攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ひとしきり話もして、朝のひと時を優雅に過ごした俺達山形家とヴァール。
もういい頃合いかなーってことで、そろそろじゃあ行こうかとなり、俺の部屋に揃って向かうこととなった。
「というわけで行ってきまーす。帰りは夕方頃になるかも? よろしくー」
「はい、いってらっしゃーい」
「気をつけてねー。そのままあの世行きとかやめてねホントー」
「きゅうきゅうきゅうー」
母ちゃんや妹ちゃん、アイにも一言告げてリビングを出て2階へと向かう。
システム領域に行ったきり帰ってこないんじゃないかって若干、優子ちゃんが心配していたけどそんなことあるわけないじゃん、まだ俺人間のままなのに。
そのへん、まだまだ心配性というか……むしろ俺が心配されるようなことをし過ぎなのかもしれない。
探査者になったり救世主呼ばわりされたり入院したり死んだり生き返ったり、挙げ句リアル邪気眼みたいな覚醒まで果たしちゃいましたーなんて考えてみればフラフラしすぎだよね、うん。
「もうちょっと落ち着いた生活を送りたいよなあ……」
「夏休み前半は相当落ち着いてたんですけどねー。委員会絡みでまた、カオスな局面に首を突っ込むことになっちゃいましたからねー」
「主たる関係者とは言えない、あくまで協力者的な立場ではあるものの存在が大きすぎるからな。概念存在どもがターゲットにしているやもしれんとまで来れば、なかなか落ち着くこともできんか。騒がせて本当に申しわけない」
「ヴァールの謝ることじゃねぇだろー? 何もかもアンタッチャブルな領域にわざわざ踏み込んできた連中が悪いんだぜ」
三姉妹と語らいながらも自室へ。ヴァールの言うように俺って元々、倶楽部案件においては協力者その1くらいな立場だったんだけどね。
それが鬼島の匂わせによって今では常に護衛がつけられているレベルの当事者さんになってしまった。申しわけないと言われても、こっちこそ無闇に人員を動員させてしまって悪いなーって気分だよ、実際。
そんな話はさておき俺の部屋の中、適当に円を囲むように立つ。と、何やらリーベがスマホを操作しているね。
そしてそれに対してシャーリヒッタが、興味津々といった様子で画面を覗き込んでいる。
ちなみに昨日の今日だ、シャーリヒッタはまだスマホを持ってたりはしない。そもそも戸籍からしてヴァールに用意してもらっている最中なので、そのへんはもう少しだけ我慢してねって感じだ。
まあリーベと共有して楽しんでるみたいだし、これも姉妹仲の良さに繋がってるなら悪くはないだろう。
「……さて、と。それじゃあ行きましょうか、システム領域ー」
「ついにこの時が来たぜ! 父様が、コマンドプロンプトが公の場に姿をお見せする時がよ! 実に500年もの時を経て初めてのことだ、緊張するぜェ……」
「えぇ……? そんな大きな話じゃないだろ……」
「いや、さすがにワールドプロセッサと並ぶ存在が初めてシステム領域にその姿を表すともなれば当然だろう。ワタシとて、仮にまだシステム領域にいたとしたら同じく緊張していたかもしれん」
怖ぁ……めっちゃハードル上げてくるじゃん。そもそも公の場とか言われても、常々その存在自体を極力隠蔽してる次元の話だろうに。
というか500年って改めて言われると長いな、私マジで引きこもりすぎじゃない? 仕方なかったこととはいえ、客観的に数字示されるとドン引きしちゃうんですけど。
こほん、と咳払い。あまり深堀りすると魂レベルで陰キャな事実に震えちゃいそうになるから止めておこう。はい止め、この話はおしまい!
俺は神魔終焉結界を作動させた。途端に切り替わる俺の姿、蒼いコートに大陸服、靴までちょっぴりアジアンテイストなものを履いてのキメキメ山形くんだ。
その上でワームホールを開く。
「扉よ、今ここに真実へと至るがいい────っと、できた。これで行けるな、みんな」
「私達でも空間転移用のワームホールは開けますけどー、さすがにコマンドプロンプトのそれは精度と強度が桁違いですよねー」
「演算力の違いだな。天地開闢結界をスキルに落とし込んだ手腕もだが、やはり精霊知能とは別格なのだと思い知らされる」
「そりゃまあ、最上位プログラムっていうかそもそもハード側だしな、父様は。ソフト側のオレらとじゃ文字通り、基盤ってやつが違うぜ」
ワームホールに違いなんてあるのか……いやあるけど。そこまで気にすることじゃないし一々持ち上げ過ぎである、勘弁してくれ、気まずい。
演算能力って話だとそりゃまあ、人間用にダウンサイジングしててもコマンドプロンプトの魂ですから。本来のスペックに比べて0.1%ほどの出力さえ出てるか怪しいけど、それでも精霊知能からすれば多少は唸るような出来でいるらしかった。
「ええと……えー、こほん。じゃあ行こうか。システム領域の入口っていうのかな、パソコンで言うところのデスクトップにあたる地点に座標合わせてるけどそこで良かったか?」
「大丈夫ですよー。今現在だとシステム領域そのもののエントランスとしてテクスチャ設定されてる場所ですねー。テーマパークの入口みたいなものですしー」
「て、テーマパーク?」
あっけらかんとすごいことを言ったな今。ヴァールと顔を見合わせる。
なんか現世を模倣したテクスチャやらオブジェクトやら貼り付けてるとは言ってたけど、テーマパークって……
マジで今、どんなことになってるんだシステム領域?
半ば戦々恐々としながらも、俺達はワームホールへと足を踏み入れた。
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