攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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システム領域は新人精霊知能にとても優しくて温かいアットホームな領域です^^

 ワームホールを潜り抜ける。現世から見て概念領域よりもさらにはるか上層、システム領域のとある地点だ。

 現世の言葉でデスクトップとも言える場所かもしれない。システム領域のどこが始点でどこが終点かって話はなかなか哲学的な問いかけなんだけど、少なくとも直下層の領域にダイレクトに繋がっている言わば出入口にあたる座標だからね。

 

 と、いうわけで無事にシステム領域は出入口? の地点にやってきたわけなんだけど……

 広がるその光景に、俺は即座に、脊髄反射的に大声を上げていた。シャイニング山形、渾身のリアクションである。

 

「うわーっマジでオブジェクト張り付けてる! 現世の風景まんまじゃないか、さすがにちょっぴり粗はあるかもだけど!」

「ふむ? たしかに見事だが、とは言え少しばかり雑だな……オブジェクトの張り付け方がかなり雑だ。本当に見栄えしか整えられていない」

「う……いえまあ、雑なのは雑ですけどー」

「ハハハハハッ! そりゃ父様やヴァールから見ればこんな、薄皮1枚誤魔化しただけの光景なんて雑だろうよリーベ!」

 

 

 俺がコマンドプロンプトでしかなかった頃の光景とは全然違っている。極めて近未来的な都市を遠くに望む、牧歌的な草原が広がる空間。

 パッと見、テレビとかで見かける北欧の長閑な自然の風景にも見える。すごいなこれ、システム領域がまるで雄大な大自然になってるじゃないか!

 

 ……まあ、とはいえ一目見ただけで俺やヴァールには分かってしまった。本当にそれらしいオブジェクトを設定しただけで、ちょっと剥ぎ取れば元のシステム領域の光景が見えてくるだろう、と。

 張り付け方がヴァール曰くの雑というか、ちょっと詰めの甘さのある可愛らしい構築になってるんだよね。

 

 そもそも元の光景がなんだよって話だけど、なんていうか本当にサイバーな世界観の光景だったりする。

 青だったり緑だったりするラインがあちこち走ってたり、変数化されたデータが表層から飛び交っていたりする風情も何もない無機質な空間だ。

 

 今、目に映る風光明媚っぽい光景のすぐ下にはそんなモノが見えているはずだ。ためしに地面に手を突っ込んで、土のオブジェクトをぺりっと剥がしてみる。

 普通、現世の物理法則的にはちょっと考えにくい感じで薄っぺらな膜のように剥がれる大地の下には……土でなく暗い空間、さっき述べたシステム領域の本来の姿が見えているね。

 

 まあ、わざわざ引っ剥がさなきゃ見えないものだし重箱の隅などつつくつもりもない。

 なんならガワだけでもよくここまで自然の風景に仕立ててみせたものだと感心すらしているよ。

 

 言わば金メッキのようなものかな?

 あっちはしっかりと人類が誇りと信念をもって確立し、今なお高めようとしている技術であるから、単純にいろいろ端折った結果のこれなんだろうなーって感じのするこっちとは比べるべきじゃないんだけども。

 実際、リーベが焦ったように口早に説明してきているし。

 

「い、いえあのー、これにはそれなりに深いようで深くないようでけれど結局複雑怪奇天網恢恢な事情というものがありましてですねー」

「そんな焦らなくても良いって。俺はむしろすごいなって思ってるんだから。手を入れる余裕がなかったんだろ? 分かってるよ」

「雑なのはたしかだが、セーフモードという状況においてよくここまで仕上げたものだと感心はする。単なる趣味に近いだろうに、担当した精霊知能達はよくやったものだ」

「ご、ご理解いただけてありがたいですー。実のところ何体かの精霊知能達からも、このエリアの出来についてはいくらなんでも酷くない? 的な反応がありましてー」

「えぇ……?」

 

 そこで揉めるのかあ。

 言わばDIY、日曜大工みたいなノリで時間が空いた時にやってるようなものだと思っていたからちょっぴり意外だ。

 

 でもまあ、趣味だからこそ熱意を持ちたいって子も当然いるだろうしな。

 俺のやってるソシャゲでも、SNSなんかには云十万も課金して"俺は遊びでゲームしてんじゃねえ、本気でやってんだァッ!! "的な魂の叫びをかました挙げ句ガチャで爆死した人もいたりするからね。怖ぁ……

 

「そもそも都市部以外のオブジェクトについては最近になって手が入った部分だし、加えて生まれたての精霊知能が担当してるから多少は仕方ねえさ。たしかに今はちぃとばかり粗雑なつくりだが、これはこれで味があるってもんさァ」

「あ、生まれたての……発生したてのプログラムがしてくれたのか。それはまた、本当にすごいな」

「さすがに新参の趣味に物言いはつけられん。前言撤回だ。雑と言うよりは発展途上、見栄えしか整えていないと言うよりは少ない時間の中でよく、優先すべき外見を優先できたものだと褒めるべきだな」

 

 新人さんが手掛けてくれた、という新情報を前に俺もヴァールもすっかりホッコリ。微笑みながらもまだまだ煮詰める余地のあるこのオブジェクト設置ぶりを、温かい眼差しで見つめちゃうよ。

 そうだよなー、新人の精霊知能だって次々ひょこひょこ生まれてるよなー。セーフモードも解除されて、8割方使用不能になっていた領域もすっかり安全区域に戻れたわけだしこれからもっと増えるだろうなー。

 

 復興のため、人員増加はワールドプロセッサにとっても急務ってことなんだろう。

 今回の帰省で多少は見学できると良いな〜なんて、まだ見ぬ最新の後輩さん達との顔合わせにちょっぴり期待を抱く俺ちゃんだった。




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