攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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どうあれオーバーキルは確定なので、だったら頭数を増やしたほうが早くなるかもね、という話

 俺と関口くんがダンジョン踏破を試みる。一時間ほどで終わらせてみせるから、それに合わせてイベントを再開できるように準備を整えてほしい……と。

 ハミングバード・サーチャーズのマネージャーさんからイベントの責任者、およびこの施設の運営者さんにまで話が行き、そこからスタッフさん達の奮闘が始まった。

 

 慌ただしく、そして目まぐるしく動き出すみなさん。機材のセッティングにマネージャーさんとの打ち合わせや、アイドルの5人なんかは歌でも歌うのか軽く振り付けのリハーサルらしきものをしている。

 そして俺と関口くんはそれを横目に、ダンジョンの入口の前に二人立ってダンジョン踏破に向けての段取りを組んでいた。

 

 彼も一応、コンパクトに携行できる胸当てと肘当てだけは持ってきていたらしくそれらを装着して探査に臨む。

 武器のほうは、彼の普段遣いのものがあるからね。折りたたみ式の剣と弓と。以前にも見せてくれたやつだね。

 

「基本的には俺が先行して斥候を務めよう。お前ほどの探査者にそんなの必要ないとは思うけど、一応念のためにな」

「必要だし助かるよ。頼りにさせてほしい」

「できる限りを尽くすさ……ああ、あとダンジョンに入ってすぐ《勇者》でお前の全能力にバフをかけるからそのつもりで」

 

 自ら斥候を申し出てくれた上に、彼が持つレアスキル《勇者》によるバフまで積極的に行ってくれるという大盤振る舞いぶり。

 ありがたい話だよ、関口くんてば本当に頼りになるね。

 

 スキル《勇者》は味方へのバフスキルであり、あらゆるスキルの中でもその補正値はトップクラスを誇っている。

 なんと12時間もの間、すべての能力を30%も上昇させてくれるのだ。しかもその対象は本当に全能力であり、スキルの効果にさえ影響をもたらす。

 

 つまりは俺のスキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》とか、《誰もが安らげる世界のために》の出力も3割増しになるってことなのだ。

 もっとも今回は二人、タッグを組んでの探査だから《風さえ吹かない荒野を行くよ》は機能しないだろうけど……《誰もが安らげる世界のために》も発動させるからそっちが猛威を振るうことだろうね。

 関口くんはどこか申しわけなさそうに俺に言う。

 

「本当なら一人のほうがやりやすいのは分かってる。お前のソロスキル、有名だしな」

「そんなことは……えっ。有名なのアレ?」

「だけど、せっかくオフの日だったお前をこんなことに付き合わせてしまったんだ。せめて斥候くらいはしないとあまりに悪い……すまん。自分の気持ちばかりだけど、これくらいはさせてほしい。頼むよ」

 

 恥を偲ぶように俯き、ダンジョンを見据えながらつぶやく関口くん。

 俺のファースト・スキルであるところの《風さえ吹かない荒野を行くよ》がなんか有名らしいってところにちょっと待って? って言いたくなるけどそこはぐっと堪える。

 そもそも伝道師やら使徒やらが常日頃からあんだけ喧伝しまくってるんだ、そりゃ有名にもなるわな。怖ぁ……

 

 それよりも関口くんだ。たまたま居合わせただけの俺を巻き込んだことを、さっきからずいぶん気にしているみたいでそっちのほうが気にかかる。

 変に思い詰めないようにと、俺は彼の肩に手を置いた。

 

「付き合うって決めたのは俺だよ、そんなこと気にしなくていいんだ」

「山形……」

「それに一人のほうが力は出せるかもしれないけど、それが速やかな踏破につながるとは限らない。一人でできることなんて高が知れてると思うし、関口くんが一緒に来てくれるなら心強いよ」

 

 一人のほうが強いからってそれがなんだと言うんだ。二人のほうが単純にマンパワーが倍なんだから、あらゆる面で効率が良くなるに決まっている。

 大体、今回みたいに事実上の時間制限つきダンジョンの場合は出力に制限がかかったってその分、人数を確保できたほうがスムーズにことが運ぶのは当然の理だからね。

 

 そもそもぶっちゃけ、D級モンスター相手なんだしソロバフがあろうがなかろうが誤差というか。

 《誰もが安らげる世界のために》は発動するつもりなので、そちらで倍率を調整すれば終わりだし。全能力ではなく戦闘能力に限ったバフだけど、ことダンジョン探査においては大差ないからね。

 

 そんなことより、関口くんが手伝ってくれるってことの心強さのほうが俺にとってははるかに有益だ。

 斥候ありきの探査なんて俺からすると初めてだからどうなるか分からないけど、割と本気で彼を頼りにしているのは事実だった。

 

「だから、気にしなくて良いんだ。そんなことより速やかな踏破ができるよう、お互いにベストを尽くせるよう頑張ろう」

「……ああ! まったく、お前ってやつは本当に救世主だよ」

「そ、そう? へへへ、そりゃどうも」

 

 かつては仲違いしていた彼と、こんな風にやり取りしながら一つの目的に向かって協力できる。なんていうか、心が震えるよ。

 イベント再開のため。アイドル達のため。アイドルを待ち侘びるファンの人達のため。普段からこの施設を利用している、すべての人々のために。

 

「よし、行こうか関口くん! 時間もあまりない、巻いていこう!」

「手筈は段取りどおりにな! 斥候は任せろ!」

 

 今こそ探査者としての使命、責務を果たす!

 そんな強い想いとともに、俺と関口くんはダンジョンへと突入した。




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