攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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甘いものは別腹、甘いものじゃなくても別腹。ただし昆虫食は除きたい

 世にも恐ろしいジャイアント黒光りの群れを、見かけ以上の精神的犠牲を払いつつも退けた俺ちゃん。

 称号効果により黒光り達が落とした素材、黒光りする翅が大量に部屋に落ちているのを、まとめて俺専用の物置空間に放り込んでから取りも直さず全力で道を駆け抜け次々に部屋を突破していく。

 

 ちなみに素材の翅はこれが案外高値で売れるからそこについてはジャイアント黒光りさん達に感謝だ。

 なんでも強靱かつしなやかな繊維でできているから、加工して電子部品や機械部品の連結材などにめちゃくちゃ重宝するのだとか。

 

 本当になんでも便利に利用するよなあ人間って。感心しながらも俺はダンジョン探査を猛スピードでこなす。

 ぶっちゃけね、あの風景を忘れたい。別のモンスターとの戦いで記憶を上書きして、さっさとダンジョン踏破しておさらばしたいのだ。

 

 気配はないけどなんだか、後ろから例の虫達がやって来てそうな錯覚すら起こしてるもの。さっきからチラチラ後ろ見ちゃってるもの。怖いもの。

 そんなふうに完全にビビっちゃってる俺を見かねて、アルマはいつもより多弁に、しきりに話しかけてくれていた。

 

『でもさあ公平、アレの原生種っていうか元ネタの虫って食用に育てられてるやつもあるそうだよ? なんでも、少し臭みはあるけど全体的な食感としては──』

「うるさいよ!! もっと他に話のネタあるだろよりによってそんな話すんなバーカバーカ!!」

『エサくらいに思っとけば怖くだってなくなるだろ! そっちこそうるさいよバーカ!』

 

 こっちはそもそもアレを食用として見てないんだわバーカ!

 全力でアルマと罵り合う俺は、周りに人がいたらさぞかし危ないやつだろう。もしかしたらメンタルクリニックとかオススメされてしまうかもしれない。

 

 いやでもこれは仕方ないって、バカがふざけたこと言ってるんだもん。

 何が"少し臭みがあるけど"だ馬鹿野郎。別にソレをその、食べる人とか食文化とか、あるいは趣味として愛でたりすることやその存在までを否定する気なんてまったくないんだけども。

 とはいえこればかりは俺個人の苦手意識というのもあるんだから、正直遠慮させてくださいと大声で叫びたいんだよね。切に。

 

「山形くんビィィィィィィム!!」

「ほげー!!」

 

 ギャースカ騒ぎつつも何部屋目か、出てきたモンスターに山形くん光線を放つ。

 極限倍率ではないものの数百倍ほどの出力。しかも《救いを求める魂よ、光とともに風は来た》の特効の威力も乗算された威力は問答無用でモンスターを浄化し、宿りし異世界の魂をこの世界の輪廻へと導いていく。

 

 断末魔の叫びをあげて光の粒子と化していくモンスターを、あっという間に抜き去って駆け抜ける俺。

 もうそろそろ最奥のはずだ、踏破は目前と言えるだろう。関口くんと別れてから時間にして10分ちょい、なのでイベント再開には余裕で間に合うくらいだね。

 

「地上では急ピッチで準備が進められてるだろうし、さっさと戻らないとな!」

『アイドルイベントねえ? 心底どうでもいいんだけど、まあ探査で運動したからカロリー消費もできたろ、これが終わったらクレープでも食いに行けよ公平。さっきフードコートにあったし、お店』

「嘘だろお前、まだ食えってか……」

『甘いものは別腹だろ、それにさっきの昼ごはんにはデザートがなかったしね』

 

 怖ぁ……言ってることが遠野さんに近いよ。

 さっき結構食ったのに、なおもデザートを要求してくるアルマ。この場合、実際に収めることになるのがこいつじゃなくて俺の腹の中なのでマジで別腹だ。

 

 食うことしか頭にないのか? って聞くとないけど? って帰ってきそうだ。現状、アルマにとっての楽しみなんてそのくらいしかないからなあ。

 まあ、運動してるのはたしかだし。梨沙さん達のところに戻ってから、もしタイミングがあったら食べるのも良いかもね、それこそ三時のおやつくらいにさ。

 

「そのためにもさっさと踏破しないと……っと。最奥だ」

『変わり映えしない風景だねえ』

 

 言ってる間についに到着。こちら、ダンジョンの一番奥にてございます。

 いかなるダンジョンであってもこの最奥だけは大体同じで、よっぽど異常が起きてない限りは今目の前にある通りの光景が広がる。

 

 すなわち部屋のいたるところに淡く光るラインが走り、中央にある大きな柱に収束していて。

 その柱には手のひらサイズの宝石が埋め込まれている──ダンジョンコアだ。このダンジョンのすべてがデータ化して封入されているシステム領域謹製のマテリアルにして、ダンジョンを構築している中枢制御装置とも言える物質。

 

 それを俺は柱から取り出した。特に反発もなく余裕で抜き取れたそれを見て、俺はひとまず一息つく。

 あとはこれを持って帰るだけだな。ワームホールを開き、システム領域内にて確保した俺専用の保管空間にコアを放り込む。

 

「時刻は……13時42分。いい感じのスピードだったな」

 

 関口くんがほぼ一人で一階層をクリアしてくれたのが大体13時20分過ぎ。そこから20分かけての踏破という感じで、全体的にはかなり理想的なタイムでここまで来れたと思う。

 体力的にも全然消耗はないから、このあと地上に戻って遊ぶ分にはまるで問題がない。アルマじゃないけど、本当に食後の運動程度ではあったね。

 

「よし、じゃあ帰るか──ワームホール!」

『これで別口の要因でイベント中止とかになったら笑えるね』

「笑えないって……まあそうなったらそうなったで仕方ないけど」

 

 空間転移を使い、関口くんにした同様入口手前に空間を接続する。ここを潜ればすぐに地上だな。

 アルマが縁起でもない茶々を入れてくるけど、仮に別の原因でイベントが中止になったとしてもそれはそれ、これはこれだからな。

 

 そもそもダンジョンがある時点で施設そのものに迷惑なんだし、やはり早急に踏破されるべきなのだ。

 そしてもはや俺が地上に出れば、このダンジョンは消滅する。気持ち駆け足で、俺はワームホールを潜り抜けた。




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