攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ちょくちょく馬鹿みたいなインフレをするこの世界に乾杯!

 新人さんのお仕事にさっそく温かな気持ちになった、現世の風景と化しているシステム領域は入口にて。

 いつまでもそこにいるわけにもいかないわけで、リーベとシャーリヒッタが率先して俺の手を引き、遠く見える都市部へと案内し始めてくれていた。

 

「各都市部はベテランの精霊知能達が細かく区割りをして受け持ってのオブジェクト設置をしてますー。なんならアフツストが監督してたりしますから、完成度については割と真に迫ってると思いますよー!」

「ちなみにセーフモードが解除されるまでにも1000の都市部が領域内のあちこちにありましたが、解除以後は復興も兼ねて9000もの都市オブジェクト設置計画が推し進められています! 合わせて10000、今後精霊知能の総数が今より10倍以上になることを見越しての大拡張計画だぜ!」

「都市の数も精霊知能の数も10倍!?」

「インフレしたな、ずいぶん……」

 

 怖ぁ……システム領域の規模がえらいことになってる。ヴァールと顔を見合わせて、俺は目を丸くして驚いた。

 

 いやまあ、邪悪なる思念による侵食から取り戻された土地の広さ的にはそのくらい余裕でできるんだけどね。

 2割しか残ってなかった150年前以降の時点ですでに、現世領域くらいには広かったからなあ。そこに100億近い数の精霊知能達が膨大なデータを日夜処理し、世界の円滑な運営を行っていたわけである。

 

 それが、俺の《攻略! 大ダンジョン時代》によって邪悪なる思念の存在から侵食から何から何まで取り除かれて、奪われていた8割方の領域も取り戻すことができた。

 そうなると必然的にシステム領域の土地も拡張、というか復活するわけで。侵食されたのはデータ階層も含んでいるからまるまる10倍広がったわけじゃないけど、体感5倍くらいにはなっているはずだ。

 

「土地が広がれば人の数も増える。それはシステム領域でも同じってことか」

「まあそういうことですね、父様。セーフモードから完全復旧したことを受け、ワールドプロセッサは即座に新規精霊知能の大量生成を命じられました。世界そのものの復興に必要な人員の増加を、行えるだけの容量が復活したと判断したわけです」

「元々、邪悪なる思念に侵略される前はそのくらいの数のプログラムやデータがありましたからねー。失われたものを今、ようやく補填に取り書かれるようになったってわけですー」

「そうだな……精霊知能達も、精霊知能になれなかったプログラム達も。元の総数から考えれば大半が犠牲になったわけだしな……」

 

 ついしんみりしてしまう。大ダンジョン時代の解放に至るまで、現世においては数多くの犠牲や被害が出てしまったわけだけど……システム領域においても、壊滅的と言っていい被害はもちろん、出てしまっていたんだよね。

 500年前のファースト・アタックにおいては人格を持つ前のプログラムが総数の半分ほど。150年前のアドミニストレータ敗戦においては、すでに人格を得ていた精霊知能達がさらに半分ほど。邪悪なる思念によって捕食され、死んでしまったのだ。

 

 それ以前に3つの異世界を、そこに生きる生命、魂ごと喰らって取り込んだことまで含め改めて思うが、邪悪なる思念の罪の深さは果てしないものがある。

 それでも生きたい、死にたくないと願う生命を奪いはしないけど……永久にも近い年月をこれから辿ることで、少しでも自分のやってしまったことの重み、痛みを実感できるようになってくれればとは、山形公平として、コマンドプロンプトとしては思わざるを得ないよ。

 

 

『ふん……いっそまとめて喰らわれていれば、僕と一つになれて完璧な存在へと至れたものを。不完全な世界でそうやって無駄な感傷に浸るような不完全なお前達には、それこそが唯一の幸せだったというのに』

 

 

 脳内のアルマは、今はまだこんなことを言っている。

 こいつにはこいつの理由や理屈がある。それは理解するがさりとて、それでこうまで被害をもたらされては堪ったものではない。

 

 そもそも、完璧な存在……そんなモノがもし仮に本当にあるとして。それはこんなやり方でしかなれないモノだったのだろうか?

 他者を取り込まねば成り上がれない不完全性がある以上、結局こいつは、永遠に満たされない欠けを満たそうと他者に害を加え続ける地獄を歩み続けるしかなかったようにさえ、俺には思えている。

 

 

『…………じゃあ、どうすれば良かったって? どうやれば完璧な僕になれたんだ、他者で補うこともせずに!!』

 

 

 自分で悩み考えるんだ、それこそ永遠に等しい時間をかけてでも。これからのお前に許された、それが唯一の完璧へのアプローチだ。

 そうしていつか、見出した答えがどうであれ……お前がこれまでやってきたことは誰にも赦されない。俺も赦さない。絶対にだ。

 

 ただし、見放したりもしない。

 俺は、お前のこれからとともに在ろう。いつか何かの答えを得る日にたどり着けるまで。永遠にも近い日々を、お前の傍から見届けるよ。

 

 それがあの日、生きたいと願ったお前を生かし。罪を憎み、それでも生命までは憎まないことを選んだ……

 山形公平という人間が、俺が選んだ寄り添うってことの意味だ。




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