユートの方を見ると言った。

 

「俺が勝てば貴様は自由を失ったうえで俺の下に、貴様が勝てば黒咲瑠璃について教えてやろう。現在の居場所、状況なども事細かにな」

「それで構わない。前回は負けたが今度は負ける訳にはいかない!」

 

「「デュエル!」」

 

 こうして両者は目的の為にデュエルを始めるのだった。

 




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