攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ワームホールを抜けてすぐ、俺はダンジョンの出入口までやってきた。一応一階層の気配を探るけど、モンスターはもちろんオペレータの気配もない。完全なる無人。
これなら問題なく脱出できるね。いや、仮にコアを持って外に出たとしても中にオペレータが残っていたらダンジョンは消滅しないんだけどさ。
「さて、イベントのほうは問題なく再開できそうかな?」
『貴重な時間を割いてやって、それでなおモタついてるようならクレーム入れてやりなよ。どうでもいいアイドルのどうでもいい催しなんて心底どうでもいいってのに、まったく』
「どんだけどうでもいいんだお前、怖ぁ……」
別に梨沙さん達との交友だって、こいつにとってはどうでもいいことなはずだ。
そこから考えるにつまるところ、意図しないトラブルに巻き込まれたことそのものが気に入らなくてこんな憎まれ口を叩いているんだな、アルマは。
まぁまぁと宥めつつも地上へと脱出する。なんだかんだ時間的には1時間にも満たないんだし、長い人生の中ではほんのちょっぴり人助けをしたってだけの話だから。そんなカリカリすんなよ、と。
『君の人生は、そのちょっぴり人助けってやつが今後もひたすら累積されていくんだろうよ。なんだかんだとどうでもいい連中のトラブルに首突っ込んで、君自身にはなんの値打ちもない時間で長い人生とやらを蝕めていくのだろうさ』
「価値観の違いだから押し付ける気はないけど、俺にとっては有意義な時間だよ。たとえ何もできなくっても、寄り添えるなら寄り添うし力になれるならなりたいと思うしな──と、よいしょー」
アルマの価値観はアルマのものだ。それだってできる限りは尊重したいけど……それはそれとしてこいつはもっといろんな物事に触れて多様な価値観を見て、そして自分を見つめ直していく必要があるからね。
数多の世界を、自身の思想を理由にして滅ぼしてきた狂えるワールドプロセッサとしての、それは責務であり義務だ。かつての自分が何をしたのか、こいつは心から思い知った上で自身の在り方を再定義しなければならない。
その上で過去の己を肯定するならそれも仕方ない。それはアルマ自身の選択だからな。
ただ、俺は内心で改心することを祈るだけだ……どうあれ結局のところ、自分の意志は最後には自分で決めなきゃいけないんだから。そこに余人が口を挟む余地はないし。
ゆえに今も、俺自身の俺の人生へのスタンスを語るに留めつつダンジョンから出る。1時間ぶりの人工の明かり、そして人々のざわめき。
入る前よりずっとなんか、イベントっぽくなってる気がする。俺は穴からひょっこり顔だけ出して周囲を見た。
「おお、お客さんもう入ってるのか。ってことは順調? なのかな」
「!?」
「うお、下から人が!」
目の前には並べられているパイプ椅子に座る、大勢の一般のお客様方。すでに入場が始まってるんだな、ってことはある種、見切り発車でイベント再開を強行してるのか。
大胆というかなんというか……探査者が入っているとはいえダンジョンがある時点でもっと慎重かつ安全にことを進めるかと思ったんだが、と首を傾げつつ完全に外に出る。
急に穴から這い出た俺を見て、一般客の人達は目を丸くして驚いていた。
「探査者!? ……えっ、あれどこかで見たことが」
「シャイニング山形! ネットで噂の救世主じゃないか!」
「マジかよ初めて見た! このへんがホームグラウンドとは聞いてたけど本当だったんだ」
「救世主様、バンザァァァイ!!」
「えぇ……?」
当たり前のように俺を特定してくる、みんなネットしすぎじゃない? これが情報化社会かあ。
何かもうUMAみたいな反応と一部、信者らしい反応とを見聞きする俺ちゃん。これには堪らず顔を逸らしてステージのほうを見れば、パーテーションで仕切られた舞台裏から関口くんが出てくるのが見えた。
疲労もすっかり回復してるみたいだ、良かった!
「山形! 怪我はないか!? 踏破できたのか、ダンジョン!」
「全然大丈夫。コアも獲得したしダンジョンも消えるよ……ほら」
俺を案じつつもイベント再開の要、ダンジョン踏破達成の成否を聞いてくる。俺は笑顔でそれに答えつつ、床に開いた穴を指差した。
同時に穴がフッ……と、霞か霧かになるように消えていく。いつものやつで、コアを失ったダンジョンが消滅したんだね。
つまりは踏破達成だ。
関口くんの次にやってきたハミングバード・サーチャーズのマネージャーさんやイベントの運営担当の人もそれを確認し、ニッコリと笑顔を浮かべる。
「素晴らしい……! まさかD級ダンジョンを1時間にも満たず踏破しきるなんて噂以上です、山形さん!」
「関口くんのおかげですよ。全体の3分の1も彼が受け持ってくれましたから」
「それを言うなら残りの3分の2を、俺がこなした時間とトントンくらいで踏破したのはやっぱり山形だろ。すごいな……さすがだよ」
互いにねぎらいあう。探査した俺や関口くんも、信じてイベント再開のために準備を急いでくださったスタッフの方々も、それぞれが最善を尽くした結果が今、この時だ。
最小限の遅延のみでの、イベント開始。ハミングバード・サーチャーズやゲストの関口くん達の本来の仕事が、ここから始まるんだね。
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