攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
かつて、邪悪なる思念によって滅ぼされた世界が4つあった。
やつ自身が司っていた世界に加え、後に三界機構に貶められることとなった魔天、断獄、災海の世界。
いずれも食われ、取り込まれ──そうして次なる異世界の侵略のため、そして完璧なる存在を目指すためのエネルギーとして利用されていたのだ。
そんな中、奇跡にも等しい確率で捕食の難を逃れたモノがいた。この世界で言う概念存在にあたる生命体が、邪悪なる思念の食べ残しという形で生きながらえたのである。
そして150年前、この世界に現れた。一体どの世界からやってきたのかは俺にも分からないが、世界と世界の間を揺蕩う波動の海を、おそらくは流されるまま流された末にやってきたんだな。
異世界の神。そう呼ばれるソレは、しかしてこの世界にやってきた際に人格と権能が分裂したという。
権能のほうは概念存在の手に渡り、今や委員会の策略に利用されている有り様であり……一方で人格のほうも、実はこの世界のワールドプロセッサによって確保されていたと言うことだった。
「これは完全に偶然のことでした。そもそも邪悪なる思念による捕食から逃げ延びたモノがいたなどと想定にはありませんでしたし、ましてやそれがこの世界に侵入してくるなどと……この世界の外側のことまでは、さすがに知覚できるものではありません」
「そりゃあなあ。ワールドプロセッサもコマンドプロンプトも、結局は各世界ごとそれぞれの存在だし」
「ですから、かの神の魂を発見した際には驚愕した記憶があります。柄にもなく言えば、茫然自失とした形ですね」
「この世にいるはずのない存在を見つけたらそうもなりますかー……ホラー映画さながらですねー」
昨日、三姉妹仲良く見ていた映画を思いだしたのかウンウン唸るリーベちゃん。
ワールドプロセッサのまさかの独断専行にはまたかよ! とキレていたものの、落ち着いて話を聞けばそれなりに理解を示している。
実際問題、異世界の神の魂がこっちの世界のシステム領域に来ちゃってたなんてこと、精霊知能達では決して判断できない極めて重大なエラーだし。
ワールドプロセッサが一人で抱え込む判断をしたのも、頷けなくはないんだよね俺としては。
シャーリヒッタやアフツストもそのへんは理解して、なら仕方ないか……と渋々ながら納得の様子。ヴァールについてはそもそもシステム領域にいなかった間の出来事だからね、完全に無関係な立ち位置だ。
それでも今、異世界の神の権能に対する策は講じる必要があるのはたしかなので彼女も挙手をした。
そのまま質問を投げかけていく。
「事情があったのは理解したがワールドプロセッサ、それでその魂は、件の権能に対してのカウンターとして機能する、と捉えて良いのか? 我々だけで対処できる気もするのだが」
「そう捉えていただいて構いません。我々だけで対処できる部分もありますが、そもそもが異世界の概念存在である以上、こちら側の存在では根本的な処置は難しいと思われます」
「モンスターや三界機構のような、邪悪なる思念を介しての存在なら倒し切ることもできるけど……そうでない以上、真の意味でこの世界となんの因果も持たない存在だしな。一時的に倒すことはできても、たとえば輪廻に受け入れたり、あるいはなんらかのリソースに還元したりとかって措置はできないだろう」
邪悪なる思念による侵食を受けて得た概念であるモンスターやダンジョン、レベルやスキル。俺達はこれらの枠組みを逆説的に利用してやつへの反撃を試みたわけだけど……今回、その枠組みの外に例の異世界の神はいる。
何しろ邪悪なる思念に食われてないからな。かの神こそは素で異世界転移してきた、正真正銘の異物なのだ。
それゆえ、既存のモンスター相手にするような対処がまるで通じない。
邪悪なる思念ともこの世界とも紐づけされてない存在だから、本当の意味で"そこにいるけどいないもの"に成り果てているものと予想できるのだ。
これがどういうことかというと、つまりは倒しても消滅させても、いずれまたどこかで完全復活する擬似的な不死性、あるいは偏在性を獲得しているってことになる。
あくまで擬似的であって、こちらの攻撃が通じないとかって話じゃないだろうけどね。ただモンスターと違って本当に終わりが見えないだけだ。それこそ、永遠のいたちごっこを繰り返す羽目になりかねない。
できて封印、あるいは千日手を承知で永遠に半殺しにし続ける程度か。いずれにせよ根本解決とは程遠い。
だがそれを見越してワールドプロセッサは異世界の神の魂を確保していたのだ。殺すも殺さないもないモノを殺し、倒すも倒さないもないモノを倒すために。
「元が同一たる魂であれば、倒した権能を取り込むことで無力化措置を行えます。ゆえに私は150年をかけて、かのモノの魂を精霊知能の規格にアップデートするための措置を施しました」
「……! そうか、精霊知能という形でこの世界に適応させたその神の魂が、権能を取り戻せばそれは!」
「必然的にこの世界と紐づけされることになり、システム領域による介入も行える、と。それをもって我々の世界の完全管理下に置くつもりですな、ワールドプロセッサ」
俺とアフツストの導き出した答えに、ワールドプロセッサは深く頷いた。
異世界の神を、こちらの世界の精霊知能とすることで分かたれた権能へのフックとする──奇策めいた手法だがたしかに有効だ。
ワールドプロセッサめ、さすがに策謀には強いな!
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