第七話「スタンダード次元」
スタンダード次元。それは全ての次元の中心に位置する場所であり融合も、エクシーズも、シンクロも少し前までは存在していなかった。しかし、最近では大手企業のレオコーポレーション傘下の
そんなLDSの本部のタワーを赤城リョーマは眺める。彼がいる舞網市の中で最も目立つそれを何を思って見ていたのか分からないがやがて地上に視線を戻して歩き始めた。
スタンダード次元に置いてデュエリストは皆何処かの塾に入っておりそこから公式戦に出るという形を取っている為無所属というのは出場資格すらなかった。
とは言え彼の目的は侵攻する際の地ならしや準備がメインである。プロになるのが目的ではなかった。
「スタンダード次元……。取り敢えず実力を見ておくべきか」
スタンダード次元は今のところ大した拠点もなく根が張れていない。四つの次元の中で最も弱いという事で後回しにされていたからだ。その為赤城リョーマはまずはこの次元の実力を見ておこうと思い色々と見て回る。その時、とある店の前に張られていた紙が目についた。
「現役チャンピオン、ストロング石島と榊遊勝の息子榊遊矢によるエキシビションマッチ? ……こいつは」
リョーマはその紙に乗っている挑戦者、榊遊矢の顔を見て驚く。何故なら、その顔はユーリやエクシーズ次元で出会った黒き竜を使う者と同じ顔をしていたのだから。
「試合日は……、今日か。丁度良い。行ってみるとしよう」
目的を決めたリョーマは早速そのデュエルを観戦しようとスタンダード次元の拠点へと戻っていくのだった。
「……あのー、隊長?」
「何だ?」
「何故私も一緒にテレビの前にいるのでしょうか?」
数時間後、遂にエキシビションマッチが開催される。リョーマは拠点に設けられた大型テレビの前に座っていたがその隣にはリリーサーズの隊員であるNo.4の姿もあった。先程からずっとオドオドしており情けないという言葉が似あうような青年だった。
そんな彼はリョーマの隣に座らされてテレビ観戦を共にさせられていた。
「俺はこの次元の事について詳しくない。今司会の説明にあったアクションデュエルとかな」
「あー、つまり説明役って事ですね。分かりました」
No.4は自分が呼ばれた訳を知り諦めたように肩を落とすと説明を始めた。
「この世界、ソリットビジョンシステムの技術力が高くて触れる事が出来るリアルソリットビジョンを発明したんですよ。で、今テレビに映っている榊遊矢の父である榊遊勝がモンスターにのってフィールドを駆け巡ったんですよ。それを元に完成したのがアクションデュエル。モンスターに乗ったりしながらリアルな感触を楽しめるんです」
「成程、それは人気が出そうだな」
「で、このデュエルの特色はフィールド内に決まった枚数のアクション魔法が落ちているんです。基本的に手札に一枚加えられるそれは相手ターンでも発動出来て攻撃の回避やダメージ増加、攻撃力増加と言った事が出来るんです」
「……それはめんどくさいな」
「それを嫌う人もいますが見ての通り、一般的には大人気ですね」
「信じられないがな」
「ですがやってみるとそれなりに楽しいですよ。依存するのは不味いですが便利なカード程度に覚えておけばいいと思います」
「……」
そう言う話をしている内にデュエルが始まった。その内容を見ていくうちにリョーマの表情は険しくなっていく。警戒しているとかではなく、あまりにも幼稚なデュエルにだ。
「……No.4、チャンピオンというのはここまで弱いのか? 俺なら後攻で止めを刺せるぞ」
「いや、スタンダード次元のレベルは低いってわかっているでしょう? 最近じゃLDSでいろいろな召喚方法を扱うようになったらしいですけど」
「こいつは使わないのか? 見ているだけで眠気がして来る」
「あはは……」
リョーマの辛辣な言葉に返す言葉もないとNo.4は苦笑する。そうこうしているうちに榊遊矢はエースモンスターを破壊されてピンチに陥った。リョーマはこれで終わりだと立ち上がりかけたその時だった。
「っ! これは……!」
「え!?」
リョーマとNo.4はテレビを見て驚く。何故なら榊遊矢が一気に三体のモンスターの特殊召喚に成功していたのだから。
「……こんな召喚方法が存在していたとは」
「え、えっと。一応弁明させてもらうと私も初めて知りましたからね? 観客の反応を見てもらえば分かりますけど一般的ではありませんから」
「……そうだな」
チャンピオンであるストロング石島も驚いている事から一般的ではなくこの場で公になったと言えるものだった。
そこからのデュエルは怒涛の勢いで進んだ。三体のうち二体が石島のモンスターの攻撃力を下げて残った一体が止めをさした。それにより誰もの予想を覆して挑戦者である榊遊矢が勝利した。盛り上がる観客の声援を聞きながらリョーマは思考する。
「……やつも、ならあのドラゴンは……」
リョーマは榊遊矢が召喚したドラゴン、ストロング石島を倒した“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”を見ながら口角を上げるのだった。