【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー/天鐸龍

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システムさんがとおる

 広瀬さんの両脇に座るおじさんおばさん。こちらがまた、まあとんでもないお偉い人たちらしかった。

 

「はじめまして、山形さん。私は全日本ダンジョン探査者組合協会理事、新川晋太郎です」

「はじめまして。私は国際探査者連携機構、通称WSO日本事務局の局長補、烏丸良子と申します」

「あっ……ぼ、僕は山形公平です。高校一年生です。新人の探査者です」

 

 名刺を渡しがてら、何やら長ったらしい肩書を告げてくるこの人たちの、立場はきっと広瀬さんより上なんだろう。県レベルの探査者組合本部長とは字面からして範囲が違う。

 全日本て。国際て。

 そんなグローバルな組織で役職付きなぞやっていらっしゃる方々が、忙しかろうに何のつもりで俺なんかに?

 引き攣る顔の俺に、新川さんと烏丸さんはにこやかに接してきた。

 

「不躾ながら山形さん。あなたの探査者スキル、および称号とそれに付随する何者かからのメッセージ、とも取れる解説文。いずれも広瀬本部長から報告を受けています」

「そして今日、まさに今しがた。ダンジョンを探査中でもないのに称号が更新されたとも聞き、どうしてもお話を伺いたくこの場に同席いたしました。突然のことに驚かれていることかと存じます。まことに失礼いたしました」

「あっ、あの、いえ……あの、お気になさらず……」

 

 やべぇ~。何言われても頭真っ白すぎて受け答えできねぇ〜。

 とにかく広瀬さん経由でこの人たちはやって来て、俺の珍妙極まるステータスとシステムさんについて詳しく聞きたがっているのは分かる。

 でも急すぎんだろ! いきなり大人の偉い人に3人同時に来られたって怖いだけだわ! 俺の3倍は生きてそうな方々に、詰め寄られる恐怖ったらないぞ!

 

「公平くん、落ち着いてください」

「み、御堂さん」

「深呼吸して、ゆっくりとあなたがスキルに目覚めた時から今までのことを話してくれたらいいんです。大丈夫、あなたの敵は、誰一人としていません」

「…………はい」

 

 手を握って落ち着かせてくれる、御堂さんの手が柔らかい。

 言われるがまま深呼吸して、心を落ち着かせてどうにか俺は、これまでの経緯を説明し始めた。

 

 突然スキルに目覚めました。なんだか名前がポエミーでした。

 初めてダンジョンを攻略しました。その夜、称号が更新されました。

 武器の使用を実質、禁止されました。説教もされました。

 今日、入学してクラスメイトに先輩探査者がいました。なんかすごいリア充でした。

 嫉妬していたらまた称号が更新されました。嫉妬すんな〜って諌められました。

 怖くなったので御堂さんに相談しました。ここに来ました。

 

「……以上です」

「ふうむ……いやはや、ありがとうございます」

 

 俺のステータスも実際見せつつ──新川さんが《鑑定》を持っている──説明を終える。

 ポエミーなスキルとかシステムさんの説教とか、見せるのはちょっと恥ずかしくて躊躇われるところも、隠し立てはできないので見せた。恥ずかしい。

 その間、御堂さんがずっと手を握ってくれていたのがありがたかった。ありがたかったけど、なんか次第に指を絡ませようとしてきてて怖かった。

 肉食系はTPOも弁えられないのだろうか。怖いよぉ……

 戦慄する俺には気付かずに、荒川さんが唸るように声を上げた。

 

「特殊な名称、効果の称号とスキル。ステータス画面の向こう側、山形さん仰るところのシステムさんの存在と謎の意図。どれ一つ取っても世界が、時代が揺るぎますな」

「大ダンジョン時代に、変化が訪れると?」

「100年前に到来し、50年前に停滞したこの世が。彼の登場によって再び動き出すということなのでしょう」

「『時代を動かす者』……!」

「それさえ彼の意志次第、ですが」

 

 烏丸さん、広瀬さんとも併せて3人、何やらシリアスに話し込んでいる。その間、俺と御堂さんは置いてきぼりだ。

 ところで御堂さんが何やら俺の方を向いて潤んだ目をしている。もう落ち着いたんで手とか良いですよありがとう、と言ったのに離してくれないし。怖ぁ。

 極力もう、色々考えないようにしようと思って手持ち無沙汰のまま、ステータスを見る。

 

 ……出しっぱなしのステータスが……また、変化している……

 

 

 名前 山形公平 レベル3

 称号 次なる時代をもたらす人

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 

 

「ひえぇ……っ」

「? どうしたんです、公平くん」

「ま、また……称号が変わってるぅ……」

「何ですと!?」

 

 もはや鳥の首が締まったような声を出すしかない。俺の言葉に一同騒然、荒川さんなんて目をひん剥いて《鑑定》を使ってくる。

 称号の詳細まで含めて、仔細がこの場にいる面々に明らかになった。

 

 

 称号 次なる時代をもたらす人

 解説 時代はあなたの思うがまま。あなたは時代が望んだ人

 効果 モンスターを倒した際、確定で素材がドロップする

 

 

 《称号『次なる時代をもたらす人』の世界初獲得を確認しました》

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……時代を動かす程度にあらず、あなたは時代を創るのです。今ここに、救済の刻来たれり!》

 

 

 絶句。効果も解説も、俺の中だけに響くシステムさんの声さえも。

 表示される何もかもが、俺たちにひとつのことを示していた。

 

 システムさん、リアルタイムでここを見ているな?




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