攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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「急にスポットライトが当たると危険」この世の真理である

 まさかの大人数でのお出迎え。都市中枢部にやって来た俺とヴァールを歓迎してくれる、星の数ほどの精霊知能達。

 そろって拍手喝采なんだけど、怖ぁ……ついソワソワしながらヴァールを俺の前に引き寄せちゃった。笑顔で歓迎を喜ばしく受け入れつつも、こっそり彼女を前面に出して俺はその後ろでひっそり笑うスタンスだ。

 

「……コマンドプロンプト?」

「いや、その。こういう一致団結のノリがどうにもむず痒いと言いますか、俺には眩すぎると言いますか……」

「たまに思うのだが、山形公平としてのあなたの過去には何かあったのか? 人間関係絡みで心理的外傷を負うような体験とか……」

「何もありませんでした……ええ、何も……」

 

 ジト目で、困惑とともに何やら気遣わしげな視線を向けてくるヴァールから目を逸らす。

 あまりの陰キャぶりに過去、トラウマになるような出来事でもあったのかと問われるけれどそんなのなかったよ。うん、それ以前に人間関係そのものが最低限度しかありませんでした。

 

 でもね言わせて、山形くん思うんだよ。何もなかったこれまでだからこそ、いろいろある今現在に対して気後れしてしまう感覚だってたしかにあるってね。

 ましてこんな、空間そのものが高木さんみたいな陽キャのノリに染まっているようなところに足を踏み入れているわけだからそりゃ、二の足だってしこたま踏むよ。

 

「目立つ想定がなかったんだよ。今までの俺の人生にも、これからの俺の人生にも。だからなんていうかね、急にスポットライトを当てられると身が竦むというかなんというか」

「あー……なんていうか死亡フラグって感じですねそれー」

「だろ!? 俺知ってるよ、普段目立たない人がいきなり矢面に立つのってそれ大火傷する前フリなんだ! すでに何度か経験あるもん、シャイニング山形とか救世主とか!」

「ああ……それは、まあ」

 

 納得されるのもそれはそれでもんにょりするけど分かってくれたか、ヴァール!

 リーベは元より俺のそういう性質については3ヶ月ほど、脳内に住み着いて四六時中寝食をともにしたから知ってくれているけど、ヴァールからの理解も得られたのは僥幸だ。

 

 ただまあシャーリヒッタだけはハテナマークを浮かべて首を傾げているね。この子はこの子でなんていうか、体育会系チックな陽キャだから無理もない。

 今だってほら、迎えてくれた精霊知能達の中でも一番前、黒いスーツ姿に白いスカーフを首からかけているダンディな渋い中年男性型の精霊知能──ちょっとアレだね、海外の怖い組織をテーマにした映画のボスさんみたいな──相手に一切、物怖じすることなく話しかけていってるし。

 

「おう、出迎えご苦労サン! 盛大じゃねぇか、この都市の何割くらいだこの数よう!」

「ざっくり1万体程度だから、これでも総数の0.1割だな。ちなみに今、表に出ているのが3000体。残り7000体は周辺のビルから見てくれているぞ」

「は? ……うお、マジか! あちこちの窓に精霊知能がビッシリ!」

「怖ぁ……」

 

 見た目も渋けりゃお声も渋い、そんな男性型精霊知能の言葉に俺達は周囲の建物を見回す。

 透き通るガラス張りのビルディング、あちこちに建つそれらのあらゆる階層の窓から精霊知能達が張り付きでこっちをじーっと見ている。好奇心とか、興奮とか歓喜とか、とにかくそんな感じの目だ。

 

 怖ぁ……気配はしてたけど、齧り付きで見てきてるよ。

 これにはヴァールのみならずリーベさえ若干顔が引きつる始末で、まさかマジでここまで集まるとも思ってなかったみたいだ。

 だって1万ておかしいもの。ちょっとした市町村だもの、ここに集ったミーハーさん達だけでも。

 

 なんか胃が痛くなってきた。こんなに注目されると一挙手一投足を観察されているみたいでなかなかに緊張しかない。

 瞳を閉じて瞑想、瞑想。ついでに意識的に、コマンドプロンプトとしての思考回路にいくらか切り替える──自我は山形公平そのものながら、やはり3割混じった部分というのは大きいからな。

 ふう、と息を吐き、スッキリ整った心境でヴァールとともに、ダンディな精霊知能の元へ向かうことにする。

 

「行こう、ヴァール。もはやこの局面、堂々と真正面から突破するしかないものと見た」

「あ、ああ。分かったから背中を押すな、あなたが前を行ってくれ。コマンドプロンプトより優先される精霊知能などいない」

「いや、それはちょっと。後方コマンドプロンプト面してたいし」

「どんな面だ!? ええい、せめて横並びだ、手は繋いでいるから心配するな! そもそもこの場にあなたの敵などいないのだけれども!!」

「あ、じゃあリーベもー! お手々つなぎー!」

 

 若干コマンドプロンプト口調でキリリとした山形くんだけど、それでもヴァールは俺の前を行ってくれ。

 などと言ったら全力で抵抗されてリーベとともに、俺の左右を陣取って手を繋がれてしまった。

 

 美少女二人に両手を引かれる、傍から見れば微笑ましいかもしれない光景だけど当事者としては宇宙人に両脇抱えて連れて行かれる現地人の気持ちだ。

 おお、アブダクション……いやもうすでに外宇宙どころじゃなく世界の果てだけどねここ。とにかくそんなわけで、俺は激渋イケメンダンディおじさん精霊知能の前まで両手を繋がれ連れて行かれるのだった。




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