赤城リョーマがレジスタンスにやられたという話は侵攻軍の中で即座に広まった。ある者はそれほどの実力者がいる事に驚き、ある者は更なる高みに行くためにその者を探し、ある者は恐怖を抱き出くわさない事を祈った。
そして、この日を境にアカデミアの戦士も負ければカード化されるようになり始めハンティングゲームと思っていたアカデミアの戦士たちも自分たちがカードにされる可能性があるという恐怖を抱く事となった。だが、それでもアカデミア側の方が全体的に強い為負ける事はほとんどなかった。
「隊長の敗北は大なり小なり影響を与えています」
侵攻軍の本部にある医務室にリョーマはいた。腹部を中心に包帯が巻かれており隣に座るNo.1の報告を聞いていた。
「エクシーズ次元への侵攻が始まってからという物脱走が起きていましたが昨日だけで十人以上の脱走が出ました。全員カードとなったようですが」
「そうか」
「それと、リリーサーズでも犠牲者が出ました。No.12です。カードとなっており既に回収済みです」
「分かった。新規隊員はどれだけ増えた?」
「今のところは新たにNo.20が誕生しました。ですがそれ以降は増えておりません」
「これで18人……。最低でもこの数を維持しろ。無論、質も落とすな」
「はっ!」
No.1に命令をするとリョーマは体を起こす。痛みが走るのかリョーマの顔を少し歪んでいる。そんなリョーマをNo.1は慌てて支える。
「隊長! 今は安静にしてください。肋骨の骨折に全身の打撲。四肢の骨が罅すら入っていないのが奇跡と呼べる状況なのですよ!? この怪我ではすぐの復帰は無理です」
「そんなものは
「……それは無理です。プロフェッサーより命令です」
「……なんだと?」
「【赤城リョーマは怪我の回復後スタンダード次元及びシンクロ次元への侵攻の準備を行え。リリーサーズは引き続きエクシーズ次元の掃討を命じるが必要な人員は連れて行っても構わない】です。残念ですが命令の変更は無理です」
「……くそが!」
再戦の機会すら与えられない事にリョーマは怒りを露にするが直ぐに落ち着きを取り戻すと再び横になる。諦めて怪我の回復を優先したのだろう。それが分かったNo.1は敬礼をすると医務室を後にした。五十人は余裕で受け入れられる大きさの医務室はほとんど使われた事がなく現在もリョーマによる貸切状態となっていた。
リョーマはデッキから一枚のカードを取り出すとそれを眺め呟いた。
「エクシーズ……。融合とは違う召喚方法……」
リョーマは何を考えたのか。覚悟を決めた表情をしてそのカードをデッキに戻すと目をつぶり意識を闇へと落としていった。
「私はこのカードで攻撃!」
「きゃあぁぁっ!!」
シンクロ次元、トップスの居住区にある巨大な屋敷に備え付けられた運動スペースにて黒咲瑠璃はNo.11とデュエルを行っていた。しかし、残念ながらデュエルは瑠璃の敗北に終わりダメージの衝撃で軽く吹き飛ばされていた。
「中々面白かったけど長期戦には向かないデッキね」
「……それは自覚しているわ」
No.11の言葉を素直に受け入れる瑠璃。実際に、今のデュエルは長期戦となりライフを削りきれなかった瑠璃はあっという間に劣勢となり敗北したのである。それを今のデュエルで身をもって知った瑠璃は少し落ち込んでいる。
何故、こうなっているのかと言うとここでの生活に慣れた瑠璃はNo.11の強さを知りたかった事とデュエルの腕を磨く目的でデュエルを申し込んだのだ。No.11も瑠璃の実力を知っておきたいと思い快諾したが結果は瑠璃の敗北で終わったと言う訳だった。
「もし、興味あるなら融合も教えてあげるわよ? エクシーズも良いけどそれ以外の方法も取り入れる事をお勧めするわ」
「……」
No.11の言葉に瑠璃は少し悲し気な顔をする。自らの故郷を滅茶苦茶にしたやつらが使っている融合を用いるという事に抵抗があるのだろう。そんな風に考えているのはNo.11にも分かったがそれならと他の提案をしようとした時だった。No.11のデュエルディスクに通信が入った。それを開ければNo.1の姿が映る。
『No.11。プロフェッサーの命令により隊長がエクシーズ次元への侵攻任務を解かれシンクロ次元、スタンダード次元侵攻の準備に回る事となった。故に、貴殿の屋敷を本部として動く事になる』
「突然ですわね。何かあったのですか?」
『隊長がレジスタンスに負けた。“
「それって……!」
RRの言葉に瑠璃が反応する。No.11は一瞬瑠璃の方を見るが直ぐにNo.1の方を向く。
「分かりました。準備を整えておきます」
『頼んだぞ』
「はっ!」
通信を終了すると瑠璃の方を改めて向く。関係者という事は瑠璃が反応した事で分かるがどういった人物なのかNo.11は聞いてみる事にした。
「知り合い?」
「えっと、兄さんが使っているモンスターです」
「そう、貴方のお兄さんが……」
偶然だろうが妹を連れ去った張本人を兄が倒したという構図にNo.11はクスリと笑う。だが同時に隊長を降したという事でその者への警戒を上げると同時に自分で勝てるかという不安が押し寄せてくる。
リリーサーズにとって隊長である赤城リョーマは絶対な人物だ。自分たちが挑んでも勝てない。そんな人物を倒したという事は自分たちよりも強い可能性がある。
エクシーズ次元を越えてくる事は無いかもしれないがNo.11はデュエルする事になってもいい様に準備をしようと心に決めた。その為にも瑠璃への質問は必須と言えた。
「それじゃそのお兄さんの名前とか教えてもらえる?」
「え?」
「名前を知らないと呼びづらいでしょう?それにもしかしたらあなたの事をお兄さんに伝える事も出来るだろうし色々と情報を教えてほしいの」
「そう言う事なら……」
自分の生命線を全て握っている事もあるが交流出来るのが彼女だけという事もあって人との会話に飢え始めていた瑠璃はNo.11の言葉を無意識のうちに納得して様々な事を話し始めた。
その結果、瑠璃の兄である黒咲隼の情報がリリーサーズで共有される事になるのだった。