攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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宿題も終わった、さあ150年ぶりに故郷に還ろう

 湯船に浸かってふう、と息を吐く。桶の中、お湯に浸かるアイも同様にきゅう、と吐息を漏らしてお互い、リラックスして俺達は風呂を堪能していた。

 身体を洗い終えて肩まで浸かるこの瞬間、一日の疲れが染み出すように取れていく感覚がひどく心地良い。やっぱりお風呂は良いねえ、最高だよ。

 

「今日もいろいろあったけど、概ね楽しかったし良かったなあ」

「きゅきゅう」

 

 しみじみ呟けばお疲れ様でしたー、とでも言うようにアイが鳴き、前足を軽く上げてねぎらう仕草を見せてくれる。

 毎度ながらこの子も風呂となるとリラックスモードだ、目を閉じて口をムニュムニュさせながら深呼吸を何度も繰り返している。なんていうんだろう、微睡む感じ?

 

 何回か風呂に入りながら寝ちゃってたこともあるみたいなので、この子にとって風呂ってのはよっぽどの極楽なんだろう。

 頭を優しく、親指で愛でるように撫でながらも、俺も滲み出た疲れが眠気に変わるのを自覚して一つ、大きなあくびを噛ましていた。

 

「肉体的な疲れというか、精神的な気疲れかもなー……なんやかや自由研究も終わらせたし、達成感とか安堵もあるのかも」

 

 独り言ちる。そう、俺はめでたく自由研究を完成させていた。

 夕食前、精霊知能三姉妹達との話し合いが終わった後、サクサクっと今日調べ上げた情報をまとめて仕上げたのである。

 

 いやー写すだけなのでマジでちゃっちゃと終わった。

 構成やらデザインやらまで午前の段階で完成させていたからね。チョチョイのちょいってなもんだとも。

 

 というわけでこれにて夏休みの宿題を俺はすべて、やり遂げたことになる。

 うーん、なんだかんだと大変だった……特に自由研究だけは、8月入ってすぐあたりから"そう言えばやってないな"と自覚しつつも、倶楽部案件やらなんやらあって後回しにしちゃってここまで引き伸ばしてしまっていたからね。

 ようやっと肩の荷が下りてホッと一安心な心地だよ。そりゃー眠くもなる。

 

「これで学生生活のほうは万事抜かりなし。問題なく二学期を迎えられるな……」

「きゅう?」

『学校とかはどうでもいいけど、たしかにもうじき秋になるね。食欲の秋とも言うほどだ、さぞかし腹が減るだろうし美味しいものも出回る季節になるだろう。分かってるだろうな? 食えよ美味いもの』

「はいはい」

 

 脳内のアルマさんが毎度の催促。こいつ本当に美味いものにしか興味が向いてないのな……まあ分かりやすくてこちらとしては助かるけども。

 それに、食欲の秋ってところには俺も同意だ。秋の味覚への期待感は正直なところ、アルマの有無を問わず俺自身も持ち合わせるところだからね。

 

 栗、秋刀魚、さつまいも、かぼちゃ、柿などなど。

 季節柄の食材ももちろんのこと、厳しい夏を乗り越えてホッとした身体がエネルギーを求めるがごとく食欲旺盛になるのもあり、とにかくなんか食べたいってモードに入るのは俺に限らず多くの人がそうだろう。

 家だって毎年、母ちゃんと妹ちゃんにとっては嬉しくも悩ましい季節みたいだし。主に体重計とスイーツとの狭間に揺られる的な意味で。

 

「アイも、生まれて初めての秋だな」

「きゅ」

「それにリーベ、シャーリヒッタも……行楽の秋とも言うほどなんだ、せっかくだしみんなであちこち観光にもでかけたいところだなあ」

「きゅう!」

 

 今年の山形家はとにかく異色で、新メンバーが二人と一匹加入しているんだ。これまでになくにぎやかで楽しく、新鮮な日々が待ち受けていることだろう。

 いろんなところを、見て回るのもきっと楽しい。ピクニックもいいし、どこか観光だったり芸術だったりを楽しむために出かけるのも良い。それこそ美味いもの巡りとかも良いさ。

 

 とにかく楽しいことがこれからも目白押しなんだ。学校生活だって、入学して一学期を終えていよいよ、慣れてきた感じで二学期を迎えるわけだからね。

 文化祭や体育祭、遠足なんかもあるって聞いた。そういう催しがたくさんあって、日々が益々充実していくことが予想される。

 

「そのためにも、さっさと面倒な連中は片付けちゃわないとな」

『もうお前今から概念領域に殴り込んで無差別にすべて消して回れよ。もはや存在そのものが迷惑レベルなんだから、オールリセットかましちゃいなよコマンドプロンプト』

「暴論止めろや!」

「きゅう?」

 

 怖ぁ……マジで存在そのものが迷惑だったやつが極端なこと言ってる。

 純度100%コマンドプロンプトならそれも選択肢の一つに加えていたとは思うけれども、今の俺がそんな、埃を取るのに家ごと潰すみたいなことするはずもない。

 

 相変わらず極端なアルマにため息を漏らしつつ、しかし俺は気合を入れた。

 差し当たっては待ち受ける敵──サークル、ダンジョン聖教過激派、そしてその背後に潜む委員会と概念存在。

 やつらの陰謀を阻止し、構成員を打ち倒し、そして新たなる時代を守り抜くのだ。大ダンジョン時代を終えた次の時代、新たなる世界を。

 改めて決意を固める。

 

「……まあ、その前にシステム領域への帰省だけどな。はてさて、どうなってるんだかな、今のあそこ」

 

 まずはコツコツ目の前のこと、ということで急遽明日に決まったシステム領域への帰還を想う。150年前と今とで、いろいろ変わってたりもするんだろう。

 実に何度目かの転生を経た末での帰郷である。なんとなし郷愁を覚えながらも、俺はアイを伴い、風呂を出るのだった。




次話から新エピソード、システム領域帰還編ですー
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