攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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失われた異世界神話を求めて

 騒ぎつつもなんやかやとシャーリヒッタとの初顔合わせが終わり、俺達はじゃあとりあえず風呂入って寝るかぁってことになった。

 もう22時にも近いからね、普段ならとっくにベッドに入ってグースカピーだ。実際アイなんかすでに優子ちゃんの部屋で寝ているらしく、これからあの子を抱きまくらにして寝るんだと彼女が息巻くほどだ。

 

「普段から兄ちゃんばーっかり良い思いしてるからね、今日はもうめちゃくちゃにかわいがって甘やかしたもん。へへん、アイちゃんの好感度はもう私のが上だよきっと!」

「そっかあ」

「何その態度余裕綽々でムカつく!」

「えぇ……?」

 

 涙流して悔しがって震えながら土下座でもしたほうが良いんでしょうかやだー!

 

 などと、謎な嫉妬に身を焦がす妹君によく分からない絡まれ方をしてドン引きしつつも俺は、とりあえず風呂場に向かった。

 リーベとシャーリヒッタが先に入ったほうが良いんじゃないかとも思ったんだが、その前にうちの親と細かい話を詰めたいらしくて先に入ってくれとのことだ。

 

 受肉して現世に留まる以上、いろいろ手続きが必要だもんな分かるよ。

 戸籍やらダミーの経歴やらはリーベの時同様、ヴァールがWSO統括理事としての権力をもって用意してくれてるみたいなんだけど、細々した書類関係はどうしてもこちらで受け持たなきゃいけないからね。

 

「ヴァールには頭上がんないよなぁ。あの子の権力こそが何よりものチートだ、チート」

『ふん……かつて僕に何もできずに逃げ去ったあの羽虫が、現世だと世界最高峰の権力者とはね? ソフィア・チェーホワならまだ分かるけど、いまいち釈然としないものがあるよ』

 

 洗面所で服を脱ぎつつ一人つぶやく俺に、脳内のアルマさんがぶすくれと反応した。今や世界的な権力者として大成しているヴァールに対しての、嫌味と言うか難癖である。

 

 かつては歴代アドミニストレータに寄り添い、ともに邪悪なる思念の侵攻から世界を守ってくれていたあの子はしかし、最終的には本腰を入れて迫ってきた敵に敗れた。

 邪悪なる思念の端末と、それを守る三界機構──それまでに食らってきた異世界のワールドプロセッサをそれぞれ手駒として利用した守護獣達だ──で襲いかかり、当時アドミニストレータだったソフィアさんを一気に攻め殺したのだ。

 

 その際、ヴァールはソフィアさんに庇われ逃げることに成功し、反面ソフィアさんは三界機構によって凄惨な殺され方をした。

 俺も、私も陰ながらその場面を見ていたよ。何をするわけでもなく、だがたしかに彼女がヴァールを守り、手足も顔面さえも損ないながらそれでも美しく微笑み死んだ姿を見た。

 

 そして決意したのだ──私のすべてにかけて、彼女の死へと報いよう、と。

 風呂場に入り体を洗いながら、なおもつぶやくアルマの声を聞く。

 

『ソフィアは……殺した僕が言うのもなんだが見事だったよ。ああ、素晴らしかった。完全なる自分を求める僕としてでなく、かつてワールドプロセッサだった僕として心から敬意を抱く。ソフィア・チェーホワほどに尊い戦士は、かつての世界の中にもそうは見かけられなかった』

「…………お前の物言いそのものはともかくとして、ソフィア・チェーホワについては同意しよう。彼女は偉大だ、掛け値なく。この私・コマンドプロンプトがなんとしてでも彼女に報いねばならないと決心したほどに。無論、彼女に至るまでのあらゆるアドミニストレータ達も同じく偉大だったが」

『あの死に様を君も見ていたんだものな。あんな姿を見た以上、君の立場としてはそうするしかないよね』

 

 意外な話だが、アルマはソフィア・チェーホワを極めて高く評価しているようだな。

 邪悪なる思念となる前の、ワールドプロセッサであった存在にここまで言わせるとは見事と言う他ない。無論、それだけ彼女の死に際が壮絶だったということなのだから讃えると同時に悼むべき話ではあるのだが、な。

 

 不意に抱いた憐憫やら慚愧やらを、私から俺へと意識を切り替える中で拭い去る。

 体と頭を洗い終えて湯船に浸かって力を抜けば、まるで溶けるかのような心地だ。サイコー。

 

 はあ、明日は夏休みの自由研究のために朝から図書館だ。

 久々に会う友人達とも話できるだろうし、楽しい時間を過ごしたいなあ。

 

「システム領域にも、25日までには一回顔を見せて……織田とも話をしなきゃだし……都合聞いとかないとな」

『この世界の地域的神話に由来する概念存在、興味深いね。僕や三界機構の世界においてそれぞれ栄えていた知的生命体の社会、そこでも神話とか概念存在なんてのは当然あったけど……どこも単一神話だったからこの世界の様相はなかなかに面白いよ』

「ほ、ほほう? ……異世界の神話かぁ」

 

 これも、文明の発展度の高さに影響を与えてるのかなぁ? なんて嘯くアルマの言葉に、俺ちゃんの中二的好奇心が密やかに疼いちゃったよ。

 異世界──アルマ、魔天、断獄、災海それぞれの元の世界における神話か。どうやら俺達のこの世界ほど多様性はなかったみたいだけれど、どんな感じなんだろうね。超気になる。

 

「異なる世界の概念存在か……ちょっと興味あるな、どんな感じだったんだ?」

『僕も大して詳しくは知らないよ? 興味ないし。ただ、えーっとなんだったかなぁ。たとえば魔天世界なんかだと──』

 

 率直に尋ねると、うろ覚えだけどと前置きしつつアルマがつらつら語りだす。今や失われた4つの世界、それぞれが形成していた文化文明の一欠片。

 それを聞きながらはるかなファンタジーに想いを寄せつつ、俺は風呂を堪能するのだった。




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