攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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取り戻した日常。それと窯焼きシュークリームは見逃さないアルマ

「本当に、なんとお礼を申し上げたらいいやら……! ありがとうございます山形さん、おかげ様でイベントは無事、1時間程度の遅れながら再開ができます!」

「助かりました……ハミングバード・サーチャーズはまだまだこれからのアイドルですから、地方巡業一つ取っても大変価値のある興行なのです。そんな重要なイベントが台無しにならなかったのは、ひとえにあなたのおかげです山形さん!」

 

 ダンジョン探査を終え、イベント再開に向けて万事オーライって状況になったショッピングモールは催事場、特設ブース内。

 マネージャーさんと運営責任の方、あと関口くんに連れられて一旦ブースから出た俺は、改めて御礼の言葉を受け取っていた。

 

 このイベントを準備した時間やそれに伴うお金とか。あるいはアイドル達の努力とか、これからの発展に向けてのチャンスの一つだとか。

 そういうのが危うく水の泡になりかねなかったんだね。ゆえにだろう、それをギリギリのところで防いだ俺に対して、単なる使命を果たした探査者という以上の恩義を抱いてくださっているみたいだった。

 照れる思いで鼻の頭を掻きながら、応える。

 

「いえいえ、ダンジョン踏破は探査者の使命ですから。どうかお気になさらず……それに、今回の真の功労者は関口くんですよ」

「俺?」

「偶然僕と知り合いで、偶然出くわして声をかけた。その結果ここに至れたのなら、僕を連れてきた彼こそが一番の功労者ですよ」

 

 言っちゃうと催事場ど真ん中に急にダンジョンができたところからすでにひどい偶然だったわけだけど、そこから先のたまたまっぷりもかなりすごい。

 たまたま関口くんがゲストで、たまたま俺が友人達と遊びに来ていて。たまたまそれを見かけた彼が声をかけてきた、と。偶然の四重奏って感じだね。

 

 そんな中で俺を見つけ、声をかけることを厭わなかった関口くんこそが事態の打開に大きな貢献を果たしたんだと言える。

 だから彼が一番の功労者だよと言うと、当の本人は苦笑いして首を横に振るのだった。

 

「バカ言うな山形、たしかにお前を見かけて連れてこれたのは自分でも良くやったと思うけど……ダンジョンを踏破しきったのは結局お前だ。そしてそれがイベント再開に繋がったんだから、やっぱりお前がいなきゃ埒が明かなかったんだよ」

「関口くん……」

「助かった、ありがとうな山形。やっぱりお前、すごいやつだよ」

 

 手を差し出してくる関口くん。握手を求めているのだと察して、俺もそれに応える。

 今回はいろいろ、特殊な状況での探査だった。時間制限はあったし中盤からは完全に一人だったし、何より急な話だったし。

 それでも上手いこと間に合わせられたのは、彼の力もあってこそだと俺は信じるよ。

 

 固く手と手を握り合う。ともに一つのダンジョンを攻略した戦友同士の、友情を厚く感じる。

 出会ってしばらくはずいぶんと仲が拗れていた──っていうか彼が一方的に敵視してきていた──関係だったけど。ここにいたり、ついに俺達は友人と言って差し支えない間柄にまでなれた気がする。

 そんな握手だった。

 

「つまりは、山形さんと関口さんのお二人がいてこその今、というわけですね……お二人とも、重ね重ねありがとうございました」

「私どもの事務所からもこの御礼は後日、全探組を通じてお二方にさせていただきます」

「ダンジョン探査についての報告は俺のほうからしておくよ。後のことは任せて、お前は佐山さんや松田くんのところに戻るといい」

「ほんとに? 助かるよ、ありがとう!」

 

 運営担当さんとマネージャーさんからもそのようなお言葉を頂戴して。関口くんに至っては事後処理まで受け持ってくれる形となりダンジョン探査はこれで終わった。

 こうなれば俺のほうはさっさと梨沙さんたちの元に戻り、また楽しい一時を全力で過ごすだけだね。

 

「それじゃあ俺は戻ります。皆さんお疲れ様でした、関口くんもイベント頑張ってね」

「ありがとうございました!」

「この御恩は忘れません!」

「今日は助かった! たぶん次会うのは二学期になるかな、その時はよろしくな」

「こっちこそ! よろしくねー」

 

 手を振りながら俺はその場を立ち去る。3人にとってはむしろここからが本番で、関口くんに至ってはゲストとしてイベントに出演するってんだから大したもんだよ。

 催事場から出て、一旦近くの男性用トイレへ。神魔終焉結界を解除するの素で忘れてたから、個室で私服に戻るのだ。

 

 

『さっきシュークリーム並べてる店を見かけたけど、アレがさっき大食い女が言ってたやつだねたぶん。結構美味しそうだったから絶対買って帰れよ、窯焼きってやつには興味があるんだ』

 

 

 ことが終わって日常に戻るや否や、さっそく飯の話をしだすアルマさん。こいつにとって遠野さんの認識、大食い女なんだな……

 ともあれ、たしかにさきほどトイレに向かう際、件のシュークリーム屋さんらしきお店は見かけたな。たぶんひとしきり遊び終えたあたりでまた、こちらのほうに寄るんだろう。

 

 その時にはイベントも終わってるかもなー、などと思いながら個室に入り、おもむろに結界を解除する俺ちゃんなのでした。




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