ハイスクールD×N   作:Neverleave

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書きたいから書いた。
後悔などしていない。


~プロローグ~

 闇夜の静寂に包まれた森の中。

 天上に浮かぶ月が木々の間をすり抜け、暗闇を僅かに照らし出している。黒い影としか木々や草花を認識できない中で、風に揺れる木の葉の囁きと虫たちの鳴き声が響くこの場所に、四人の少年少女たちの姿があった。

 その全員が、人々の中でも美男美女と持て囃されるような者達ばかり。一人は燃え盛る炎のように赤く美しい髪をなびかせ、凛とした目つきと姿勢で仁王立ちする西洋人風の美女。一人は、最初の女性と打って変わって漆のような艶やかな黒い髪を纏い、おしとやかに振る舞う和風美人。一人は、遠目から見てもハッキリと目に映るほどに輝く金髪に、爽やかな表情を浮かべる美形の男子。一人は、この集団の中で一番幼く見えるのに、これといった感情を表に出さず大人びた雰囲気を醸し出す白髪の少女。

 街中を歩こうものならば人だかりすらできてしまえそうな絵面ではあったが、深夜の森の中で見るにはおかしな構図に違いない。服装を見れば、この近辺でも進学校として有名な駒王學園の制服を身に包んでおり、学生……しかも、優等生が集う学園の生徒にしてはあまり相応しくないところにいるというのもあって、その光景は奇妙であった。

 

「部長、魔力反応があった場所はここですわ」

「別段、この付近ではぐれが出現したという知らせもありませんが……」

「……何も感じられません」

 

 赤い髪の女性に向かい、他の三人はそれぞれ何かの報告をするように口伝えするが、一般人が耳にすれば全員が首を傾げるような内容だ。

 それもそうだろう。まず第一に彼らは普通の学生どころか、人間ですらないのだから。

 

「朱乃、祐斗、子猫。油断は禁物よ。確かに情報はないし、魔力も全く感知は出来ないけれど……つい先ほど、一瞬だけでも感じられたあの凄まじい力。いつどこから、何が来るかもわからない。すぐに戦うことができるように構えておきなさい」

「了解です(わ)」

「……了解」

 

 黒髪と金髪の二人は即座に、白髪の少女も少し遅れて了承の返事を送る。

 

 リアス・グレモリー。

 姫島朱乃。

 木場祐斗。

 塔城子猫。

 この四人は、駒王学園オカルト研究部に所属する、『悪魔』だ。

 『悪魔』とは、この世に存在する巨大種族である人間、天使、堕天使の三つに並ぶ者達の呼称であり、魔王を筆頭とする集団である。

こう言ってしまえば残虐の限りを尽す悪の権化、というようなイメージでも浮かんでしまうかもしれないが、この四人はそのイメージとは違って人間に害悪を進んでもたらそうとはしない。むしろ、現代に生存する悪魔の大多数は人間や他の種族との共存を望んでおり、敵対する種族から攻撃を去れない限りは穏便に事を済ませようとするのがほとんどなのである。

 そんな種族たちと同じ存在であるこの四人だが、表向きは部活と称してこの区画一帯の治安、ある種の警備を夜な夜な行っているのである。当然のことながら悪魔や天使、堕天使にも平穏を乱そうとする輩は少なからず存在し、どうしてもその集団を殲滅する役を担う者達が必要となる。若くしてリアス達はその任に着き、時として出現する悪を砕く剣として暗躍しているのである。

 

「……とはいえ、ここにやってくれば何かしらわかると期待していたのですが……何もありませんわね」

「痕跡くらいはどこかにあるかと思っていたのに……」

 

 姫島と木場は訝しげに小首を傾げ、リアスも表にこそ感情を出さないものの、胸中では数多の疑問が浮上していた。

 

(いったいなんだったというの……? あのときの魔力の波動は……)

 

 さて。人間社会にて陰で活躍するリアス・グレモリー一行だが、なぜこのような場所にいるのかと言えば……それは数分前に時間をさかのぼることとなる。

 いつものように部室で待機し、不穏な事件や現象などもなく優雅にティータイムと洒落込んでいた四人。それが夜中でなければ微笑ましい光景だったのだが、とりあえず四人は特に仕事もなく普通の高校生のように談笑していたのである。

 だが、そのようなことをしていた最中。突如として巨大な魔力が、街の片隅にあるこの森の中で見受けられた。先ほども説明したが、現代を生きる人間以外の種族は基本的に争いを望まず、このような魔力が発生するという現象自体が今時起こり得ないのである。

 これは何かが起こったに違いない、私の領土で荒事をしようなどとはいい度胸だ、とリアスを筆頭に皆は意気込み現場へ向かおうとしたのだが……

 

 その次の瞬間。魔力が発生したその場所から、膨大な光の波動を感知した。

 遠方にいるはずのリアス達ですら思わず硬直してしまうほどの存在感と威圧感。カテゴライズするのであれば、間違いなく最上級に入るほどの力であると判断したリアス達は、いよいよ只事ではなくなったと考えて急行した――

 

 ――のだが。

 

「駄目ですわね。戦闘の痕跡はおろか、魔力や光すら感じることができませんわ」

「部室からでも圧巻するほどの大きな力だったというのに、どうして……」

「……理解できません」

 

 草木を掻き分けて進む四人だが、そこには平常な営みを続ける自然が広がっているだけで、彼らが予期していたような焦土や荒れ地などは一切ない。

 そう。前触れもなく出現した魔力も光の波動は、リアス達がここへとやってくる数分の間に、一瞬で消滅してしまったのである。遠く離れていってしまった、というのではなく。その場から、文字通り消えてしまった。

 このようなことはリアス達も未だかつて経験したことがなく、せめて森の中で何があったのか調べようとしているのだが……争った跡はおろか、ここに人やそれ以外の種族がやってきたような痕跡すら見つかっていない。間違いなく、中心地はここだったというのに。

 

(……いったい、どういうこと?)

 

 わけがわからない。調べれば調べるほどに謎は深まり、混乱は増すばかり。

 天使や堕天使が、自分たちを誘い出すための罠だったのかとも思いはしたが、その割には気配がなさすぎる。それにあれほどの力量であるならば、ミカエルやアザゼル……それぞれの勢力のトップクラスに匹敵、下手をすればそれ以上のものだ。しかしそんな者が彼ら以外にいるとは聞いていないし、もし仮に彼らの仕業であるのならば、今度は理由がわからない。三大勢力で戦争を今頃勃発させたとしても、どれもが戦力不足でジリ貧になり、三つすべてが共倒れしかねない。それくらい、勢力の頭領たる彼らならばわかっているはずだろう。

 

(……『どういうことなのか』、ということよりも、まずは『どうするべきか』を考えなきゃね。あれほどの光と魔力ならば、お兄様なら何か知っているはず。まずは報告を……)

 

 と、探索を続ける一方で思案するリアス。

 ここまで何も出てこないと自分たちだけでの捜査は難航するし、先ほど感じた膨大な力についても考えてみれば、もはやこの問題は自分たちでどうにかできる範囲を超えてしまっている。ここは上層部に今日の出来事を報告し、対応を打診してもらうしかないだろう。

 とりあえずはここで、一端探索を終えるとしよう……と、結論にまで至ったそのとき。

 

「……ッ!! 部長!!」

「なに? どうしたの子猫――ッ!!」

 

 無表情だった子猫が、戦慄したように目を見開いて叫ぶ。

 それと同時にリアスが、一瞬遅れて姫島と木場も感じた。

 この場にいる皆を浄化しかねないほど強大な、光の波動を。

 

「この感じ……近づいてきている……!?」

「いや、これは……まるで別の次元から……!!」

「来るわ、みんな構えて!!」

 

 それはおぼろげな存在感だったというのに、まるで徐々に形を成していっているかのように鮮明に感覚できるようになっていく。四人はいざという時のために備え、こちらへとやってきている光に慄きながらも迎撃の構えを取った。

 そして。四人の眼前で、眩い光が弾ける。

 

「なっ!!」

「ぐぅ!?」

「くっ……」

「うぅっ!?」

 

 それぞれが閃光を浴びて苦悶の声を漏らす中、光はゆっくりと弱くなっていく。

 光が収まり、やがて四人の視力も回復してくると、そこには跪いて息を荒げる一つの影があった。

 

「……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 全身を真っ黒なコートで覆っているが、その形姿からして四種族のどれかであろう。

 いや、あれだけの光の力を放つのだから、十中八九天使か堕天使のいずれかであることは間違いない。

 なぜこんなところにこんな者がいるかはわからないが、ともかくリアスは領主としての責務を果たすべく、声をかける。

 

「……あなたは、いったい……?」

 

 その瞬間。顔は見えずとも、黒コートは四人の目から見て明らかに驚愕した様子を見せて、こちらへと視線を向けた。

 

「なんで――くっ!!」

「ちょ、ちょっと待って! 私たちはあなたと戦う気なんて――」

 

 リアスが言葉を続けていたそのとき、黒コートは懐から取り出した銃らしきものを四人に向け、トリガーを引く。すると銃口のような場所から閃光が弾け、再び全員の視力を奪ってしまう。

 

「ぐぅっ!?」

「――ッ!!」

 

 相手が動けなくなったところを確認すると、黒コートは一目散に逃げた。

 リアス達もそれを追いかけようと思ったが、予想以上に黒コートは俊敏だった。聴覚を頼りに追いかけようにも視覚も奪われてしまっては、下手に動くと樹などの障害物にぶつかりかねない。しばらくして目が元に戻ったときには既に黒コートはおらず、足音も聞こえぬほど遠くへと逃走してしまっていた。

 

「ッ、追いかけないと!」

「ダメです、魔力が感じられません。ここまで距離を離され、気配も絶ってしまわれては……」

「……逃がしてしまいましたわね……」

 

 木場が慌てて黒コートの跡を追いかけようとするが、黒コートの男は、出現したとき感じられた光の波動が嘘のように消滅していた。魔力の残りかすすら感知できないほど隠遁能力は凄まじいらしく、これではいくら彼らでも追跡することは出来ない。

 

「いったい何者だったのでしょうか? あれほどの力を持つのに、僕らへ直接的な攻撃は一切せずに逃走するなんて……」

「敵意はない、と判断してよろしいのかもしれませんわね。でも、あんな光の波動、無視するわけにもいきませんし……」

「……考えていても仕方がないわ。あの黒コートの人物については、また今度調べることにしましょう……これ以上ここにいても意味はなさそうだわ。今日は解散よ」

 

 リアスの一言で、それぞれは了承の頷きをするとともに帰路へと着く。

 姫島、木場、塔城の三人が先を歩く中、リアスはふと肩越しに振り返り、黒コートの男が出現した空間を見つめる。

 

 神々しさと崇高さがありながら、そこに慈愛すらも感じられた不思議な光。

 光を毒とする悪魔の一人だというのに、それを見つめたリアスの心には恐怖はなく、ただ温かい何かが自分を包み込むような安堵感があった。

 

(あの光……私、見たことが……? ……まさか、ね……)

 

 おぼろげな過去の記憶が脳裏を掠めるが、リアスは頭を振ってそれを否定する。

 そのまま二度と振り返ることなく、彼女は他のオカルト研究部メンバーに続いて来た道を戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……なぁ、ドライグ。もうあいつら、追ってきてねぇ、かな……?」

『さぁな。しかし魔力があそこから動いていないし、近くにいる気配もない。追ってきてはいないだろ』

 

 森を抜けた場所にある公園。黒コートに身を包み、フードを深くかぶって顔を隠していた男は、息を切らしながら『誰か』に向かって語り掛けていた。

 その『誰か』の声は一誠にしか聞こえず、また彼に語り掛けることができる者も一誠しかいない。それは彼の身体に宿る、二つのうち一つの力。

 かつて三種族が大戦争を繰り広げていたその時代にて、あまりにも強く、あまりにも膨大な被害をそれぞれにもたらしたが故に封印されてしまった、二天龍が一角。

 『赤龍帝(Welsh Dragon)・ドライグ』。それが彼の中にいる、一人の相棒だった。

 

「よ、かったぁ……出た途端に目の前にいるんだものな。マジでビックリしちまったよ……目くらまししちまったけど申し訳ねぇ、どこかの赤の他人さん達……」

『まぁ追われてないってだけで、これからまた会うことになるかもしれんがな。明日辺りにでも』

「え゛? で、でも俺、フード……」

『気づかなかったのか? あいつら悪魔だぞ。魔力は追えなくとも、下手すりゃフードの奥にあった顔を見られてる可能性だってあるんだからな』

「……う、げぇ……」

 

 見られてしまった。

 ただの可能性の話とはいえ、相棒たるドライグから指摘されたそれは一誠にとって全く喜ばしいものではなかった。どうしても、この正体だけは知られたくない。その一心でこんな暑苦しい服装をして活動をしているのに。

 心の底から疲労と落胆の感情を吐き出すように、一誠は項垂れて声を漏らす。

 

『……今回は、いつもみたくメタフィールドを初っ端から張れなかったからな。不意打ち喰らっちまったのは痛かった……仕方ねぇさ』

「……ああ。わかってるけど……クソ……」

 

 悪態をつきながら、一誠は公園のベンチにどっかりと腰かけて、その手に握るものを見つめる。

 それは、一見すると子供の玩具のようにも見える小さなスティックだった。白を基調として赤いラインがY字状に刻まれているそれは、鞘に納められている。

 とても小さなものだというのに、なぜか異様な存在感を放つそれは、彼が子供の頃からずっと持ち続けてきた大切なものだった。

 

『……どうする? もうやめるか?』

 

 ドライグは、一誠に問答する。

 これは、今日一日の行動だけを指し示すのではない。もう、この活動を今後一切することをやめるか? という赤龍帝からの問いかけだった。言葉をかけられた一誠は目を点にするが、すぐに驚愕の表情を真顔へと変え、口を開く。

 

「……やめねぇよ。これだけはゼッテー、やめてたまるかよ……」

 

 己へと投げかけられた相棒からの疑問に、一誠は迷うことなく否定の答えを示す。

 そう。やめるわけにはいかない。

 これは、ずっと前からやってきたことだ。

 子供の時から、自分の心が叫ぶままにやってきたことだ。

 今更やめる? 冗談もほどほどにしてほしい。

 まだ自分の心は叫ぶことをやめていない。自分は、まだやれることがある。

 やりたいことが、あるんだ。

 

『クククッ、そう言うと思ったよ。これだから俺はお前が好きなんだ』

「気持ちわりぃからやめてくれ。俺はそういうことを言われるなら美少女からと決めてるんだ」

『ケッ、厳つい雄のドラゴンで悪かったな』

「おうとも。やるならボンキュッボンのおねーさんに変化してから頼む」

『前言撤回。やっぱ俺お前が嫌いだ』

 

 お互いに軽口を応酬する一誠とドライグ。だが、両者の言葉に暗い思いはかけらもない。

 堪え切れないようにくっくっと笑う二人だったが、不意にその会話は中断されることとなる。

 

 一誠がその手に握りしめるスティックが、点滅するように輝き始めたのだから。

 

『……ッ、相棒!!』

「ああ、わかってる。いくぜ、ドライグ!!」

 

 憤然として立ち上がり、一誠は街灯りで照らされた夜空の向こうを見つめる。

 人である彼には、そこに何があるのかは見えない。しかし彼はその黒く塗りつぶされた空の果てにある悪意をしっかりと感じていた。

 躊躇うことなく、彼は『エボルトラスター』を日本刀のように腰へと構え、抜刀するように抜き放つ。

 そして。彼はドライグとともにこの数年を戦ってきた、もう一人の相棒の名を叫ぶ。

 

「頼む、力を貸してくれっ…………ネクサァァァァァァァス!!」

 

 

 

 

 

 ――これは、絆を受け継いだ一人の少年の物語。

 誰よりも純粋に。誰よりも輝く光を放つその少年が、仲間とともに闇に立ち向かう物語だ――。

 

 

 

 

 ~ハイスクールD(ドラゴン)×N(ネクサス)

 

 

 

 




やはり原作は読むべきかもしれんね。
よし、今度買ってくるとしよう。
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