「初めましてリリーサーズの皆さん。私はシンクロ次元にて治安維持局の長官をしていますジャン・ミシェル・ロジェと申します」
「へぇ、貴方があの
「No.6、今は味方なんだ。その態度は駄目だろ」
「構いませんよ。アカデミアを裏切った事に変わりはないので」
No.6のあけすけな言い方にNo.7は咎めるがロジェは気にしていない様子で答えた。彼らがいるのは治安維持局の上部、長官が座る席にある空間でありそこでNo.6とNo.7はロジェから呼び出しを受け彼の対面に座っていた。
かつてロジェはアカデミアに所属していたがプロフェッサーに嫌気がさしてシンクロ次元に逃走した過去があった。現在はその時に持ってきたソリットビジョンシステムを売り込む事で現在の地位にまで昇りついていた。しかし、本来リリーサーズはアカデミア側の部隊である。故にロジェとリリーサーズがこうして顔を合わせて会話をするどころか協力関係にあるのはリリーサーズの裏切りとも言える行為であった。
その為、リリーサーズの動きをプロフェッサー以下アカデミアは把握していなかった。
「それで? 榊遊矢君とのデュエルはどうでしたか?」
「ん? ああ、それはNo.6に聞いてくれ。デュエルを行ったのは彼女だからな」
そう言ってNo.7は隣に座る彼女の方を見る。No.6は毅然とした態度だがどこかつまらなそうな表情で言った。
「どうもこうも弱すぎだ。結局アイツは何も出来ずに終了した」
「いや、初手で手札3枚を除外されれば俺だってきついぞ?」
「それはそれは……」
No.7はNo.6の言葉に呆れつつも答える。デュエルモンスターズに置いて手札は今後の展開を左右する大事なものだ。それをターンも渡さないうちに半数以上を減らすという行為はまさに相手を殺す一撃と言えた。
「しかも返しのターンで“トリニティ・トリシューラ”の効果で“氷結界の龍トリシューラ”を出して更に手札・フィールドのカードを除外してたじゃないか。合計で手札4枚の喪失。実力を見る事なんて出来ないだろ」
「だが
「……へぇ? それはかなり良い情報じゃないかな?」
No.6の言葉にNo.7はにやりと笑みを浮かべて言う。榊遊矢の確保には失敗したものの別に必ず確保する必要はなく現在の榊遊矢の状態を知りたかった。その為、榊遊矢たちとの約束を破る必要はなく釈放されていた。
「そう言えば、今度のフレンドシップカップにこの二人が参加するようですよ」
ロジェは思い出したようにモニターを出し見せた。モニターに映っていたのは二人の男女の写真がついた出場申請書だった。5つの事を描く項目があるがそこに書かれた字は汚いうえに欄からはみ出ている正式書類としてはいかがなものか、という状態を通り越して受け付けてすら貰えなさそうなものとなっていた。
それに目を通す二人は様々な事を口にする。
「……これでいいのか?」
「字は汚い、漢字は書けていない。欄から出ている。どちらも同一人物が書いたものでしょう。こちらの柊柚子、はスタンダード次元の者。となるとこちらのユーゴが書いたという事でしょう。スタンダードと書いていたり名前を間違えているなどからも確実でしょう」
「これで出場できるのか? いくら何でも酷くね?」
「確かに、No.7の一番ひどい書類と酷似していますね。汚れがないだけマシでしょうか?」
「え? 俺の書類ってそんなに酷いのか?」
「少なくとも私が隊長に指導してくれと頼まれる程度には」
「マジか……」
途中から脱線し始めているが出された飲み物を一口飲みNo.6は射抜くような視線で言う。
「それで? 私達に何をしてほしいのですか?」
「簡単な事です。こちら側の人間としてフレンドシップカップに出場していただきたい」
「それって俺とNo.6が? 流石にNo.11は無理だろ」
「彼女はこちらではトップスの一人、それも影響力のある家の幼き当主です。負けた場合、コモンズが暴動を起こす可能性があります」
「問う言う事は俺とNo.6か。で? こいつらが出るという事は勿論?」
「ええ。ランサーズの面々も出場予定です」
そう言うと同時にモニターが切り替わり出場者の一覧らしき顔写真が並ぶ。そこに映っている人数は12人。数を切りよくするのなら後4人が必要だった。
「貴方達が出てくれるのなら数はあいます。こちらでも2人用意しているので」
「へぇ? 因みにトーナメント式か?」
「はい。
それはつまりどのように当たるのかを操作できるという事でありNo.7はにやりと笑みを浮かべた。
「良いだろう。No.6、お前もいいよな?」
「勿論。隊長からは【榊遊矢たちの覚醒を少しでも促せ】と言われています。隊長も準備を行っており直ぐにでも準備は完了するとの事です。フレンドシップカップの終了時には恐らく……」
No.6はそれ以上話す事は無かったがその続きの意味をこの場の誰もが理解していた。それだけにNo.7はワクワクしておりロジェも赤城リョーマの行おうとしている事を支持しつつもその背後から切りつけられる作戦を練っていく事になる。
斯くして、原作とは違う形で始まるフレンドシップカップ。ランサーズ及びリリーサーズが激突する事で事実上のシンクロ次元争奪戦となる事になった。
そして、前夜祭のエキシビションマッチにて榊遊矢はキングであるジャック・アトラスに惨敗し自らのエンタメデュエルを否定される事となった。そんな状況で遂に、フレンドシップカップ初日を迎える事になる。
「くそっ! 何時までこうしていればいいんだ!」
トップスの居住区域の一角にあるリリーサーズの拠点、No.11の屋敷にてセレナは吐き捨てるように言った。No.4に負けて以来この屋敷に軟禁状態に置かれているセレナは別次元という事を除けばアカデミアの時と待遇はほとんど変わっていなかった。違うのは世話人が全員アカデミアよりも洗練されていて衣食住すべてに置いて文句のつけようがない事ぐらいだった。しかし、自らをデュエリストと言っているセレナにとってはこの状況はとても不満のある事だった。
「そうは言っても君は負けたんだし大人しくしていてよ」
「ふざけるな! これではアカデミアの頃と大して変わらない! 今すぐ……!」
「だ! か! ら! 君に動かれると困るんだよ!」
聞き分けの無いセレナにNo.4は怒鳴りながらそう言った。彼の今の役目はセレナのお守りでありじゃじゃ馬な彼女の手綱を握る事を命令されていた。しかし、あまりにも強情な彼女にNo.4は呆れていた。
「せ、セレナ。落ち着いて」
「瑠璃……。だがこんな扱いを私は望んでいない!」
セレナは自らと同じ顔を持つ黒咲瑠璃に落ち着く様に言われ一瞬制止するもすぐに苛立ちを露にした。黒咲瑠璃はここでの軟禁状態が長く既に半年以上経過しつつあった。それゆえに脱走する事が不可能であり、ここの事を知らない彼女が出ていったとしてもどうしようもない事を理解していた。
とは言え表面上は大人しくなったとはいえ心の中では完全に警戒を解いておらず即座に対応できるようにしていた。そんな中で出会った自分と同じ顔で同じ状態に置かれたセレナを瑠璃は構う事が多くなっていた。
「セレナ。貴方の気持ちも分かるけどここは私達のいる世界とは違うの。ここを出ても……」
「……」
セレナがアカデミアの一員という事はNo.4によって暴露されている。が、一度も侵攻に参加したことが無い事。軟禁の長さだけなら瑠璃よりもはるかに長い事などが重なり憎しみを持つには至っていなかった。
「……あなたはどうしてここを出たいの?」
「決まっているだろう。私はアカデミアの戦士だ。自分の力を試せないこの状況が好ましいわけがないだろう」
「……なら、セレナも侵攻してきたアカデミアと同じようにカード化するの?」
「それが役目だ。それに従うまでだ」
「っ! 罪のない人をカード化して何がしたいの!? 私達から全てを奪ってそんなに楽しいの!?」
「何を言っている? アカデミアがカード化するのはデュエリストのみだ。それも生成堂々と正面から戦い倒した時にのみ……」
「違う!」
セレナの言葉に瑠璃は叫ぶ。そしてセレナが完全に悪人ではない事も分かった。だが、アカデミアが行ってきたことを知らないセレナの口から出てくる言葉に反射的に叫んでいた。
「アカデミアは、無関係な、それこそデュエルをしない人達までカードにしたのよ! それも、笑いながら!」
「なっ!? そ、そんな訳……!」
「事実だよ」
泣きそうになりながら叫ぶ瑠璃にセレナは動揺しつつ否定の言葉を投げかけるがその言葉を肯定したのは意外にもNo.4だった。彼はシンクロ次元の雑誌を読みながら淡々と話す。
「アカデミアが求める人間を閉じ込めたカードは大量だ。とてもではないけどデュエリストだけでは足りないよ。それに、アカデミアの中にはこの侵攻を狩りか何かと勘違いしている者もいるよ。オベリスクフォースなんかはそれが顕著だな」
「馬鹿な!? アカデミアがそんな事をするわけ……!」
「それがアカデミアの現実だよ。というか、君を連れて行かなかった理由の一つがその気高い心じゃない? だってこれを知っていたら止めようとするでしょ?」
「それは……!」
No.4の言う通りセレナがここ以外で知っていたらアカデミアを止めようとしていただろう。しかし、ここではそうはいかない。どのような心境の変化があろうともここから出る事は出来ないのだから。No.4としてはこれで大人しくなってくれればいいなという思いから発した言葉だったが思いのほか効果があったようでセレナは顔を見開いてその場に蹲ってしまった。それを見た瑠璃がセレナを別室に運ぶ。
瑠璃は宛がわれた自分の部屋にセレナを運ぶとそのままベットに腰かける。
「セレナ、大丈夫?」
「私は……、なんでこんな……」
「……」
セレナは自分が信じていたアカデミアの実態を知り激しく動揺している様で瑠璃の言葉が聞こえていなかった。ずっとぶつぶつと何かを呟いていた。
瑠璃としてはアカデミア側であるセレナに対して当初は思うところがあったが当の本人が何も知らなかった事もあり今では負の感情は消え去っていた。故に瑠璃はセレナを励まそうとした。
「大丈夫よ。貴方は何もしていないのでしょう? そしてアカデミアの実態に今まで気づかなかった」
「だが、私は……」
まだ何かを言いそうになるセレナを瑠璃は抱きしめる。そして優しくゆっくりと頭を撫でる。
「貴方は何も悪くはない。絶対にそうよ。だから貴方が気にする事は何もないわ」
「……」
瑠璃の言葉にセレナが答える事は無かったがその代わりに抱きしめ返し嗚咽を漏らしながら静かに涙を流すのだった。
その様子を部屋の外から伺っていたNo.4は静かにその場を離れるととある人物に連絡をした。そして翌日、シンクロ次元に再び赤城リョーマが訪れた。