攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「気持ちはわかるけど諦めろってシャイニング山形。どうあがいても全国どころか世界的に悪目立ちしてる探査者はお前なんだから、お前らの世代の総称はシャイニング世代で確定済みだ。あと言っとくけど俺は一つ前の世代だからな、デビュー時期的に言うと」
「えぇ……?」
苦笑いとともにそんなショッキングなことを、やんわり言ってくる突然現れた関口くん。そんな確定済みとか言わないでよ、まだチャンスはいくらでもあるはずでしょ!
あと世代については失礼しました。よく分かってないんだよね正直。あとで香苗さんに聞いておこーっと。
という抗議なり謝罪なりを入れたいところだけれどそれ以前の話だ、なんでここにいるの?
いやなんかアイドルイベントのゲスト? みたいなとんでもない立ち位置なのは看板を見ても分かるけど、どうして俺達に接触を?
吹き出る疑問。梨沙さん達も同様らしく、困惑しきりに彼を見ている。
関口くんは薄く微笑みながら俺の肩を叩きつつ、そんなみんなに話しかけていく。
「ま、お疲れさん……佐山さんや松田くん達もこんにちは! みんなで遊びに来てるんだね、夏を満喫してるみたいで何より」
「こ、こんにちは……ええと、関口くんもなんかすごいね。アイドルイベントのゲストって」
「いつの間に芸能界デビューを? もしかして一学期からもう?」
「いや……あはは、誤解なんだけどね、それは」
やはり芸能界デビューについて気になるようで、さっそく質問が浴びせかけられている。俺だって気になるもの、当たり前だよね。
一方、当の関口くんの反応はあまり芳しくないというか、思ってるほど自慢気じゃない。あれ? なんか意外な反応だ。
真人類優生思想からの脱却を果たし、俺とも和解した彼だけどそれはそれとして自己顕示欲というか、目立ちたがり屋さんなところがあるのは元からの基質だ。
じゃなきゃ人脈作りに勤しんだりSNSに頻繁に写真を投稿したりはしないもの。そんな彼だから、芸能人になったーなんて話はむしろ、聞いてもないのにめちゃくちゃ語りだしたとしても違和感はなさそうなものなんだけど。
ところが今、目の前の関口くんは苦笑いして頭を掻いている。
自分でも望んでいたわけじゃないのか? 訝しんでいると彼はそれを肯定するかのように説明をし始めた。
「別に芸能界デビューはしてないしする気もないよ……ちょっとした縁があって、今回のイベントだけは特別ゲストってことで参加するんだ。一応動画配信者もしてるから、その枠ってことだね」
「縁?」
「ハミングバード・サーチャーズの中の一人が、実はうちのパーティメンバーなんだ」
おっと? まさかの展開。関口くん自身は別段芸能人になったとかなるとかじゃなく、関口くんのパーティメンバーが現役のアイドルだからその縁で今回だけはゲスト参加する、と。
看板を見る。ハミングバード・サーチャーズのメンバーの名前も記載されているけど、並んでいる5人のうち誰かが彼の仲間ってことなのか。
誰ぇ?
「立ち姿だと右から二人目、海北アキラ。彼女が俺のパーティメンバーで探査者アイドルグループ、ハミングバード・サーチャーズの一員やってるんだ」
「へえぇ〜……! え、そうなんだすごーい!!」
「そ、それって関口くんがアイドルやってたその人をスカウトしたの? それとも元々パーティメンバーだったその人が、アイドルになったの?」
「アイドルを仲間にスカウトとかできるわけないだろ? 普通に炎上するぞいくらなんでも」
たぶん後者──元々仲間だったのが何かの拍子でアイドルもやるようになったんだろうなあと当たりをつけつつも念のため尋ねると、オイオイと呆れ気味にやはりそうだと頷かれる。
そりゃあね、アレだった頃の関口くんでもさすがにアイドルを口説こうなんてなかなかしないよねそりゃ。
あ、でもなんかおかし三人娘のチョコさんがこないだ言ってたな、関口くんってば自分の主催するパーティーにアイドル呼んで、一緒に写真を撮ってSNSに投稿したとかなんとか。
そろそろ燃えそうってその時は思ってたものだけど、それももしかして海北さん、ひいてはハミングバード・サーチャーズとの写真だったりするんだろうか?
質問続きで恐縮ながらと尋ねてみると、あっさり彼は頷き肯定するのだった。
「ああ、ハミングバード・サーチャーズ略してハミバとの写真だな。アキラが俺の仲間なのは元から公言してることだし、その縁でハミバもパーティーに参加してくれたってのも広く周知してるから、早々炎上なんてしないぞ」
「そ、そうなの? そうかも……?」
「そうだよ。ていうかそのへんは一応配慮して、他の参加者さん達と一緒の写真ばかりのはずなんだけど……ツーショットとかそういうのはなかったのに、チョコは一体何を見たんだ?」
「は、はは……な、なんだろうね? 目の錯覚かも?」
案外、彼自身も炎上は警戒しているようで良かった。知り合いが燃えてるなんて気まずいったらないものね。
ただ、とするとチョコさんは一体何を見てどう勘違いしたのか……妙な話だと首を傾げている関口くんに、俺は黙って生温い目を向けた。
たぶん君しか見えてないんだと思うよ。俺から言うのはあまりにも憚られるけども。
どうも恋する乙女チョコさんの暴走というか、想い昂ぶりすぎて視野が狭くなっていた可能性も出てきたなあ、これは。
ある種の青春ってやつだね。
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