遊戯王ARC-V 黒竜を従えしデュエリスト   作:鈴木颯手

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第八話「榊遊矢」

 ストロング石島と榊遊矢のデュエルが行われた翌日、赤城リョーマの姿は一つの塾の前にあった。そこは榊遊矢が所属する遊勝塾という場所で榊遊勝の名前が付けられた塾だった。そこはたった四人しかいない小さな塾だが今や大行列が出来ている塾となっていた。

 昨日のストロング石島とのデュエルを見た人達が入塾希望でやってきたのだ。リョーマも入塾希望ではないが昨日の特殊な召喚方法、ペンデュラム召喚を見てみたいと思ってやってきていた。

 

「はーい! 入塾希望の人はこの書類にサインしてくださーい!」

 

 中学生くらいの少女の言葉に入塾希望の子供たちが一斉に手を上げている。リョーマは部屋の隅でデュエルが行われるフィールドを眺めていた。その様子は塾側の人も不思議がっているが直ぐにデュエルが始まる。

 

「Ladies&Gentleman! 今日は僕のワンマンショーにようこそ!」

「何がワンマンショーよ! 一人じゃデュエル出来ないでしょ!」

 

 榊遊矢の言葉に先ほどの少女、柊柚子がどこから取り出したのかハリセンで頭を叩いて突っ込みを入れている。しかし、その事がきっかけで悪役となってしまった柚子は悪乗りかそれに便乗して悪役としてデュエルを開始した。

 

「……ほう、これは」

 

 リョーマは観戦用の窓から見えるソリットビジョンによって作られた光景に感心した。デュエルの腕は低い次元だが技術力はアカデミアに劣っていないと。その理由はあるのだが今の状況でリョーマは知る由もなかった。

 そうして始まったデュエルだが微妙と言わざるを得なかった。何しろデュエルは終始柚子の優勢であり榊遊矢はペンデュラム召喚すら行えずに敗北したのだから。それを見てがっかりした者達は「ズルだ」と決めつけて去っていった。そして、ペンデュラム召喚が出来ずに落ち込むが一人の少年が励ましたことにより遊矢は必ずマスターすると意気込んだ。

 めでたしめでたしと言える展開だったがそこで漸く柚子が聞きづらそうに一人の男に話しかけた。

 

「それで、えっと……。貴方は?」

 

 柚子が声をかけたのは自分たちより年上らしき男性、赤城リョーマだった。リョーマはずっと部屋の隅でデュエルを観察していたがデュエルが終わってからは腕を組んで黙っていたのだ。

 リョーマはゆっくりと話し始める。

 

「……ペンデュラム召喚を行う前に行ったモンスターのセッティングの際にそれぞれ数字が浮かんでいた。つまり、その間のレベルのモンスターを特殊召喚出来るという事だろう」

「え?」

「あ! そうか!」

「4と8。つまりレベル5から7までのモンスターしか特殊召喚出来なかった。それがいなかったため貴様は負けたという事だ」

「成程……。ってそれを聞きたいんじゃなくて!」

「赤城リョーマ。俺の名だ。ペンデュラム召喚に興味があって今日は来た」

「それって入塾希望って事か!?」

 

 柚子の父にして塾長である柊修造は笑みを浮かべているがリョーマは首を横に振った。

 

「違う。ただ興味があるだけだ。まぁ、無所属ゆえに塾を聞かれても困るがな」

「無所属!? そんな人がいたなんて……」

「公式戦は興味がないから出た事はない。俺自身デュエルの腕は強いと思っているからな。態々学ぶ必要性を感じたことが無い」

 

 どこか自信過剰とも取れるリョーマの言葉に柚子は少し引き気味だった。とは言え遊矢はリョーマからの言葉を聞いて自分のデッキと向き合っていて話を聞いておらずそれを見たリョーマが言う。

 

「榊遊矢。俺とデュエルしろ。そして、ペンデュラム召喚で俺を圧倒して見せろ。それが出来たら入塾してやってもいいぞ」

「っ! 俺に勝てたら、じゃないんだな」

「勝てるのか? 言っておくが俺は強い。自信過剰じゃなくてな」

 

 そう言ってリョーマは冷たい目で遊矢を見下ろす。凍てつくような視線に遊矢は一歩下がってしまう。だが、そんな空気を換えるように修造が話し始めた。

 

「よし! なら早速デュエルを行おう! 塾生が増えるチャンスだし遊矢も今のアドバイスを反映するチャンスだろう?」

「ちょっとお父さん! 勝手に決めたら……!」

「……分かった。デュエルするよ。ペンデュラム召喚をマスターしたいしさ」

「もう! 遊矢!」

 

 人の話を聞かない男連中に柚子は呆れつつもデュエルの準備を行うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『二人とも、準備は出来たか?』

「ああ!」

「勿論だ」

 

 デュエルコートに立ったリョーマは借り受けたデュエルディスクを触りながら修造からの問いかけに返事をする。アカデミアにいた頃に使っていたデュエルディスクは置いてきてしまっておりデュエルディスクがない事に気付いたのはつい先ほどの事だった。その事に呆れつつ柚子はデュエルディスクを貸した事でデュエルが出来るようになったのである。

 準備が出来た事によりフィールド魔法が展開され飾りっ気のないだだっ広いだけの部屋が西部劇に出てきそうな開拓村へと変貌した。

 

『では行くぞ! 戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが』

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い」

「……フィールド内を駆け巡る」

『見よこれがデュエルの最終進化系』

「アクション」

「「デュエル!」」

 

RYOMA VS YUYA

 

「先行は俺! 俺は手札から“EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポ”を召喚! 俺はターンエンド!」

 

EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポ(地/獣族 星3)

ATK800 DEF800

 

 遊矢が召喚したのはストロング石島でも出していたモンスター。しかし、その攻撃力は低いうえに伏せカードもなし。完全にアクション魔法頼りのデュエルという事が分かる。そんなプレイをする遊矢にリョーマは怒りが覚えてくるが当の本人はヒッポに乗ってフィールド内を駆けまわり始めた。

 リョーマは怒りを抑え、深呼吸を幾度かすると自分のターンへと入った。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

RYOMA

手札5枚→6枚

 

「俺は手札の“真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)”の効果発動! 手札、フィールドのレッドアイズモンスター一体をリリースする事で特殊召喚出来る! 俺は“真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)”を手札からリリースして“真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)”を特殊召喚!」

 

真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)(闇/ドラゴン族 星7)

ATK2400 DEF2000

 

「攻撃力2400!?」

「いきなり上級モンスターをだしてくるなんて……」

「それも手札からのリリースなんて……」

 

 観戦している柚子や子供たちはリョーマの召喚に驚いているがまだまだ彼のプレイは続く。

 

「更に俺は永続魔法“レッドアイズ・サンクチュアリ”を発動。この効果により“真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)”よりレベルの低いレッドアイズモンスター一体を手札に加える。俺が手札に加えるのは“真紅眼の爆風竜(レッドアイズ・ブラスタードラゴン)”だ。そして、手札を一枚墓地に送る」

 

RYOMA

手札4枚→3枚

 

「そして俺は“真紅眼の爆風竜(レッドアイズ・ブラスタードラゴン)”を通常召喚する」

 

真紅眼の爆風竜(レッドアイズ・ブラスタードラゴン)(闇/ドラゴン族 星4)

ATK1600 DEF1000

 

「“真紅眼の爆風竜(レッドアイズ・ブラスタードラゴン)”の効果発動! このカードをリリースする事でこのカードの元々の攻撃力の半分のダメージを与える! ブラスターショット!」

「え? うわ!」

 

YUYA

LP4000→3400

 

 走り回るヒッポの上に乗った遊矢に“真紅眼の爆風竜(レッドアイズ・ブラスタードラゴン)”が放った炎の球体がぶつかり彼の顔を真っ黒こげにする。それを喰らった遊矢は一瞬硬直するが直ぐに頭を振ると再び走り出した。

 

「バトル! “真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)”で“EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポ”を攻撃! ダーク・ネオ・フレア!」

「っ! アクション魔法“回避”! 相手モンスターの攻撃を無効にする!」

「やはりか……」

 

 想定通りの動きをする遊矢にリョーマは失望のため息を吐く。そして自分のターンを終わらせるべく行うべきことを行う。

 

「俺はカードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

YUYA LP3400

手札4枚

モンスター

EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポ

魔法・罠

なし

 

RYOMA LP4000

手札0枚

モンスター

真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)

魔法・罠

レッドアイズ・サンクチュアリ

セット

セット

 

 この状況だけを見ればリョーマの優勢だが遊矢は手札を4枚残しておりペンデュラム召喚を行う事が出来れば一気に逆転の可能性もあった。それが分かるだけに修造は二人のデュエルを真剣に見ており柚子は少し心配に眺めていた。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

YUYA

手札4枚→5枚

 

 そして遊矢のターンとなり自身の手札を確認する。あまり良い手札ではなかったようで少し不満げな表情をしていた。しかし、すぐに気を取り直すとプレイを開始する。

 

「俺は“EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポ”をリリースして“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”をアドバンス召喚する! “EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポ”はアドバンス召喚の際に一体で二体分として扱える!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(闇/ドラゴン族 星7)

ATK2500 DEF2000

 

「ペンデュラム召喚を行うには何かが足りなかったようだな」

「ああ! だけどこれだけでも十分さ! 俺はアクション魔法“ハイダイブ”を発動! ターン終了時まで“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”の攻撃力を1000アップする!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ATK2500→3500

 

「“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”はレベル5以上の相手モンスターとの戦闘で発生するダメージを二倍にする!」

「これで俺が受けるダメージは2200となるわけか」

「その通り! 行くぞ“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”で“真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)”を攻撃! 螺旋のストライク・バースト!」

 

 “オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”によるブレスが“真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)”に迫っていく。しかし、その攻撃を見てリョーマは口角を挙げ受け入れた。

 

RYOMA

LP4000→1800

 

「やった! 大ダメージだ!」

「流石遊矢兄ちゃん!」

「……遊矢」

 

 遊矢が大ダメージを与えた事で盛り上がる観客たち。しかし、柚子は何処か不安そうな顔で遊矢を見ていた。そして、その不安は的中する。

 

「俺は“真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)”の効果を発動! このカードが戦闘・効果で破壊された時、墓地からレッドアイズモンスター一体を特殊召喚する! いでよ! 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)!」

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)(闇/ドラゴン族 星7)

ATK2400 DEF2000

 

 “真紅眼の亜黒竜(レッドアイズ・オルタナティブドラゴン)”のリリース素材として墓地に送られていた黒竜が雄たけびを上げながらフィールドへと現れた。しかし、まだ効果は終わっていなかった。

 

「更に、この効果で“真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)”の特殊召喚に成功した時、元々の攻撃力は二倍になる」

「に、二倍!?」

「二倍って事は……」

「攻撃力4800!?」

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)

ATK2400→4800

 

「そんな……」

「更にリバースカードオープン! “レッドアイズ・トライアル”! この効果で破壊されたモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを与える!」

「うわああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

YUYA

LP3400→2200

 

「伏せカードの対策も立てておくべきだな。もし俺の伏せカードがミラフォだった場合“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”は破壊されていただろうな」

「く……っ!」

「ペンデュラム召喚をマスターする前にそれ以外の詰めの甘さを何とかするべきではないのか?」

 

 リョーマの辛辣な言葉に遊矢は歯を食いしばりながらうつむく。大ダメージを与えたという興奮も更なる厄介なモンスターを呼び出す原因となり、更には反撃のダメージも受けてしまったのだ。全く伏せカードを警戒して否かった自分の詰めの甘さが招いた出来事であり何も言い返す事が出来なかった。

 

「で?他にやる事はあるか?」

「……俺はターンエンド」

 

 遊矢は腕を握り締めながらそう宣言した。それを見たリョーマは失笑とも取れる鼻息を吐くとデッキに指をかけた。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

RYOMA

手札0枚→1枚

 

「バトル! 俺は“真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)”で“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”を攻撃! ダーク・ギガ・フレア!」

「っ! まだ負ける訳にはいかない! アクション魔法“回避”!」

「この瞬間! リバースカードオープン! “魔宮の賄賂”発動!」

「なっ!?」

「アクション魔法“回避”を無効にして破壊する。その代り、一枚ドローするといい」

「くっ!」

 

YUYA

手札4枚→5枚

 

 遊矢は引いたカードを見るがこの状況を覆すカードではなかったようだ。遊矢は顔を落とし“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”を破壊して迫って来る火球に全身を包まれた。

 

YUYA

LP2200→0

 

RYOMA WIN

 

「遊矢!」

「遊矢兄ちゃん!」

「遊矢!」

 

 フィールド魔法はデュエルの終了と共に解かれ元の殺風景な場所に戻る。その瞬間、。塾のメンバーが次々と入ってきて遊矢を取り囲む。遊矢は顔を落として落ち込んでいるのが分かる。そんな遊矢にリョーマは止めとも言える言葉を放つ。

 

「貴様とのデュエルはつまらなかった」

「……」

「アクション魔法に頼りきりでありモンスターを生かし切れていない。魔法・罠カードすら伏せずに攻撃力の低いモンスターを攻撃表示のままで置く。プレイングミスと言われても可笑しくない動きだ」

「……」

「それならそれで動きようがあっただろうがお前がやったのは伏せカードガン無視の攻撃だ。大ダメージを与える事に成功したがそれを帳消しにする相手の展開を許し、次のターンでは得意のアクション魔法すら防がれて敗北した」

「……」

「ストロング石島の時も思ったが……。お前、弱いな」

「っ!」

「ストロング石島も微妙だったがお前は更にその上を言っていた。アクション魔法を使うのは良いだろう。だが、それに依存すると今回のような事になる俺だったらモンスターを並べつつ動きを見るな。何なら除去手段を考える。伏せカードは何が起こるか分からないからな」

 

 リョーマの言葉に柚子や修造は言い返そうとするも実際にその通りの為口を出せずにいた。遊矢も何も言えず体を震わせて顔を下げている。

 

「エンタメデュエルだったか? デュエルで笑顔を作りたいのならそれを行える強さを持て。今のお前は道化以外の何物でもない。今の貴様が作れるのは笑顔ではなく嘲笑だけだ」

「……そんなこと!」

「無いと言い切れるのか? 少なくとも俺は笑顔になっていない。むしろ序盤は怒り、中盤は呆れ、終盤は虚無を感じていた。分かるか? 向き合っている対戦相手すらこれなんだ。観客たちを笑顔にするなど夢のまた夢だ」

「……」

「別に貴様がそれでもいいというのなら俺は止めない。止める意味もないしな。だが、そうじゃないのなら、俺の言葉をよく読みこんでみる事だな」

 

 そう言うとリョーマは出口に向かって歩き出した。

 

「デュエルまでさせてもらって悪いが今日は帰らせてもらう。入塾に関してはその時に決める。精々それまでに何か一つくらい俺を圧倒出来るものを作っておくことだ」

 

 そう言ってリョーマはデュエルディスクを柚子に渡すと遊勝塾を後にするのだった。残されたのは論破されて心をへし折られるレベルのダメージを受けた遊矢とそれを心配そうに見る修造や柚子たちだけだった。

 




真紅眼の爆風竜(レッドアイズ・ブラスタードラゴン)(闇/ドラゴン族 星4)
ATK1600 DEF1000
第三話参照

レッドアイズ・サンクチュアリ(永続魔法)
このカードの①②の効果は1ターンにどちらか1つしか発動できない。
①自分のメインフェイズに自分フィールドの「レッドアイズ」モンスター一体を対象に発動できる。対象のモンスターよりレベルが低い「レッドアイズ」モンスター一体を手札に加える。その後、手札を一枚墓地に送る。
②自分フィールドのレベル7以下の「レッドアイズ」モンスター一体を対象に発動できる。手札の「レッドアイズ」モンスター一体を墓地に送る事で墓地に送ったモンスターの元々の攻撃力の半分の数値だけ対象のモンスターの攻撃力をアップする。

レッドアイズ・トライアル(通常罠)
第二話参照
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