「っ! ここは……」
黒咲瑠璃は体中に走る痛みで目を覚ました。目を覚ました彼女の前には綺麗な一室が広がっており気付けば自身の服も可愛らしいパジャマとなっていた。そこで漸くデュエルに負けて気を失った事を思い出し寝ていたベッドから飛び起きた。
すぐに周囲を確認するとベッドの近くに置かれているテーブルの上にデッキが置いてあり確認すると自身のデッキであることが分かる。ただし、“LL-アセンブリー・ナイチンゲール”だけ一枚足りないが他のカードはそろっていた。その事にホッとしつつここが何処なのか改めて確認する。部屋はかなり大きく自分が寝ていたベッドも五人くらいが寝られるくらいには大きい。そして、部屋の一室はカーテンで閉められているが窓であろうことが予測できた。瑠璃は自分がどこにいるのか知るべくカーテンを勢いよく開けた。
瞬間、彼女を日光が包み込む。突然の事に驚きつつ目を閉じて日光に慣れてから改めて外を見る。そして、次の瞬間には彼女の眼は大きく見開かれる事になる。
「なに、これ……」
彼女の目の前に広がっていた光景、それは大都市と呼ぶにふさわしい
「ここは一体……」
「ここはシティ。勝った者は全てを手に入れ、負けた者は全てを失う完全な自由競争社会」
「っ!?」
自身の呟きに答える声が聞こえ瑠璃は驚いて後ろを見る。そこには扉の前に一人の少女が立っていた。ゴスロリ衣装に身を包んだ可愛らしい少女は何処か不気味さを覚える瞳で瑠璃を見ていた。
「き、君は?」
「私はNo.11。アカデミア少数精鋭部隊リリーサーズの隊員」
「アカデミア!」
アカデミアという言葉を聞き瑠璃は警戒するがそんな彼女にNo.11は首を傾げている。
「? そんなに警戒する理由なんてないのに……」
「ふざけないで! 私達の故郷をあんな風にしておいて……!」
「それはごめんなさい。私はずっと
「次元? 一体何を……」
「貴方がいたのはエクシーズ次元。エクシーズ召喚を用いる次元世界でここはシンクロ次元。シンクロ召喚という召喚方法を使う次元世界よ」
「それってどういう……」
「貴方は次元を超えここに連れて来られたって事。あなた一人ではエクシーズ次元に戻る事は出来ないしアカデミアもシンクロ次元に貴方がいるとは思っていないでしょうね」
「……」
No.11の言葉に瑠璃は安堵したような、何処か不安そうな顔をして混乱している。今の自分では兄やユートといった大切な人と会う事は出来ないがアカデミアに怯える必要がないという安堵感もあったが直ぐにハッとなる。
「貴方もアカデミアなんでしょう!? なんでこんな匿うような真似を……」
「それが隊長、赤城リョーマの考えだから」
「赤城リョーマ?」
「貴方を降したアカデミアの戦士よ。そして私達リリーサーズの隊長でもあるわ」
「……そう」
自身を降した相手が精鋭だろうという事は分かっていたが少数精鋭部隊の隊長だった事に軽く驚いている。そんな瑠璃にNo.11は声をかける。
「これから、貴方にはここで生活してもらうわ。ここは私の家だから屋外に出る事は禁止だけど家の中なら好きに過ごしていいわ」
「え?」
「この部屋は貴方の部屋だから好きに飾り付けして構わないわ。基本的に第三者との接触は禁止だけど何か足りない物や欲しい物などの要望は私に言って。若しくはそこにあるタブレットに記入して」
そう言って小さな手で指を差した方向には立てかける事の出来る充電器に置かれたタブレットがあった。起動していないのか画面は真っ暗なままだ。
「もし興味があるのなら融合でもシンクロでも渡す事は出来るわ。ただし、デュエルディスクは無理よ。その気になればそれを使って逃亡、なんてことも出来るでしょうから」
「……」
「最後に、逃亡しようとした時は即刻アカデミアに引き渡すわ。アカデミアにいればこんな生活は出来ないし何よりどんな目にあわされるか分からないから。カード化はしないでしょうけどもしかしたらそうなった方がマシ! って言うくらいの事はされるかもね」
「っ!」
最後に脅し文句を言ったNo.11は要件が済んだのか自動扉を越えて廊下に出る。しかし、すぐにその足を止めて瑠璃に振り返った。
「今は11時。一時間後には昼食だから食堂に来てね。家の地図はタブレットに入っているから。それじゃ、一時間後に」
そう言うと自動扉は閉まり部屋には瑠璃だけが残された。一人残された瑠璃はベッドの傍までくると悲し気な表情をしながらベッドに腰かけた。
「兄さん……、ユート……」
瑠璃は会えなくなってしまった二人の名前を呼び何かに耐えるように肩を震わせるのだった。
その様子を壁に埋め込まれたカメラで監視されているとも知らずに……。
「黒咲瑠璃のシンクロ次元への転送を完了しました」
「ご苦労」
アカデミアにある自室にてリョーマは副隊長であるNo.1の報告を受けていた。瑠璃とのデュエル後すぐにアカデミアに直帰したリョーマは誰にも見られないようにNo.11がいるシンクロ次元へと転送させた。転送の履歴を調べられても定期的に転送を繰り返している為バレる事は無いだろう。
「しかし、宜しかったのですか? シンクロ次元よりもスタンダード次元の方がよろしかったと思いますが……」
「スタンダード次元にシンクロ次元並みの活動拠点があったか?」
「……いえ、無いです」
「ならば無駄な事を問いかけるな」
シンクロ次元にはとある理由から立派な活動拠点が存在している。しかし、スタンダード次元には大した拠点がなく瑠璃を監禁できるスペースなど存在していなかった。
「それと、プロフェッサーがお呼びです。恐らく、今回の件が原因かと」
「だろうな。俺がいなくなったらお前が指揮を続けよ。そうなっても良いように準備は進めて来た」
「了解しました。ですが、隊長が無事に戻られる事を祈っています」
「難しいと思うがな」
リョーマは自身の行いに後悔はしていないがカード化は免れないだろうと覚悟してプロフェッサーの下に向かうのだった。
「貴様の目的はなんだ? リョーマ」
プロフェッサーのいる場所に向かったリョーマは開口一番にそう問いかけられた。突然の事に驚きつつもすぐに返答する。
「全次元世界の統一です」
「……彼女はその重要なピースだ。それにも関わらずお前はユーリを妨害した挙句に、取り逃がした」
「申し訳ございません。レジスタンスの妨害がありました」
リョーマは相手を降したが連れて来る前にレジスタンスに妨害されて取り逃がしたという設定を作っていた。その為に自身のデュエルディスクに細工をし、返り討ちにしたというレジスタンスの者達のカードすら作って見せた。しかし、だからと言って逃がしてしまった事に代わりはなかった。
「……まぁいい。次は無いと思え。そして、次からはユーリを妨害せずに彼に任せろ」
「了解しました。それと、シンクロ、スタンダードの報告書はいつも通りに」
「分かった。戻れ」
「はっ!」
何のお咎めもなかったが次は無いと脅された。リョーマはお咎めがなかったことに安堵すると共に自分の役目を全うするべく部屋を出て言った。
リョーマが出て言った後、プロフェッサーは険しい表情でリョーマが出て言った扉を睨みつけ呟いた。
「……貴様は、一体何者だ」