攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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 さて、ダンジョンも折り返しを過ぎて四階層目、次はいよいよ俺の出番だ。

 最後の階層では本格的なパーティとして、連携して戦うことになるから、スキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》はこの階層でしか発動しないだろう。

 精々、ウォームアップしとかないとな。

 

「っしゃあ!」

「うごぉあああっ!?」

 

 襲い掛かってきた首無しの鎧、通称クビ切られ騎士──初発見者にモンスターの命名権はあると言うが、ひどい名前だ──の攻撃を避け、反撃として背負い投げる。

 地面に叩き付けられてヒビが入った鎧の中心に、俺はエルボードロップをかました。まずは一匹、塵になる。

 

「次、行くぞおっ!!」

「!?」

 

 人間大の蛇の眼前に、超スピードで接近。反応しきれない敵の太い首をそのまま掴み、腕力で締め上げ、そして逆さに持ち上げて頭から地面へと叩き付けた。

 人間相手でないにしろ、変則的なブレーンバスターと言えよう。多大な衝撃に目を回している様子の蛇を、今度は向かってくるサイマン三体のところに投げつけ、俺は腰を深く落とした。

 

「ぬぅううぅん!!」

 

 正拳突き、それも五発連続だ。当然素振りでなく、生じた衝撃波が特効の光を纏い敵の群れを貫く。

 為す術もない、敵たちが次々消滅していく。

 ──もう敵はいない。完全勝利だ。

 

「この部屋はこれで終わり、と」

「お見事です公平くん! 流れるような技の連携、相当に慣れてきましたね」

「まあ、一月とはいえ色々と、経験させてもらってますしね」

 

 駆け寄ってきて褒めてくれた香苗さんに、笑って応える。

 正直、香苗さんに鈴山さん、マリーさんに比べたら手際が悪いの一言だ。瞬殺なんてできてないし、自分でも課題は多いなと実感している。

 たぶん香苗さんも分かっているだろう。それでもこうして褒めてくれることが、なんだか無性に嬉しくてありがたい。もっと頑張らなくちゃと、思う気持ちになれるのだ。

 

「……驚いた。本当にA級上位くらいはあるんじゃないのか。御堂が推す理由も、分かる気がする。惜しむらくはやはり、スキルと称号にすべてを依存しているところだけど」

「技術はまだまだ、詰めも甘い。が……ファファファ、スキルや称号の効果が圧倒的さねぇ。公平ちゃん、やはりあんたは探査者側の子じゃないよ」

 

 鈴山さんにマリーさん。正直、探査者としての評価は低そうだけど実際、そうなんだろう。俺は、探査者というよりもやはり、アドミニストレータだ。

 何となく腑に落ちるところはある。というか、たった一ヶ月でここまで強くなれた事自体が何よりもの証拠だろう。システムさん的からの、山形、お前はアドミニストレータになれ的な圧力はこれまで散々、感じてきたことだ。

 

 つまりは俺と、俺以外の探査者とでは土俵が違うんだ。彼らはダンジョンを踏破するために、俺は、邪悪なる思念を打ち倒すために。

 それぞれにできることを、するしかないんだろう。

 

『公平さんがアドミニストレータとしての自覚を抱きつつあるの、嬉しいですねー! システムさんからも称号が来てますよー!』

 

 リーベからの着信。もう君、半分メーラーじゃん。

 なんですとー!? と騒ぐ脳内を無視してステータスを見る。ステータスと口にした瞬間、香苗さんの目が光ったの怖ぁ……

 

 

 名前 山形公平 レベル143

 称号 正しき使命を抱く人

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 

 称号 正しき使命を抱く人

 解説 まさしくあなたは救う人。探る者、生きる人を支え護る人

 効果 モンスター討伐時、獲得経験値5倍

 

 《称号『正しき使命を抱く人』の世界初獲得を確認しました》

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……オペレータにはオペレータの、アドミニストレータにはアドミニストレータの本分があります。あなたはあなたにしか成せないことを、どうか成し遂げてください》

 

 

 うーむ……いよいよシステムさんからの要求が加速してきた感じがする。獲得経験値5倍って、最初にくれればもっと効率良かったんじゃないのか?

 

『一気に強力な効果を付与しちゃうと、公平さんの体とか魂に負担がかかる可能性がありましたからねー。特に爆発的なレベルアップなんて、体と心にズレが生じて大変なことになりますよ?』

 

 あー、改造したての改造人間みたいなやつか。軽く触っただけでドアノブがひしゃげるとか、普通に掴んだだけなのにコップが砕けるとか。それは嫌だな……

 効果一つ与えるにも、色々な制限があるのは分かった。まあ、なるようにしかならないってことなんだろう。

 

「公平くん、今度はどんな称号になったんですか!?」

「あー……いえ、またそのうちまとめて、勉強会でやりましょうか。今はほら、探査中ですし」

 

 瞳を煌めかせて称号の内容を問う香苗さんを、まあまあと宥めつつ。

 俺はアドミニストレータとしての自覚を深め、探査者たちとダンジョンの最奥を目指すのであった。

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