攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ヴァール、お前はシステム領域帰還の主役になれ!

 さて毎朝のことだけど食事をする。今日も今日とてご飯とベーコンエッグ、生野菜サラダにウインナーが数本とゴキゲンなラインナップだ。

 しっかり食べて力をつけないとね! と白米を多めに食べつつも、俺は三姉妹と本日の予定について最後の打ち合わせをしていた。

 

「ええと、システム領域についたら案内役はリーベとシャーリヒッタがしてくれるみたいだけど、具体的になんかプランとか予定とかあるのか?」

「はいー! それはもちろん、何しろコマンドプロンプトとヴァールの凱旋ですからねー!」

「すでに向こうの精霊知能達にはオレの受肉のタイミングあたりで近々、父様と妹がご帰還なさるって伝えてますから! 総出で準備するってみんな張り切ってましたよ!」

「そ、そう」

 

 怖ぁ……マジで総出で取り組んでそうじゃん。凱旋って何もそんな、パレードみたいに言わんでも。

 俺の隣でヴァールも面食らい、困惑した様子で眼前の姉二人を見ている。静かにひっそりと、閑散とした故郷の田舎にふらっと顔を見せたくらいの感覚でいたのがなんか、国挙げての大事じゃー! みたいに騒がれたらこうもなるよな、お互い。

 

 思わず顔を見合わせて、俺とヴァールはおずおずとリーベとシャーリヒッタに相談してみることにした。

 

「あ、あの……そんなに大々的にしなくても。いや、精霊知能のみんなに出迎えられるのは嬉しいしありがたいっちゃありがたいんだけど、そんな祝事みたいにされるのもどうかなと」

「それぞれ業務もあるだろう、あまり我々に構われても恐縮なのだが……」

「なーに言ってるんですか二人とも! 邪悪なる思念討伐の大功労者をろくに出迎えもしないなんてありえないでしょシステム側としてー!!」

「たしかに業務は大事だけどよ、今のオレ達はそれだけのモノじゃねーんだぜ妹よう。心がある、命がある。だったらそれらの赴くままに、やりたいことをやるってのも重要なタスクなんだぜ!」

「そ、それはそうかも知れないが……あとワタシは妹ではない、強いて言うなら姉だ」

 

 極力静かに帰省を済ませても良いんじゃないでしょうか、と提案したところ、思いの外ガチめな説得力のある理屈で力説されてしまった。

 

 魂なきプログラムデータに過ぎなかった頃とは違い、今の俺達はたしかにシャーリヒッタの言うように、独立した心と人格を得た一個の生命だ。

 だからこそ、成すべきことだけではなく成したいことにも目を向けるべきだ。それがより多様な価値観や発展性といった可能性を生み出し、システム領域や世界そのものをさらなる新しいどこかへと導いていってくれるだろう。

 

 コマンドプロンプトではない山形公平が望んだ新しい時代。

 大ダンジョン時代から一歩先に進んだ世界の在り方から言えば、精霊知能達が自発的に行動するというのはとても素晴らしく、とても素敵なことだ。

 ことなんだけど……それはそれこれはこれとして、ねえ?

 

「お、お手柔らかに……」

「持ち上げても担いでも大した袖は触れんぞ……山形公平はともかくワタシなど、どこまで行っても所詮敗北者なのだから」

 

 俺は単純に、なんかこう目立つの怖ぁ……って感情からの弱腰なんだけど。ヴァールはむしろ、もっと深刻でシリアスな感情から忌避感を口にしていておや? となる。

 この子、前から自分が150年前に邪悪なる思念に敗れたことを引きずってはいるんだけど、まさかそのへんの罪悪感からシステム領域に温かく迎え入れられることを厭うていたりするのだろうか。

 

 だとしたらそれは違う。絶対に違う。

 ヴァールは敗北者なんかじゃないし、むしろ誰よりも身を粉にして戦い続けた功労者の中の功労者だ。無論、ソフィアさんも含めてな。

 ぽっと出てきて半年で全部ひっくり返しちゃっただけの俺とは比べ物にならない。

 

「バカなこと言ってんじゃねーですよヴァール。あなたとソフィアがいてこその今あるこの現世でしょうにー」

「WSO統括理事として世界を牽引してきた、いわば土台造りをやってくれたお前さんは勝利者だよ、誰がなんと言おうとな。あんまり卑下すんな」

「……お前達」

 

 リーベやシャーリヒッタも同様に感じたようで、即座にヴァールに諭している。

 そう、ヴァールとソフィアさんがいなかったらそもそも邪悪なる思念相手に何もできずに終わってるんだよ、実際。

 

 WSOを組織してオペレータ計画を現場で指揮し、その上で決戦スキル"アルファオメガ・アーマゲドン"を来るべき時まで守り続けてくれていた。

 それらの功績はいずれも、アドミニストレータ計画実行にあたって必要不可欠なものに他ならない。そもそもオペレータが現世社会にある程度根差した状態でなければ、ここまでスムーズにことが運ぶとは思えなかったしね。

 そのへんをしっかり伝えた上で、俺も続けて彼女を諭す。

 

「ヴァールこそ、システム領域帰還における主役だと俺だって思うぞ。胸を張って、みんなの熱烈な歓迎を受け止めてあげてくれ」

「山形公平……いや待て。いい感じに言ってくれるが、主役はやはりあなただろう。さり気なくワタシに丸投げしようとするのは止めてもらえるか? あなたがメインだ、みんなの指導者としてどうか誇らしい態度で凱旋してくれ」

「えぇ……?」

 

 ごく自然な流れで陰キャポジを確保できるかなーと思っていたら逃れられなかった。無念。

 仕方ない人だなあ、とどこか苦笑いするヴァールに俺も誤魔化しがてら笑っていると、リーベが呆れ返って俺達二人に告げるのだった。

 

「ヴァールも併せて二人がメインですよー。どうか揃って胸を張ってくださいー」

「う……」

「む……」

 

 ヴァールも逃げられなかったね。

 まあ仕方ないと肩をすくめて、俺達はそうして朝食を食べ進めた。




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