攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
そんなこんなで話をしながら歩いていると駅に到着して、リーベやシャーリヒッタとはそこでお分かれとなった。
俺はここから一駅分だけ移動してそこからバスに乗り、山の上は図書館前にまで行くわけだけど、精霊知能のお二人さんは予定通りに商店街へと行き、あれこれと目立つ施設を案内していくようだった。
「遊んだりするには隣町のほうがいろいろ施設がありますからねー、この近辺はそこそこ案内して、昼前には隣町のほうに行きましょっかー」
「おう、頼むぜリーべ! オレにとってもここが現世における故郷みたいなものなんだ、地元のことは把握しておきたいしなァ」
いろいろ算段を立てているリーベに、従い楽しむ気満々のシャーリヒッタ。ここにもしかしたらヴァールも参加するかもしれないわけだな。
予定がなければ俺も、参加していたかもしれないけど……自由研究はそろそろこなさないと、俺の夏休みのスケジュール的に間に合わないかもしれないからね。
それに友達と遊ぶのも楽しみだし。この子達との町散策はまたの機会に、ということで。
「それじゃあ行ってくる。夕飯までにはお互い、帰るようにしよう。怪我や事故のないように気をつけてなー」
「もちろんですー! 公平さんこそお気をつけてー!」
「いってらっしゃいだぜ、公平サン!」
お互いに声を掛け合いつつ、解散。俺は駅のエスカレーターに乗って改札口へ向かい、リーベとシャーリヒッタはそのまま商店街へと歩き出す。
ここからしばらくは一人行動だ。最近はめっきり減ったものの本来の俺は単独行動の化身である。なんなら探査者としてもソロ戦闘特化なこともあり、一人でいるのはそれはそれで落ち着くほどだよ。
『行きしなにコンビニとかでなんか買って食べなよ、味覚が寂しい。ジュースでもいいよ、今の季節だとやっぱり炭酸飲料がいいなあ、爽快感があって』
…………まあ、厳密には二人だね。脳内のアルマさんが何やら言い出したのを華麗にスルーする。さっき朝ごはん食べたろうに、まったく。
今や完全に一人って状態は事実上、なくなったんだよね俺。いつでもアルマがいる生活、いやさ人生なわけだ。なんとも食うことしか頭にない脳内同居人だけど、これはこれで賑やかでいいよね。
切符を買って改札を通る。電光掲示板を見るに電車はもうあと数分で来るみたいだな。
さっさとホームへ下りて黄色い線の内側にて待つ。この時間帯、人は疎らながら夏休み中の学生さんらしい人達の姿もチラホラ見える。もしかしたら俺と同じ東クォーツ高校の生徒さんもいたりするかもね。
なんならそうした人達も俺のほうを見ておや、と何やら話をしてるし。
あまり聞き耳を立てるのもマナー的によろしくないからスルーするんだけど、高レベルゆえに強化された聴覚はどうしても声を拾っちゃうのよね。無反応無関心、と。
「……あれ? ねえあれ、シャイニング山形くんじゃない?」
「え……あ、ホントだ! 珍しい、御堂さんいないのかな?」
「見るからにプライベートだし、さすがにそんな時までベッタリじゃないでしょ」
「っていうか格好がほぼ夏休みの虫取り少年じゃん。オモロ」
「ふーん、チラ見えしてる膝小僧が眩しいじゃん」
えぇ……? 何やらオモロがられてしまった。何故だ。つい反応しちゃったよ、怖ぁ……
別にいいだろこういうカッコでも! あと膝小僧に反応してる人はちょっぴりアヤシイから怖いのでやめて欲しいじゃん。
なんていうか、俺に気づいてまずでてくる言葉が"御堂さんいないのかな"な辺り、どれだけ普段あの人と一緒なイメージを持たれているのかが伺えるよね。
実際、世間様をお騒がせする時は大体香苗さんが隣りにいるからもはやコンビ扱いされちゃっててもおかしくはないんだろうけど、だからってプライベートまで四六時中べったりってわけでもさすがにないのだ。
もしや俺のイメージ、有り体に言うと香苗さんのバーターじみてきてはいないだろうか?
まあ新米探査者のくせにS級が常に傍にいるとそう見られてもおかしくないよねーって自分一人で納得していると、じきに電車がやってきた。各駅止まりの普通電車、ドアが開いたら何人か下車したのでその後に乗り込む。
うちの県の鉄道本線は概ね普通電車と新快速電車の2種類が走ってるんだけど、俺の今回の目的地である隣駅ってのが新快速電車は止まらないのだ。
つまり普通電車でしか辿り着けないわけだね。高校の下見に行った際、それに気づかずに新快速に乗った結果、目的地を猛烈な勢いで抜き去っていく様子を窓から眺めて怖ぁ……ってなってた間抜けなパンピー時代山形くんの記憶が蘇るよ。
『本当に間抜けだね。君ここ地元じゃないのか、なんでそんなことさえ把握してなかったんだ?』
アルマさんの辛辣なお言葉! いやまあ、言われても仕方ないところはある。
言いわけするなら当時、電車なんて全然使わなかったもんだからほぼ人生初に近い状態だったんだよ。それで右も左も分かんなくて普通電車と新快速電車の区別がつけられなかったんだね。
……本当にただの言いわけだなあ。
ぐうの音もでず、俺は小さく肩をすくめるばかりだった。
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