攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

107 / 2047
おや?せきぐちのようすが……

 ダンジョンから出て、俺たちは組合本部に戻った。帰りも電車に揺られてのものなので、到着した時にはすっかり夕暮れだ。

 ツアー主催に報告とコアを引き渡して──今回、コアはツアー主催の獲得物として扱われる。参加費タダな分、それくらいは寄越せということだった──各自解散して自室に戻る。

 

「最近の若いのはすげぇんだなぁって、勉強になったぜ。ありがとな掛村くん、奈良くん、山形くん」

「お疲れ様でした。安定して動ける、良いパーティだったと思います」

「皆さん、お疲れッス! 正義のパーティの燃え上がる絆パワー、この胸にビンビン痺れて伝わったっす!」

「ありがとうございました、皆さん。またどこかでお会いした時には、よろしくおねがいしますね」

 

 新田さん、掛村さん、奈良さんに礼と別れを告げる。

 なんていうか、良い人たちだったな……俺の異様なレベルや称号効果、スキルや探査者歴にあまり触れないでいてくれて、気さくに話してくれて、連携もスムーズに取れるやり方を教えてくれた。

 

 豪放磊落で世話好きの新田さん。冷静沈着で視野の広い掛村さん、熱血漢でムードメーカーの奈良さん。

 ありがとうございました。また、どこかでお会いしましょう。

 

 自室に戻り、まずは風呂に入る。ここのホテルは露天風呂があり、これがまた広くて外の景色も良い眺めなんだよね。

 種類も色々あって、滝湯とか壺湯とか、サウナとか、何ならマッサージサービスもある。テーマパークだよぉ〜。

 てなわけでウキウキしつつ、俺は着替えを持って露天風呂の男子更衣室の暖簾をくぐった。仕事の汗を温泉で流すなんて、贅沢だぜ。

 

「! 山路」

「山形ですけどって、あ、関口くん……」

 

 先客がいた。しかも関口くんだ。彼も探査を終えてひとまずここに来たんだろう。

 しかしなんだか様子がおかしい。ひどく憔悴……している? なにがあったんだろう。まあ、そこまで仲良くないし何なら嫌われてる俺に、答えるわけもないから聞くことも憚られるが。

 

 さっさと服を脱ぎ、タオルだけ持って浴場に向かおうとする。そんな俺に、同じく素っ裸の関口くんがどこか、気分悪そうにおずおずと話しかけてきた。

 ていうか絵面酷すぎるだろ、男二人が裸で更衣室で話し込むとかヤバぁ……

 

「山野……お前、お前は……」

「山形ですけど。あの、体洗って風呂入ってからにしない? 寒いし、話が何であれ、互いに全裸で話すことじゃないでしょ」

「え、あ、ああ……そうだな、悪い……」

 

 え、何素直。怖ぁ。

 いつになく友好的、というか人の話を聞くモードの関口くんに、思わず鳥肌が立ちそうになる。どうしたのマジで。

 こりゃ、ただごとじゃないぞと俺は急ぎ体を洗い、身を清めてから湯船に浸かる。肩までしっかり入って体が温まる。気持ちいいー!

 ポカポカがじんわり、身体に染みていく感覚を楽しんでいるとじきに、関口くんも体を洗い終えてやってきた。やっぱり様子が変だ、元気がない。

 

 少し離れて互いに視線を合わせず、ぎこちなさを隠さずに時だけが流れる。

 やがて、関口くんは呟いた。

 

「……お前は、どうしてそんなに強くなったんだ」

「え、いや……スキルと称号のおかげ?」

「そうか……そうだよな。それだけで、そんなに強くなれる。インチキだな、お前は」

「自覚はあるよ。でもまあ、もらったものなら使わないのも変だし」

「……そうか」

 

 おいおい。会話が成立してるよ。

 こんなやり取り、少なくとも最後に会った昨日の昼時点ではまずできなかったはずだ。そのくらい、彼は俺を敵視していた。

 それがなんだ、どうした? 誰かもしかして、関口くんに成り代わってる? そう思ってしまうくらいの豹変ぶりだ。

 

 どこか苦しげに、関口くんは続けた。

 

「山野辺……もし、もしも。俺が……」

「山形ですけど。ど、どうしたの? 俺が、何?」

「……いや。何でもない、忘れてくれ」

 

 あからさまに言い淀み、関口くんは立ち上がった。そのまま湯船を出て、風呂場を出る。

 いや……何? え、まじで何?

 困惑以外の何もない。何やら思い悩んでたような気はするけど、完全に自己完結して行っちゃったよ……

 

『思春期なんでしょうかね? 公平さんよりは少なくとも、ご立派じゃなかったですけど。あっ! リーベちゃんたら失言失言、みんなのかわいいかわいいリーベちゃんがそんな、はしたないキャ~もー!』

 

 黙れリーベ! シモネタやめろ!

 ていうか平気で覗いてんじゃあない、帰れ、帰れ!

 

『はいはーい。でも、たしかに変でしたねえ彼。何かを抑え込んでるような、耐えて、我慢しているような感じでしたねバーハハーイ』

 

 ああ、それは俺も思った。何か、抱え込んじゃったのかな?

 心配はするけど、俺の立場からじゃどうともなあ……気にはしとくか、くらいしかない。

 ていうかバーハハーイって、だからいくつだ貴様!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。