攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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昔から野郎四人組は相性良いと相場が決まっている

「デビルラット、そっちに二匹行ったぜ!」

「分かりましたっ! ぬおりゃあ!!」

 

 新田さんの言葉に反応して、俺はすかさず敵の方を向いた。デビルラット──見た目が悪魔っぽい感じゆえのネーミングだが、殺傷能力は低い──が二匹、こっちに来るのを見据える。

 新田さんが先ほど放った矢の雨霰を運良く、あるいは運悪く生き残ったモノたちだ。

 

 即座に俺は手刀を放つ。《風さえ吹かない荒野を行くよ》は発動していないがモンスター特効は発動している。普段よりかは少し抑えめの衝撃波が斬撃となって、モンスターたちを引き裂いた。

 さらにその奥、地中の中にモンスターが控えている気配を捉える。

 

「奈良さん、地面の下にホールワームが一匹います!」

「あいよ! 掛村さん、そっち逃します!」

「了解」

 

 返事と共にナイフが飛んだ。何もない地面に刺さる──と同時に大きな山が盛り上がる。モンスター、ホールワームだ。

 地表の下スレスレに潜む大きな芋虫で、普通に歩いていると突然、足元から襲いかかってくるという虫嫌いには地獄みたいな相手だ。

 

 ただ弱点も多く、地面に強い衝撃を与えたらビックリして飛び出てくるため、そこを狙い撃ちしたら難なく倒せるタイプのモンスターでもある。

 実際、今しがたの奈良さんがスキル《投擲》で投げたナイフは地面に、さらにはホールワームに刺さり、ウネウネと悶えるようにくねりながらも地面から這い出て、用意していた掛村さんの射程内にまで誘導された。

 西洋剣を構えた彼が、苦しむモンスターに追撃の突きを放つ。

 

「《剣術》、針糸通し」

 

 短くも裂帛の吐息で、切っ先が敵を貫く──鋭い剣だ、しかも疾く、正確なヒット。芋虫頭部の中心を穿ち、そこを起点に袈裟に切り下ろす。

 

「《剣術》、立体裁断」

 

 突きだけでなく斬りも、ため息が出るほどに綺麗な所作だ。美しさすら感じる剣筋を残してほぼ九割九分、両断された芋虫が消える。

 戦闘終了だ。緊張した空気が一気に緩むのを感じて、俺たち四人は集まって笑い合った。

 

「お疲れさまです! みなさん、お怪我等はありませんか?」

「そっちこそな、山形くん。見事な、見事な……わけわかんねえ攻撃だったぜ。何だありゃ、超能力?」

「手刀で出した衝撃波ですね……驚かせてしまったならすみません」

「衝撃波……まじかよ。ゲームかアニメだな、もう」

 

 新田さんが困惑するのを、俺はなんだか申し訳なく思いつつ説明した。

 素手で衝撃波を出して攻撃、なんて格闘ファンタジーの世界だ。実際目の当たりにしたら、こういう反応にもなるよね。

 

「掛村さん、マジやべーっす! 何すかあの、繊細かつ優美な剣技! 俺の師匠も剣術家っすけど、正直それ以上だったっすよ!?」

「言い過ぎだね……事務仕事ならともかく荒事となると、僕にはこれしかないからね。他の剣士さんは結構、パワーとスピードに目が行きがちだけど……僕は、丁寧に確実に、当てたいところに当てられるように努力しているつもりだよ。それだけ」

 

 淡白だが少し口角を上げ、掛村さんが奈良さんに応える。うーむ、すごい。

 たしかに今しがた見せた剣技の鋭さと細やかさと来たら、まさしく針に糸を通すかのような精密性だった。威力も速度も、どちらかと言えば低いのに、技術の一点突破で切れ味を確保している。

 午前に見た、鈴山さんに負けないくらい渋い姿だ。もちろん実力そのものは鈴山さんの方が圧倒的なんだが、そもそもの姿勢というか、スタンスが似通う感じがする。

 

「丁寧さと、確実さ。なるほど奈良さんが繊細かつ優美と言うわけですね」

「奈良くんからそんな言葉が聞けた事自体、何なら俺は驚きだけどな」

「ちょ、酷いっすよ新田さん! 俺はたしかに熱血バカっすけど、勉強はちゃんとやってる熱血バカっす! 勉強も、根性なんすから!」

 

 その濃いキャラクターゆえか自然、弄られがちになる奈良さんが見事なリアクションで応えた。和む俺たち。

 いい感じの雰囲気だ。さっきの戦闘中でもやり取り自体は上手くやれていた。事前に新田さんが言ったやり方、ハマったなあ。

 

「俺と新田さん、掛村さんと奈良さんでコンビを組む。パーティをさらに分割するような話でしたけど、上手くやれそうですね」

「山形くんはソロ専、奈良くんはレベルが低い。おまけに二人とも新人と来てる。まともにパーティなんぞやってちゃ連携は見込めんし、それぞれベテランと組んで、互いにフォローし合う方が良いだろってな。的外れじゃないみたいで良かったぜ」

 

 そう言って厳つくも優しげに笑う。そう、彼は今回のパーティにおいて、最初の時点で四人一纏まりのコンビネーションは無理だと確信していた。

 フォローすべき新人が一人だけ、俺か奈良さんだけなら良かったのだが、二人ともなると対応が難しいと見抜いたのだ。それゆえ、事前にベテランが新人を1on1で援護する形に落ち着けたのだ。

 

「山形くんに関しては、元がソロ専だしな。最悪好きなように戦ってもらってもって、思ったけどよ……せっかくパーティ組んだんだ、そんな気の悪いことはしたくなかったしな!」

「ありがとうございます、新田さん」

「良いってことよ! 俺たちゃ探査者、仲間だぜ! それに、おかげさんで素材もよく落ちるしな。まったくすげぇ奴がいたもんだわ」

 

 奈良さんにも負けず劣らず、この人も熱血さんだ。

 暑苦しくもありがたい心遣いに、俺は感謝していた。

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