攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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気付けば息子があの世のお偉いさんになっていた件について

 システム領域への里帰りについて急遽、明日行うことに決まったのを受けて一応、家族にもその旨を伝えておくことにする。

 家族6人とアイ、アーンドせっかくだからとうちの両親に引き止められたヴァールとで食卓を囲み、夕飯を食べる中で俺はみんなに説明していた。

 

「かくかくしかじかまるまるうまうま、ということで明日俺は魂の故郷へ帰還するのでそのつもりでー」

「きゅー?」

「あんたも忙しいわねー、毎日あっちこっち行って」

「今日だって勉強行ったついでに友達と遊びに……ってつもりが、なんでかダンジョン探査したんだよね? なんで?」

「俺に言われても。成り行きかなあ」

 

 妹ちゃんの純真無垢な質問。母ちゃんも言うけどたしかに毎日なんやかやとイベントが発生しまくってるよね、この夏休み。

 倶楽部案件を差し引いても誰かにお呼ばれしたり誰かをお呼びしたりして、各地をうろちょろしている日が相当多い。

 

 おいこの山形どこのリア充だよ、去年までの虚無休みだった中坊山形くんはどこに消えた? って自分でも思っちゃうね。

 ただまあ、本日の探査については本当に偶然そこに居合わせただけだったので成り行きとしか言いようがない。

 

「まさか友達と遊びに行った先でタイミングよくダンジョンが発生して、しかもちょうど催し物がそのせいで中止の危機になっていて、なんならそこにゲストとして登場する予定だったクラスメイトがたまたま俺を見つけたから人助けで探査した……なんて、もう何から何まで偶然だよ。俺もビックリだ」

「ホント、すごい話ですねー。SNSとかかなり盛り上がってトレンドにまで乗ってましたよー、"ハミングバード・サーチャーズ"とかー、"シャイニング山形"とかー、あと"関口久志"とかもー」

「怖ぁ……アイドルグループと一緒に並ぶのおかしいだろ、俺と関口くんの名前が……」

 

 なんならシャイニング山形とか一番場違いまである。ハミバは元より関口くんだって、元々ゲストで登場していたほどの有名配信者だからね。

 アイドルグループとアイドルに挟まれたパンピー山形くんが流れ弾すぎる。頼むから早々にトレンド変わってくれと切に願っていると、シャーリヒッタが満面の笑みを浮かべていた。

 

「さっすが父様だぜ、いついかなる時でも救いを求める声に応える! 御堂香苗の言う救世主って称号がピッタリな振る舞いをしてらっしゃるぜ!」

「ふむ……休暇中のところに気の毒な話でもあるが、さりとて誇らしいのも事実だ。WSO統括理事としても、一探査者としての努めを果たしてくれた山形公平や関口久志には感謝したいところだな」

「ど、どうも……関口くんにも伝えとくよ、話を聞いたソフィア・チェーホワ統括理事が褒めてくださったって。きっと彼も喜ぶ」

「ああ、そうしてくれ」

 

 ヴァールも微笑み、俺と関口くんを讃えつつ夕食を口にする。

 今日のお夕飯は和風で、味噌汁と焼き魚とほうれん草の煮浸し、芋の煮付けだ。最近ちょっと洋風チックなごちそうが続いたから、こうした和食のラインナップは見ているだけで心が落ち着く。

 

 味噌汁を啜り、ほうれん草を頬張り、焼き魚の身をほぐしていただく。それぞれ白米によく合うんだなこれが。芋の煮付けももちろん美味しい。

 脳内のアルマさんも、よく味わっているのかどこか、しんみりした声色でつぶやいているよ。

 

 

『うーむ、この味、風味……米も合わせてどこか土の香りがしてきそうな食事だ、いいねえ。思うに日本食の素朴な味わいというものがここには凝縮されているように思うよ。特に芋の煮付けが素晴らしい、醤油が程よく染みていて、なぜかホッとする。僕は日本人どころかこの世界の存在ですらないわけだけど、公平の味覚を共有しているからだろうかね? なんだかこう、日本の原風景を想起させてくれるよ』

 

 

 語るねー、実に語る。めちゃめちゃ語ってるよ、しかも日本人的な感想まで若干含まれている。

 こいつが感じている味覚は俺のを基準にしているから、まあ普通に考えて日本人的な感覚なのは当然だ。その影響だろう、俺が抱いたどことないノスタルジアを、こいつまで共有しているのかもしれなかった。

 

「しかし話を戻すけど、大丈夫なのか公平? そのシステム領域とかに帰って。よく分からんが、あの世とかソッチ系なんだろう?」

「あの世……まあニュアンス的にはそうなるのかな? でも余裕で行き来できるし大丈夫だよ。危険性も特にないし」

 

 父ちゃんがビール缶を片手に尋ねてくる。

 あの世と言われるとちょっぴりドキッとするけど、この世すなわち現世からすれば概念領域だろうがシステム領域だろうが十把一絡げに"あの世"ってな認識になるのも当然だろう。

 

 心配するのも無理はないんだけど、そこはね。正直ぜんぜん不安要素はなかったりする。人間の身体なのが気にかかったけど許可証ももらったし、そうなると特に問題らしい問題もないのだ。

 リーベも補足して説明してくれる。

 

「公平さんに危害を加える存在なんて、システム領域のどこをどうひっくり返してもいませんからねー。そこに限って言うなら、ある意味この世のどんなところよりも安心安全な場所かもしれませんねー」

「いたらオレが承知しねーぜ! 父様への感情はいろいろ複雑なもんを持ってるやつもいるけど、根底にあるのはやっぱり畏敬と敬愛なんだから、敵対行動なんてとるやつもいないし大丈夫さ!」

「そ、そっか……公平、そういやお前向こうじゃお偉いさんなんだもんなあ」

 

 主にシャーリヒッタも力説しだして、面食らった父ちゃんが俺をまじまじと見る。

 うん……フォローはありがたいけど程々にしてほしいかなあ。苦笑いを浮かべながらも、俺はごまかしにお茶を一口呑んだ。




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