攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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「せっかくのリソースです。余すことなく使いますとも、ふふふ」

「えっと……は、はじめまして! この度新しく精霊知能となりました、ミュトスです! よろしくお願いします、ええとコマンドプロンプト、それに先輩方!」

 

 元気よく活発な感じに挨拶してくれる、精霊知能ミュトス──かつて異世界の神だったモノ、その人格部分。

 緊張してるのがいかにも新人さんらしくてほっこりするけど、いやそれどころじゃないぞと俺はワールドプロセッサを見た。

 ミュトスから、決して捨て置けない気配を感じていたのだ。

 

 

『……やってくれたな、この野郎……』

 

 

 俺同様に感づいた脳内のアルマ、邪悪なる思念が静かに怒りのつぶやきを漏らした。さすがに気づくか、我がことと言えば我がことだものな。

 ただ、それでもなおこいつに何かを抗議する資格はないって話ではあるけどね。ミュトスの現状は巡り巡ってこいつ自身の行いがもたらしたものなんだから、すべて。

 

 さておき俺はワールドプロセッサを見据えた。

 ミュトスを見た瞬間、概ねのことは把握したよ。この分だとこの子に、まだいろいろギミックを組み込んでいるんだろう。

 怖ぁ……好き放題やるじゃん、こいつ。

 

「お前な、ワールドプロセッサ……一ヶ月前ってそういうことか?」

「さすがに気付きますね。そうです、ミュトスを精霊知能として確立するために必要なリソースは、あなたがお察しの方法で賄いました。おそらくは今、あなたの中に寄生しているモノも気づいているのではないのですか?」

 

 確認を取る俺に、周囲の精霊知能達はキョトンとしている。ミュトスの何がそんなに異様なのかは気づいてないみたいだ、当然か。

 ワールドプロセッサはニッコリと微笑んだ。朗らかな笑みなものの、サラリと脳内のアルマさんを皮肉ってる感じなのが怖いんですけど。

 

 案の定、脳内でキレまくってるアルマは放置して俺はミュトスを見た。朗らかに笑う快活気な美女はしかし、頭を掻いてたはは……みたいなどこか古めかしい所作で笑っている。

 この子に罪はない。ないものの、面食らう存在であることが発覚したのは事実だ。

 未だ訝しむ精霊知能達に向けて、俺はそして、説明を始めた。

 

「……異世界とはいえ魂のスケールはやっぱり概念存在だ。精霊知能にするためには、絶対的にリソースが足りなかったんだろう。ワールドプロセッサはそれを、一ヶ月前の最終決戦で偶然手にした」

「最終決戦……まさか《攻略! 大ダンジョン時代》で分解した邪悪なる思念のエネルギー!?」

「いや、それよりかはもっと前だ。邪悪なる思念のエネルギーって意味では合ってるけど」

 

 リーベの推測に否やを返す。惜しいがそれよりも前の時点だ。ことははじまりのダンジョンに入ってすぐ、行われた。

 あの時。侵入してすぐに最初の戦いがあったことを覚えているだろう。最終決戦における第一ラウンドとなった、俺にとっても忘れ難い存在との決着。

 その場に居合わせていたヴァールが、まさかとつぶやいた。

 

「……《ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で》。邪悪なる思念によって生み出された生命体を分解し、作り変えるスキル、か?」

「正解だ、ヴァール。あの時、すでに抜け殻だった邪悪なる思念の端末体──お前が倒したモノを分解して生まれたエネルギーが、ミュトスには組み込まれているんだ。邪悪なる思念の気配が、たしかにする」

「な、なんですとー!?」

「オイオイマジかよそいつは、ワールドプロセッサ!」

「あの土壇場で、そのようなことを……」

 

 見事正答を言い当てながらも、何してるんだと言わんばかりに天を仰ぐヴァール。

 リーベやシャーリヒッタ、アフツストも唖然としてワールドプロセッサに抗議の目を向けている。向けられた側は相変わらず微笑んだままだけどメンタルつよつよか? 怖ぁ……

 

「自覚はないんですけどね、たははー……」

 

 頭を掻いて、やはりどこか古臭い笑い声をあげるミュトス。そして俺の解説を肯定したことで、誰もが彼女に視線を向けた。

 

 邪悪なる思念、の、端末。

 思えば邪悪なる思念本体よりも俺にとっては馴染みの深い、中性的な少年のような少女のようなアバターだったな。

 

 当時のアルマはあの端末を使い、幾度となく俺に接近しては嫌がらせだの勧誘だのをしてきたんだったか。

 そして最後には、最終決戦においてヴァールのギルティチェインによって腹をぶち抜かれて機能停止した。人格は本体に戻り、息絶えた端末体のみが抜け殻よろしく遺されたんだ。

 

 あの時、俺は死に果てた端末に向けて《ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で》を放った。

 たとえ敵でも、たとえ仮初の肉体に過ぎなくても尽き果てた身体を放置するのは、あまりに惨いことのように思われたからだ。

 

 結果として端末は塵となって霧散したわけだけど、その時にアバターを構成していたエネルギーをワールドプロセッサは確保したんだ。

 そしてそれをまだ魂だけだったミュトスに組み込んだ。精霊知能になるには単純に不足していたリソースを、邪悪なる思念の端末を構成していたエネルギーによって補填したわけだね。

 

「称号による邪悪なる思念看破効果がなかったら、俺でも見抜けなかったくらいすでに邪悪なる思念らしい属性からは離れているけど……それでも間違いなく彼女は、ミュトスはあの端末体のエネルギーによって精霊知能として確立できている。いや、ビックリだよ」

「実際、使えるリソースを探し続けていましたからね。あなたが何を思って端末体を分解し始めたのかは存じませんが、あれこそまさしく千載一遇の好機でした。ええ、ありがたく使わせていただきましたとも」

『ふ、ふ、ふざけるなっ! 使用料払えこの野郎!!』

 

 いけしゃあしゃあって言葉が似合うほどの優雅さで語るワールドプロセッサに、脳内でアルマさんがまー吠える吠える。

 気持ちは分からなくもないけど、こればかりは端末を放棄したお前に、ましてその上で負けてすべての権限を失ったお前に物言える権利はないんだ。

 愚痴なら後で聞いてやるから、今は大人しくしていてほしいよ。




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