攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
晩ごはんも食べ終えた、あとはお風呂に入って寝るだけだ。
俺はアイを連れて自室に戻り、パジャマやら下着やらを手に取り風呂場へと向かっていた。
今日はめでたく一番風呂だ。日によってその場のノリで風呂に入る順番は変わるんだけど、概ね俺か優子ちゃんが最初なのが多いんだよね。
ただ優子ちゃんが入るとなるとたまにリーベが一緒に入ったりしているね。シャーリヒッタもそのうち、優子ちゃんなりリーベなりと一緒に風呂に入ったりするんだろうか。
なんだか華やかだなあ。
「今日は新しい入浴剤があるからな、アイ。ゆず系のやつだぞ、いい匂いするぞー」
「きゅう〜」
俺の肩に乗っかって頬ずりしてくるミニチュア・ドラゴンと仲良く語り合う。
人懐っこいアイだけど、どうやらここまで自発的に甘えてくるのは今のところ俺相手の時だけらしい。
さっき血涙をも流す勢いで優子ちゃんがそんなこと言ってた。怖ぁ……嫉妬心しかないじゃん。
あの子にもずいぶん懐いてると思うんだけどそこはそれ、やはり事実上の親扱いな俺に対してはアイの懐き具合も桁違いってことなんだろう。
「じゃあお風呂もらいまーす」
「きゅ〜」
「はいいってらっしゃい」
「! いってらっしゃいませ、父様!」
リビングに顔だけ出して、そこにいる面々に風呂に入るってことを伝えておく。すぐさま母ちゃんとシャーリヒッタが反応してくれた。
先にこうしとかないと、間違えて入浴中に脱衣所に踏み入っちゃう事案が発生しかねないからね。
優子ちゃんやリーベやシャーリヒッタと年頃の女の子が住まう今時分にあっては必要不可欠なデリカシーだ。
彼女らは別に気にしないよと言ってるんだけど、こっちが気にするから。何かあってからじゃ遅いから。
特に今日はお客様もいるんだし。
俺はソファにてリーベ、シャーリヒッタとともに何やら映画を見ている彼女──ヴァールに目を向けた。
「いやー、現世の娯楽ってすごいですよねー! 恐怖を煽られる感覚さえエンタメとして消費するんですからー!」
「たしかに怖えなァ……ホラー映画ってのか。これ、一大ジャンルなんだろォ?」
「うーむ、演出というものの力だなこれは……ソフィアが見ていたら顔を蒼くしていそうだ。あの子は案外、この手のモノが苦手だからな」
「マジかよ、厳密に言ったらソフィアもホラーチックな存在だろうに、定義的にはよう」
「まあ、ヴァールの肉体に取り憑いている精神体ですからねー」
夏だから! ということでわざわざリビングでホラー映画を鑑賞しているお三方。
とはいえ精霊知能だし、ガチで怖がると言うよりはどこかこう俯瞰的な、観察的な視点で妙に薄暗い映像をじっくり見ている。
そう、結局ヴァールは本日、山形家にお泊りする流れとなった。
明日揃ってシステム領域に一時的に帰還するってんで、ヴァールだけ帰すのも効率が悪いというのでリーベとシャーリヒッタによる説得の末の滞在だ。
うちの家族もWSO統括理事さんが泊まるなんて! とあわわはわわ言いながらめちゃめちゃはしゃいでもちろん即OKだった。相変わらずのミーハーである。
とはいえ、その父ちゃんと優子ちゃんは今や自室だ。ホラー系が苦手なもんで、早々に自室に退散したんだね。
そういうのが案外得意な母ちゃんは遠巻きに画面をチラチラ見ながらスマホで漫画を読んでいる。察するに漫画のほうが楽しくて読んでるけど、それはそれとして映画の様子も気になるみたいな感じだろうか。
「でもよォ、たとえばこういう悪霊? 怨念? みてーのに出くわしたらどうするよ姉貴、妹」
「え……そりゃあ、まあ概念領域に送るでしょー。普通に現世にいちゃいけない、魂なき精神体だけの存在ですからー」
「いわゆる残留思念だな。少なくともこの映画の、人間達が陥っている恐慌状態にはさすがに陥ることはないだろう。というか、"通常あるはずのないモノ"という意味で言うならば我々こそがこの立ち位置とも言えるのだが……あとワタシは妹ではない。強いて言うなら姉だ」
「概念存在達から見たオレらや父様こそが得体の知れねえモノだろうしなァ。つって悪霊だ怨念だってのには当たらねえけどよ」
ホラー映画の悪霊を淡々とレビューしてるんだけど、この子達怖ぁ……本来想定している楽しみ方とはちょっと毛色が違うよねそれ。
まあ実際、ホラー映画の幽霊みたいなのはこの世にもいるし、そういうのを相手取るご職業に就かれている方々もいるんだけど。俺やこの子達がそういうのに出くわしたとしても、できることなんて"あっ、じゃあ概念領域までお送りしますね"としかならない。
そういう存在ってほぼ確定で魂だけすでに輪廻に乗っていて、強い想いだけが形を成して遺っているいわゆる残留思念ってやつだしね。
大体の場合、概念領域で浄化処置を受けるものが現世に留まってるだけって話なので、向こうに送ってしまえばあとはあっちがなんとかしてくれるわけだ。
「ホラー映画を見てたらこの世界の真実みたいな情報を小耳に挟む……この家ならではねー」
「は、ははは……」
「きゅ?」
ボソリと遠い目をしてつぶやく母ちゃん。いやはやまさか、普段楽しんでいるホラージャンルの現実世界での実際を聞くことになるとは思ってもいなかったんだろう。
なんとも反応のし辛い話なので俺は立ち去ることにした。さっさとお風呂に入らなきゃだしね。
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