攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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システムさん「外に出たら負けかなと思っています」

「積もる話もそれこそ500年分はありますが、まずはやはり、何をおいてもお連れせねばならない場所があります」

 

 いくらか話を交わしてのち、アフツストは俺にそう告げてきた。何よりもまず連れて行かなきゃいけない場所が、会わなければならないモノがいると言う。

 

 まあ、言うまでもないけどアイツのことだね。

 そもそも前から帰ってこーい帰ってこーいと繰り返しメッセージを送ってきて、あまつさえ称号効果で通行手形まで送りつけてきた、いつも人のステータスでレスバトルを繰り広げてくれているアイツだ。

 アフツストへと笑い返して、俺はその名を告げる。

 

「ワールドプロセッサ……この都市に常駐してるんだ?」

「そうとも言えますしそうでないとも言えます。あの方のお住まいはこのシステム領域のあらゆる都市と空間を繋げておりますから。ある種の偏在ですね」

「ちなみにワールドプロセッサの居城の実座標については一部の精霊知能しか知らなかったりしますよー。どこからでもいけますけど、実際の地点がどこにあるかはわからない……万一の時に即座に身を隠せるようにしてるんですねー」

「らしい用心深さだなあ」

 

 感心するやら呆れるやら、だ。精霊知能達すべてとのアクセスは容易に取れるようにしつつも、万一に備えて一瞬で身を隠せるようにもしているとは。

 

 ワールドプロセッサに何かあれば、それはそのままこの世界そのものの機能不全にまで発展してしまうという大事な存在だからね。

 用心に越したことはないんだけど、反面、ずいぶんと窮屈なことをするもんだとも思ってしまう。

 

 その空間にいるのだってワールドプロセッサ本体ではなく、あくまで端末としてのアバターだろうに。

 コマンドプロンプトもだけど大元は基幹システムである以上、当たり前ながら本体はヒトの形どころかそもそも定まった形ですらない。巨大なデータの塊なので、他の何かとコミュニケーションを取るには端末を使わないといけないんだよね。

 

 この俺、山形公平という人間だってある種のアバターとも言えるからね。ワールドプロセッサとて当然その手の肉体はある。

 たしか一学期終業式の帰り、一度だけ一瞬だけ現世に姿を見せたな。邪悪なる思念を倒したことを受け、俺に感謝を述べに来たんだ。

 

 アレもよくよく考えれば、アイツにとっては相当リスクある行為だったに違いない。端末の姿を取ってさえ引きこもってるような存在が、よりにもよって現世領域までやってきたんだもんよ。

 それだけの事態だったんだろうし、そうしたいと思うほどのことだったんだろうさ。

 

 

『端末ならどれだけ破損しようが本体にはなんら影響はないだろうに、臆病もここまで来たら病的だね、ええ? あ、そう言えば僕にビビっておかしくなってたんでしたっけこの世界のワールドプロセッサさん。いやあ良いご身分だよ、そう言えば150年前の侵攻の時もなかなか表に出てこなかったもんなアイツ! へへん!!』

 

 

 ここぞとばかりにイキリマウント取るの止めろや! 脳内のアルマさんを一喝する。

 一応こいつもこの世界のワールドプロセッサとは、150年前に直接かち合ってるんだよな……そして鎧袖一触って勢いで瞬殺してしまい、システム領域の侵食をさらに高めた。

 セーフモードなかりせばその時点で終わっていたレベルで詰みの形を作ったんだ。

 

 やっぱり天地開闢結界はズルいよ、本気で。なんの対策もなしにあんなもん引っ提げられてきたら、いかなワールドプロセッサでも勝ち目ないし。

 魔天、断獄、災海……三界機構に成り果てたかつてのワールドプロセッサ達もおそらくはあの権能の前に何も成せず仕舞いだったんだろう。それを思うと《究極結界封印術》を構築したリーベの手柄すごいよなあ。改めて感心しちゃうわ。

 

「? どうされましたか公平さんー」

「ん、いやーリーベはすごいなあって。ワールドプロセッサの半ば名代として、アドミニストレータ計画を完遂させたんだもんなーって」

「嬉しいけど唐突! ありがとうございますー!?」

 

 いきなりの褒め言葉に驚きつつも照れて顔を赤くするリーベ。かわいい。

 こういうのは思った時に褒めておかないと、感情は後回しにすると思い出になって、なかなか表に出せなくなるからね。褒められる時には褒めておくべきなのだと思う。

 

 そんな俺とリーベのやり取りを温かく見守りながらも、アフツストはさてと右向け右した。つまりは都市部中央、デデンと聳える一際背の高い建物を向いたのだ。

 瞬間、海が割れるように精霊知能達が道を開けた。仕込みでもしてたのかな? ってくらい綺麗に左右に寄って、花道を作り上げている。

 それを流麗な仕草で指し示しながらも、彼は告げてきた。

 

「お連れしましょう、我らがグレート・マザーのおわす場所へと。コマンドプロンプト、あなたがシステム領域に来て最初に訪れるはやはり、かの御方の居城であるべきです」

「まあ、さすがにそこはね。ていうかさっきからグレート・マザーだのワイズ・オールドマンだの、もしかして君もシャーリヒッタみたいなノリだったりするのかな?」

「まさか! 父母のように慕いますがあくまで"ように"です。彼女のように本気でそう思い込む倒錯性は持ち合わせておりませんので悪しからず」

「は? 父様は父様だろ。ワールドプロセッサは母様とは言わねえけど」

 

 じゃあ母様は誰だよ。

 シャーリヒッタの発言はどうにも、まともに捉えて考察すると闇の香りが漂ってきそうで困る。怖ぁ……

 アフツストのジョークに食って掛かる娘さんを宥めつつ、俺と三姉妹はそして、彼の案内を受けてワールドプロセッサのところへと向かうのだった。




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