攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
せっかくのみんなでスイーツということで、母ちゃんが人数分のコーヒーと紅茶を淹れてくれた。俺と父ちゃん、ヴァールはコーヒーだが他の面々は紅茶を選ぶ。
甘味に合う飲物も用意できたし、さあいよいよ実食だ。
「いただきます! ……んー、美味しい!」
『おお、おお……! なんてサクサクなんだ、保冷剤によって冷えていてもなお香ばしく歯ごたえがある。食感からして楽しませてくれる上にこの甘さ! 濃すぎず薄すぎずの塩梅で、けれどバニラクリームこそが主役だとしっかり主張してくるのはとても素敵だ。何よりも皮とクリームが口内で咀嚼する毎に絡み合い相乗的に甘味と香ばしさを増していくのはまさしく運命の出会い! マリアージュとはまさにこのことだねえ!!』
一口食べればすっかりゴキゲンな、脳内アルマさんが延々と語り始める。
相変わらずやかましい勢いと音量だけど、こと味の感想に限って言えば今回ばかりは一言一句同意せざるを得ない美味しさだ。
窯焼きシュークリームと銘打つだけはあり、持ち帰ったシュークリームは素晴らしい味と食感を誇っている。
上品かつ適度な甘さであることは当然として、サクサクとした皮の歯ごたえも嬉しい。バニラクリームと一緒に食べた時の口内で広がる甘味と香ばしさを、噛む楽しさと同時に味わえるのは幸せなことだ。
「んふー! 美味しいです、めちゃ美味しいー!」
「うむ……これは素晴らしいな。この手の甘味自体久々に口にするが、とりわけこれほど美味しいものはなかなかお目にかかった記憶がない。ソフィアにも後でこの店を紹介したいほどだ」
「現世のスイーツ、これが最新バージョンってやつか! 甘くて香ばしくてサクサクで、しかも喉越しもいいですね、父様!」
「そうだな。予想以上に美味しいわコレ」
そんな素敵なシュークリームを食べた、精霊知能三姉妹達からの評判がすこぶるよろしい。よっぽど気に入ったんだろう、3人とも夢中って感じでかぶりついている。
個人的な感覚で、リーベはともかくヴァールはお偉いさんなこともあるからいろいろ美味しいものとか食べてきてるんじゃないかって思っていたけど……実のところあんまり頓着してなさそうだな。
というかたぶん、可能な限りソフィアさんに食事の機会を譲ってるんだな。何をおいても彼女を優先するヴァールなら、自分よりソフィアさんが少しでも幸せになれるよう動くだろうし。
そう考えるとなんか、ヴァールもたまには思う存分にいろいろ、楽しんでも良いって思えるよね。
「酒には合わんが美味い! ……ブラックコーヒーには合うなあ」
「たしかに美味しいわね、コレ。東クォーツ高校の近くでこんなの売ってるんだ……」
「紅茶にも合うよ! あー、幸せー」
父ちゃん母ちゃんに優子ちゃんも、みんな幸せそうにシュークリームを頬張っていて何よりだ。
実際めちゃくちゃ美味い。これまでに食べてきたシュークリームの中でも割と過去一美味いまであるんだし、この高評価も頷けるってなもんだよ。
買ってきてよかった。みんなの笑顔と何より俺自身の満足度の高さから心底そう思う。
店を見つけて土産にすることを提案してくれた遠野さんには感謝だな。さすが俺の知る三大美食家の一人、美味しいものセンサーに外れがないぜ。
ちなみに残り二人はエリスさんとアルマね。
「……ところでリーベ、シャーリヒッタ。今日の散策はどうだったんだ? ヴァールも付き合ってくれたみたいだけど」
「予定通りあちこち巡れましたよー! 商店街ー、隣町のアーケード街ー、大型商業施設なんかも行きましたし!」
「映画館も見に行ったんですけど、気になる映画の上映はまだみたいなんで諦めました! でも駅前に漫画喫茶ってのもあったからそこにも寄ったぜ、父様! 漫画って面白いですね!」
「急に呼ばれて漫画喫茶で落ち合ったから、ワタシ自身はそこまであちこち巡ってはいないが……ゆったりとした時間を落ち着いた場所で、コミックなどを読みながら過ごすのもたまには悪くなかったな」
なるほど、本当にあちこち行って、最終的には涼しいところで漫画を読みながらダラッと過ごしたんだな、三人とも。それはそれで素晴らしい夏の一日の過ごし方だ、聞いていてホッコリするよ。
隣で優子ちゃんが小さく"良いなー"と溢している。まあ今回は受肉したばかりのシャーリヒッタを案内するリーベ、あとせっかくだしと呼ばれたヴァールってことで精霊知能水入らずだからな。
今後、優子ちゃんも込みで遊びに行く機会はいくらでもあるだろう。何しろリーベもシャーリヒッタも山形家の一員だからね。
と、不意にヴァールが俺を見てきた。どこか緊張したような、不安そうな面持ちだ。
なんじゃらほい? と首を傾げていると、彼女はやがておずおずと切り出した。
「それでだ、その……山形公平。昨日は申しわけないことをした。ご迷惑をおかけして、すみませんでした」
「……へ? ご迷惑?」
「あの……その、酒の席で狼藉を働いてしまったことだ。あまつさえソフィアに後を任せて逃げるなど、してはいけないことをした。あの場にいた面々にはすでに謝罪したが、あなたにはまだだったので、この場で謝罪をな」
「えぇ……? 律儀すぎるよ。良いってそんなの、俺は全然迷惑してないし、気にするなよ」
まさかのガチ謝罪。たしかに昨日の宴会、最後らへんはヴァールってば酔いが回ったか中々可愛かったけど……誰も気にしてないんだから、そこまで深刻に受け止めなくていいのに。
まあ、見るからに平常とは違ったから、後になって振り返って自己嫌悪や羞恥心でうわーっ! ってなるのは分からなくもないんだけど。
酒とか関係なしにあるよね、あの頃の黒歴史を思い返してうわーっ! ってなるの。
なんとなく思い当たることがいくつがある俺ちゃんも、釣られて昔の忘れたい過去を思い返してしまいそうなったよ。うわーっ!
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