攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「はあ……ヴァールったらもう。道理で変にほろ酔い気分なはずですね、これは。あの子、たまにテンパるとこういう逃げ方するんです。可愛いですけど、こういう時は困りますよね、うふふ!」
手のかかる子ほど可愛い、というやつなんだろうか? ヴァールに対して母性全開な様子で微笑むソフィアさんの貫禄たるや、まるで聖母さながらである。
そこにシャーリヒッタが名乗りつつ詫びを入れる。頭をかいて気まずそうにしていて、自分がからかいすぎたせいで迷惑をかけてしまったって反省しているみたいだね。
「あー、オレはヴァールの姉貴分、精霊知能シャーリヒッタだ。初めましてだなソフィア・チェーホワ。いきなりだがすまん! ちぃとばかしアイツをからかいすぎちまった、悪いことしちまったぜ」
「リーベちゃんも反省ですー。面白がり過ぎちゃいましたねー……」
実際のところ、フォローを入れつつだったからやりすぎてたかどうかは俺には分からないけど。ただまあ、ヴァールが逃げたということは多少なりとも見誤ったところがあるということなんだろう。
リーベも気まずげに、ソフィアさんにごめんなさいと謝っているね。
ただ、当のソフィアさんはまったく怒ったりはしていなかった。
むしろ初対面ながらヴァールの姉というべきシャーリヒッタに対して喜色満面の笑みを浮かべ、テンションを高くしていた。
「あら──あらあらまあまあ、ヴァールのお姉様! 初めまして、ソフィア・チェーホワです! いえいえ、お気になさらないでくださいませ。山形様にご迷惑をおかけした上でこういう逃げ方をするだなんて、むしろこちらこそ申しわけありません!」
「え? あ、いえ俺は別に気にしてませんから!」
俺に対しても気を遣われるんだけど、こっちとしては本当に気にすることじゃないからなあ。
いつも大変なあの子の愚痴や不満くらい、何ができるわけでなくとも聞くくらいならしてあげたいとは思うし。ただ、ヴァール本人にとっては内心を曝け出した感じになって恥ずかしいんだろうなってのも分かるよ。
テンションが上ってついつい自分のことペラペラ話しちゃって、場の空気が凍ったりするのはお酒飲まなくてもあるからね。俺自身の過去の苦い経験だけど。
懐かし……くはないな、ふと連想気味で思い出してしまってむしろ心が急激につらい。
中学に入学したての頃、友達を作りたくて周囲のクラスメイトに無茶な絡み方をしてしまった記憶が蘇って泣きそう。
思えばあの頃から俺はボッチ気質だったんだなあ怖ぁ……
悶絶ものの回顧に身を震わしながら、すべて過去だ過去なんだと言い聞かせて俺は現実に目をそらした。シャーリヒッタが良い機会だとばかりに、ソフィアさんに話しかけている。
「あんたのことは実のところ、前々からちょいと見てたこともあるんだぜ、一方的にだがなァ。ヴァールがいつも世話になってること、感謝してるぜ」
「ええと、それってもしかしてアドミニストレータ時代にでしょうか? それはその、なんだか申しわけないです……最終的にはあんな形で終わってしまって、ええ」
「馬鹿言うなよ……申しわけないってのはオレ達システム側のほうだぜ。あんた含め歴代のアドミニストレータ達には、マジにひどい目を見させちまったわけだしな」
双方、沈痛な面持ちで気まずげに語る。ソフィアさんは自身の力が足りなかったゆえにと思われているみたいだけれど、こればかりはシャーリヒッタの言うようにそもそもがシステム側にこそ責任のある話だからね。
彼女を終点とした、歴代のアドミニストレータ達。邪悪なる思念の侵攻を食い止めるべく命を燃やし尽くしてくれた彼ら彼女らを、死地に追いやったという点に関してはこの世界のシステム側の行い、所業だ。
そこを思えばソフィアさんが申しわけなさを感じる必要なんて一切ないのだ。俺もリーベも、シャーリヒッタ同様に苦く罪悪感を噛み締める。決して忘れてはならない、俺達システム領域の罪。
しかしてソフィアさんは、それでも優しく微笑んだ。
緩やかに首を左右に振って、力強くも言葉にしてシャーリヒッタへと答えたのだ。
「そんなことない、とは先輩方のことを思えば言い切れることではありませんが……少なくとも私は後悔していませんよ、シャーリヒッタ様。自分で選んだ生き方でしたし、何よりヴァールがいつも傍にいてくれましたから、ね」
「ソフィア……」
「それに、システム領域の方々も多くが犠牲になっていたと聞きます。加えて最期には山形様……この世そのものとさえ言えるコマンドプロンプト様さえも、己の魂を犠牲にして世界を救おうとしていたのですから」
そう言って俺を見る。先月の説明会で俺が、私が言った言葉を……彼女は彼女なりの形で、受け止めているのか。
ソフィア・チェーホワの壮絶な死が、私というコマンドプロンプトに決定的な行動を決意させた。彼女含めた歴代アドミニストレータ達への敬意と憐憫、罪悪感と責任感、使命感をもって私は、すべてをやり直すべく動き出したのだ。
結果として最終的に私は俺となり、やり直しでなく背負って前に進むことを選びはしたけれど。
そうしたことの顛末さえも含めて、ソフィアさんは呑み込んだようだった。俺を見ながら、なおも語る。
「誰もが被害者で、誰もが必死でした。そして誰もが捨て身で、命懸けでした。それを私は、私達は知っています。だと言うのにそれでも私達だけが被害者だと強弁するのでは先輩方にも、私自身のアドミニストレータとしての日々にも顔向けできませんよ」
目を閉じて、透き通るような表情のままに。
ソフィアさんは──かつての最後のアドミニストレータであった彼女は、話し終えて静かに佇んでいた。
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