「ここは……!」
急な転送装置の作動によりシンクロ次元から移動させられたNo.6が目を覚ますとそこはアカデミアだった。しかし、いつもの様子とは違いとても静かであり喧騒は全く聞こえてこなかった。
「これがアカデミアなのか……?」
「ん? あれれ~? No.6じゃん。やっはろ~」
「! お前は……」
困惑するNo.6の後ろから声をかけてきたのはNo.2だった。No.2は相も変らぬ様子でのほほんとしている。しかし、その瞳の奥にはのほほんとした雰囲気とは違う獰猛な獣の如き感情が見え隠れしていた。
「いや、シンクロ次元の大会に出ていたのだが気づいたらここに……」
「あ、そうなの? それよりもさ。アカデミアの制圧は数時間前に終わったよ。今は戦後処理って感じかな」
「……そうか」
予想以上に早く終わったなとNo.6は思う。彼女の予想ではまだ制圧には至っておらず戦闘中だと思っていたが実際は既に制圧済みという事に驚嘆する。
「それなら隊長に挨拶をしたい。今は何処に?」
「んー、多分宿舎にいるんじゃない? そこで事後処理をしているみたいだし」
「分かった」
そう言うとNo.6は歩き始める。そんな彼女の後姿を眺めつつNo.2は目を細めた。
「随分と柔らかい表情を浮かべるようになったんだね美代ちゃん。君が隊長に心から忠誠を誓っているのか、君の行動で見せてもらうよ」
そう呟くNo.2は悪魔の如く顔を歪ませて笑うのだった。
「隊長」
「! No.6か。どうした?」
赤城リョーマは事後処理に忙殺されつつ順調にこなしていた。既にドクトルを中心にパラサイトモンスターの運用が開始されており今は最後まで抵抗したアカデミアの残党相手で人体実験を行っている。これが成功すれば順次反抗的な者にパラサイトモンスターを寄生させていく手はずとなっている。
そんな彼の下に意外な人物が現れた。No.6は本来ならシンクロ次元におりアカデミアにいるはずがなかった。それにも関わらずこうしている事にリョーマは若干の驚きを覚えた。
「それが準決勝で敗北後にここに強制転送されました。No.2よりアカデミアの制圧を終え事後処理をこちらで行っているとの事でしたので挨拶に来ました」
「そうか。では悪いが直ぐにシンクロ次元の報告をしてくれ」
「了解しました。まず、大きい所ですと赤馬零児が率いていたランサーズがシンクロ次元で活動を行っています」
「それは前回の報告で聞いた。その後に動きはあるか?」
「それ以外ですとロジェが行政評議会を抑えました。セキュリティに対して洗脳装置を仕込んでいたようで治安維持局はほぼロジェの手中にあります」
「成程な。奴には注意しろ。手を組めたとは言え用済みとなれば裏切られる。最悪の場合はシンクロ次元の拠点の放棄も視野に入れろ。セレナ以下3人の少女はこちらに移送しろ。アカデミアを抑えた以上不安定なシンクロ次元に置いておくよりも安全性が高い。状態は安定しているか?」
「軟禁状態へのストレスは多少あるようですが今のところは大人しく従っています。セレナも心境の変化でもあったのか前までの様に暴れる事は無くなりました。ですが、何を企んでいるのかこちらを鋭く見てくる時があります」
「最悪の場合、パラサイトモンスターによる洗脳も考えなければいけなさそうだな。出来ればこの手は使いたくはない。刺激を与えて
「アイツ……?」
「いや、こちらの話だ。報告は以上か?」
「……一つ、宜しいでしょうか?」
「なんだ?」
No.6は意を決したような表情で言う。
「隊長、デュエルとは楽しむものでしょうか?」
「……いきなりどうした?」
「いえ、ふと疑問に思ったもので」
「……」
リョーマは書類にサインする手を止めるとNo.6の方を見た。その瞳には黒い感情が浮かんでおり一瞬だが気圧された。
「No.6。我々が行っている行為は戦争だ。戦争に置いてデュエルを純粋に楽しむなどそれこそ精神異常者と言える。それ以外の何もないデュエルなら、楽しむ行為は可笑しくはないだろう」
「……そう言う事ではなく、私はデュエルを戦争に使う事に疑問を持ちました」
「……成程。榊遊矢の影響か」
「っ!」
影響を受けた人物の名を当てられNo.6は目を見開く。そんな彼女にリョーマはきつい口調で言う。
「残念だが榊遊矢のエンタメデュエルは観客に向けたショーだ。対戦相手と切磋琢磨して互いの全力を出し合うようなものではない。というよりもあれは対戦相手にとっては出汁に取られるような行為だ」
「そんな事は関係ありません!」
「お前がいいた事は分かる。だがな、今更何を言い出す? ここまで来るのに何十、何百、何千の命をカードにして、それと同等の人間を殺し、それ以上の人間を不幸にしてきた。今更止めて何になる?」
「これ以上の犠牲者をなくすことが出来ます」
「そうなれば我が野望は頓挫しこれまでの行為全てが無意味なものとなるだろう。俺にとってもそれは避けたいし何より中途半端に止めるくらいなら最初からやったりはしない」
そう言うとリョーマは指を鳴らすと扉からNo.14とNo.15の双子が入って来る。
「No.6、氷河美代。本当に残念だ。No.9に続いて君で二人目。まさかリリーサーズから裏切り者を出す事になるとはな」
「っ! 隊長! 私は!」
「我が野望の為に
「っ!」
覇王の如き威圧感を出すリョーマにNo.6は逃げようとデュエルディスクを起動しようとするがライディングデュエルでDホイールに装着されたままで今は手に持っていない事に気付いたNo.6は廊下への扉に向かって走る。
しかし、そんな彼女の行く手を阻むようにNo.14とNo.15がデュエルディスクを構えて妨害する。双子というだけあって容姿も性格も行動もそっくりな二人は薄っすらと笑みを浮かべながらNo.6を見る。
「No.6。残念ですが貴方を逃がすわけにはいきませんよ」
「大人しく我らにしたがってください。今なら他のメンバーに知られる前に終わらすことが出来ます」
「っ!」
退路を防がれたNo.6の後方にリョーマは立つとデュエルディスクを起動する。
「どうやらデュエルディスクは持っていないようだな。そんなお前に何が出来る? 下手に抵抗するようなら力づくで押さえつけさせてもらうぞ」
「……!」
No.6は前後を挟まれ身動きが取れなくなる。こうなればと、強硬手段を取ろうとした時だった。
「とりゃー!」
「「っ!?」」
「……!」
双子の後ろにあった扉が蹴破られそこからNo.7が飛び出す。双子は蹴破られた事で前のめりに倒れ込みNo.6の退路が再び出現する。
「No.6! こっちだ!」
「っ!」
No.7の言葉で反射的に彼の方に走り出すNo.6。二人で部屋を出ていき残されたリョーマはめんどくさそうな表情をするとデュエルディスクの通信機能で誰かに連絡を取るとゆっくりと歩き、部屋を出ていくのだった。
「大丈夫か? No.6」
「ああ、大丈夫だ」
No.7のおかげで無事に逃走できたNo.6はお礼を言う。二人はアカデミアの廊下を警戒しながら走っていた。事後処理中という事もありアカデミア生の姿は無く無人の牢かが広がっていた。とは言えリリーサーズの面々は健在であるために油断なく進んでいく。目標は転送装置のある部屋だ。
「ほい、これお前のデュエルディスクとデッキな」
「! いつの間に……」
「あの後お前が消えてすぐにDホイール事回収してすぐにこっちに来たんだ。でもデュエルディスクの転送装置だと時間にずれが生じるな」
「仕方ないだろう。だが、そのおかげで今回は助かった。しかし、良かったのか? お前の行為は隊長を裏切るようなものだぞ?」
「構わないよ。だって、お前がいないリリーサーズに意味なんてないしさ」
No.7はそう言って笑う。そんな彼を見ているとNo.6は自然と笑みがこぼれてくる。No.7の好意は気づいていたがやるべきことがあると見て見ぬふりをしてきた。しかし、こうなってしまえば見て見ぬふりをする必要はなかった。
「……そうだな。私としてもお前が味方なのは心強い」
「え? 本当に?」
「お調子者で軽い所があるが背中を預けるにはこれ以上の人物はいないさ」
前半部分で貶されてしまうも後半の言葉でやる気を上げるNo.7。そんな彼をほほえましく思いながら走っていると遂に転送装置の部屋の前に到着した。
「いいか? 中には誰かいるはずだ。速やかに制圧して逃げるぞ。シンクロ、エクシーズ、スタンダード。どこでもいい。今すぐこの融合次元から逃れるんだ」
「おう! 任せろ! 行くぜ!」
軽く打ち合わせを行った二人は扉を開けて中に押し入る。しかし
「遅かったな」
「なっ!?」
「嘘だろ……!?」
部屋には赤城リョーマ以下数人のリリーサーズがいた。武力行使では突破できそうにない人員だ。更に二人が部屋に飛び込んだのを確認したように廊下にも数名の隊員が現れる。再び退路事奪われる形となった二人にリョーマは告げる。
「降伏しろ。と言っても聞く気はないだろう?」
「あれ? もしかして逃がしてくれたりします? それだと俺とNo.6も凄く助かるんですけど」
「それはお前達次第だ。No.14、No.15」
「「はい」」
リョーマの言葉に従い双子が前に出てデュエルディスクを構える。
「この双子に勝利出来れば逃げても構わないぞ。ただし、負ければお前たちにはパラサイトモンスターの洗脳実験のモルモットになってもらう。貴重な戦力を失いかねないが反抗的なままよりはマシだからな」
「……俺たちが双子に勝てないみたいな言い方じゃないですか」
「勝てるのか? こいつらのタッグデュエルはタイラー姉妹並みだ。俺だって苦戦するし最悪負けるかもな」
「……」
双子はタッグデュエルに置いて無敗とも言える記録を持つデュエリストだ。シナジーはほぼないと言えるNo.6とNo.7では分が悪いが逃げる事は出来ない。二人は顔を見合わせて頷くとデュエルディスクを起動する。
「いいぜ。やってやるさ」
「分かりました。では兄であるNo.14と」
「妹のNo.15」
「「双子である我らのタッグデュエルをお見せしよう!」」
「行くぞ!」
「「「「デュエル!」」」」
No.6 No.7 VS No.14 No.15
「隊長、アカデミア外で活動中の者達が帰還命令を受けて戻ってきました」
「分かった。では俺はここで失礼させてもらうよ。精々、抗う事だ。双子に勝つ事など、不可能なのだから」