攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
片岡くんと遠野さんの姿が見えたのは、それから15分くらいしてからの頃合いだった。
二人横並んで、肩が触れ合うか触れ合わないかくらいの距離感で歩いてやって来る。あれ? 前より距離近くない? と思ったけど、そこは遠野さんの顔を見てすぐに察することができた。
日に焼けた健康的な顔がほのかに赤く、チラチラと片岡くんを見ているのだ。そして折を見てはこう、ちょっぴりとだけ片岡くんのほうに近寄ったりしてて。
そうして近寄り過ぎたと思ったら慌てて軽く距離を取り、また頬を染めて彼のほうをチラチラと見てるのだ。遠目からでも分かるよ、ラブがコメってるって!
「なんてもん見せつけてきやがるんだ、あいつら……」
「あらー、真知子ってば勇気出してる! 片岡くんもアレ、気づいてるでしょ」
「だね。あっちもあっちでチラチラ見てるし。たまに目が合って慌ててお互い顔逸らしてるし」
「青春かな? あいや違った、青春だね?」
梨沙さんの言うように片岡くんも相当意識しているみたいで、あからさまに挙動不審だし。
それでもいつもより歩幅や歩く速度を緩めて、遠野さんのペースに合わせているのはさすかだ。彼、そういう紳士なところあるからね。でもキョドってはいるけど。
明らかにお互いに意識しながらのご登場だ、俺達は一体何を見せつけられているんだろう。
なーんてやっかみはさておいて、見るからに初々しいアオハルを醸し出しながらも彼と彼女は、俺達の元までやってきたのだった。
「おはようみんな、待たせて悪い」
「お待たせ! いやー、暑いね今日も。えへへ……」
「時間には間に合ってるし待ってもないぞお二人さん。それよか二人一緒とは、実は待ち合わせでもしてたりしたかぁ?」
いつも通りにクール、というかほぼ仏頂面な片岡くん──これで案外ノリが良いんだ彼は──と、何やら照れたような、浮かれたような笑顔で笑う遠野さん。
うーん、なんていうかお似合いだ。隣並んだ時にしっくりくるんだよね。片岡くんが割と背が高くて、遠野さんが逆に背が低めなんだけど……だからこそ逆に片岡くんが彼女に合わせて動いてる感じがしてこう、おしどりって感じなんだよなあ。
と、内心エモさを感じていると松田くんが軽い調子でぶっこんできた。
あの距離感のお二人さんなら、マジで最初から待ち合わせててもおかしくないなーって俺もだしみんなもたぶん、思ってたところへの突っ込んだ質問だ。
これには梨沙さんも木下さんも若干焦りの表情を見せた。俺もだけど変にからかうと話が拗れそうだと思ってるんだろうところに、まさかの直球ストレートだものな。
ただ、当のお二人さんは特に動揺した反応でもなく、至ってあっけらかんとそうした問いに答えた。
「いや、実のところ駅のホームで偶然出会ってさ。話を聞くとどうやら家も近いみたいだったから、これなら待ち合わせしても良かったかもなあ、なんて話はしてたな」
「うん! えへ、実は割とご近所さんだったみたい、えへへ!」
「へー、そりゃ良いな羨ましいぜ。家が近いと暇な時にはすぐ会えるしな。俺はローカル線と本線を乗り換えしなきゃならんくらいど田舎から来てるから、そういうの憧れるわ」
当たり前に二人の話を聞きつつ話を広げていく。松田くん、トークの流れが自然でうまいな……ちょっぴり踏み込んだことを聞きつつ、自分の話も絡めて話題をスムーズに変えてみせた。
これたぶん、変に意識するのも悪いってことであえて最初にぶっこんだんだろうね。それで軽く流されればもう、若干とは言えあった気を使う雰囲気もすっかり霧消しているし。
こういうとこ、松田くんってさすがうちのグループのリーダー格というか牽引役だなって思うよ。普段は3枚目な部分が目立つんだけど、本質的に爽やかでスマートで、卒がないっていうのかな。
木下さんも、彼のこういうところが好きなんだろう。すごい優しい目をして松田くんを見ているよ。こっちはこっちで別口のラブコメの波動を感じるね。
さすがに二組ものアベックのイチャイチャを見せつけられるのも堪らない。
これで全員揃ったということもあり、俺はみんなにそれじゃあと言った。
「そろそろ始めようか、自由研究。ありがとねみんな、急な話でも来てくれて」
「気にすんなって山形、暇してたんだしさ」
「そうそう。それに涼子と片岡くんだって、まだ自由研究終わってないみたいだしね。ちょうど良いタイミングだったよ」
松田くんと梨沙さんが笑って言ってくれる。
自由研究終わってないから手伝ってくれ、なんて厚かましい話に一も二もなく協力してくれるだなんて、いい人達だ本当に。
俺と同じでまだ自由研究が終わってない木下さんと片岡くんも、笑顔を浮かべて続いて言った。
「正直助かったくらいだよ、今回の話は。資料を探そうと思ってそのうち、図書館に行こうとは思ってたしな」
「私も。むしろありがとね山形くん、音頭取ってくれて」
「それにこれが終わったら近くのショッピングモールで遊ぶんでしょ? あそこフードコートあるんだよねー、楽しみ!」
どうやら二人も図書館に行くつもりはしていたらしく、渡りに船とのことらしい。そう言ってもらえると気が楽になるよ。
ただまあ、遠野さんはこれが終わったあと、商業施設にて遊ぶこと……というか食べることを目的にしているみたいだね。
さすがはフードファイターさながらの胃袋の持ち主ってところだろうか? そういうところもなんだかありがたいや。
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