攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
異世界の神の魂に、まさかまさかの邪悪なる思念の端末のリソースをくっつけて生み出した新たなる精霊知能、その名もミュトス。
その時点でもうコッテリ感半端ない盛りっぷりなわけなんだけど、俺の見立てではおそらくまだ、彼女には秘密があるような気がしていた。
じっとミュトスを見る。
「…………君は」
「へへーっ! な、なんでございましょうかコマンドプロンプト様!? こちら不肖ミュトスに何か、ご不満とかあったりなんかしちゃったりしちゃいますかね!?」
「あ、いや。君自体に問題はないというか、むしろ会えて光栄なんだけど……っと。そう言えば自己紹介さえしてなかったね。失礼」
「いえいえ! なんだかご丁寧に対応いただいちゃって、ミュトスちゃんたら恐縮しきりのキリギリス、なんつっちゃってたはーっ!」
「えぇ……?」
ヤバい、新人さんのノリがいまいち分からない。若い子についていけない世のおじさま方の気持ちが分かってしまいそうだ、俺まだ肉体年齢15歳ぞ?
というかなんだろう、全体的にリアクションがこう、古めかしいっていうか……俺の両親よりも上の世代って感じがするんですけど。ノスタルジック臭が漂うんですけど。
ミュトスの言動に不可思議なものを見出したのは俺だけじゃないみたいだった。他の精霊知能達も揃って、首を傾げつつ彼女とワールドプロセッサを見ている。
代表して長女リーベちゃんが挙手をした。戸惑いを隠せないまま、ワールドプロセッサに尋ねる。
「あ、あのー。彼女、ミュトスちゃんの人格って元からですかー? 失礼ながらそのー、異世界とはいえ神だったモノにしてはその、軽妙というか妙に楽しいといいますかー」
「元からですね、この性格は。リソースとして追加したエネルギーには人格に影響をきたすようなものはありません。ですが……」
「ですが?」
「……魂だけで私の手元にいた頃、慰みも兼ねて現世社会、とりわけ娯楽産業が発展し始めた頃の日本社会を眺めてもらっていた時期があります。おそらくはその影響でしょう、軽妙な言葉遣いについては」
「ズコーッ! ワールドプロセッサ様にすら言われちゃってるこの始末、オイオイ!」
怖ぁ……リアクションがあまりに古典的じゃない?
ズッコケる素振りも擬音を口にするのも、ましてノリツッコミ? みたいなのを一人で始めて一人で完結させるのも恐ろしく半世紀前チックすぎる。
たしかにテレビとか漫画とかの、結構昔のやつなんかだとこんな感じのコメディなノリはあるにはあった気がするんですが。
実際リアルでやる人なんて見たことないから逆に目新しすぎてついていけない。一人でリバイバルブームしてるよこの精霊知能!
「独特な雰囲気だな……日本フリークのマリアベールやエリスならばついていけるのだろうか。思えばエリスもどこか似通うところはある」
「ふむ、私的には好ましいノリだな。大体50年から60年ほど前か? あの時代の日本のコメディコンテンツは、私としても見応えがあった」
「なんかリーベに近くねェか? それも空回りしてる時の」
「なんですとー!?」
各々ミュトスへの所感を述べていく精霊知能達だけど、まあ概ねそこまで悪いものでもなさそうでそこはひとまず安心だ。
シャーリヒッタの言うことは正直俺にも分かるというか、たさかにリーベのノリに通じるところがある気はするよね、この子。空回りとまではいかないけど、なんか一人で盛り上がって一人で笑ってそうなテンションの高さというかさ。
まあ、どうあれ仲良くできそうで良かった。
ホッとしたところで俺は、まず自分から名乗ることとした。
「それじゃあミュトス、自己紹介させてもらうね」
「あ、はいっ!」
「……お初にお目にかかる、かつて異世界の神であった精霊知能よ。私はコマンドプロンプト。この世界における因果律管理機構にして、今は現世にて山形公平として生きる人間でもある」
表情をコマンドプロンプトとしてのそれに切り替えて名乗る。システム領域において、精霊知能に対して名乗る以上俺は私であるべきだ。
成り行きから多少複雑な身の上だが、要するに本体がコマンドプロンプトであり端末として山形公平があるという理解でいればいいのだと告げれば、ミュトスは分かりました! と頷いた。
素直な気質だ。好ましく思うとともに申しわけなさも覚える。こんな子の半身が今、悪辣なモノどもによって利用されようとしているんだ。
因果律管理機構として、けじめを付ける意味も込めて俺は頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。
「ミュトス、まずは謝罪させてほしい。この世界の概念存在が、君の半身……分かたれた権能に対して極めて不適切かつ失礼な扱いをしている。ひとえに我々の配慮不足であり対応の拙さがゆえだ。この世界を代表して、心からお詫び申しあげる」
「い、いえいえとんでもない、どうか頭をお上げくださいっ! むしろこちらこそ、勝手に分離しちゃった私の力のせいで大変なご迷惑をば!」
謝る俺に、慌てるミュトス。あわあわ言いながら俺の両肩をやんわり掴み、中腰になって彼女も頭を下げ謝罪してきた。
彼女も彼女で、自分の権能が独立してしまっている現状に不安と申しわけなさを感じているみたいだ。俺の頭をゆっくり上げさせて、真摯な瞳でまっすぐに見つめてくる。
「元いた世界がなくなっちゃって、魂だけで彷徨っていた私にこうして新しい生き方と挽回のチャンスをくださった。この世界には感謝しかないです! はい!」
「そう言ってもらえると助かる。改めて君を新たなる精霊知能として心から歓迎するとともに、君が半身を取り戻せるよう、微力ながら全力を尽くそう」
「どひーっ、最高存在様のご助力! あ、ありがたいやら畏れ多いやら、ひーんっ!」
「どひーって」
今や伝説のフレーズさえ口にするじゃん、怖ぁ……
やはり恐縮しきりに頭を掻くミュトスの、底知れない独特のノリに思わず顔が引きつる俺ちゃんであった。
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