攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ワールドプロセッサ「やりなさい」ミュトス「どひぇーっ!?」山形「怖ぁ……」

 何やら異様にノスタルジーなミュトスの言葉遣いはさておき、精霊知能同士での挨拶も行われる。

 リーベ、ヴァール、シャーリヒッタ、アフツスト。揃ってシステム領域においては重鎮ともいえる4体に対しても変わらずあのノリでどひーってしている彼女の姿を、どことなく戦慄とともに眺めつつ俺は、ワールドプロセッサに話しかけていた。

 

「……それで? ミュトスをどうするつもりだ?」

 

 この問いかけは言わずもがな、分かたれし彼女の権能についての対応をも孕んでいる質問だ。

 何しろかの権能についての対策としてミュトスを精霊知能としてリビルドしてここに呼んだ以上、彼女そのものになんらかの機能が──己の権能を取り戻すためのギミックが仕込まれているはずなのだから。

 

 実際、あの子からは何かまだ、得体の知れないモノが感じ取れている。

 邪悪なる思念とはまた違う、どこかで感じた覚えのあるものだ。脳内のアルマも不思議そうに呻いている。

 

『なんなんだ、一体……僕の端末だけじゃなく、別の何かも混ざってるぞアイツ。この際もう勝手に端末を使われたのは仕方ないとするにしても、異物とまぜこぜにするなんて不愉快極まりないんだけどね、夢見る無能め』

「完全などという浅ましい夢に溺れ果て、何もかもを犠牲にした末にその様を迎えた愚物が何やらほざいていますね。コマンドプロンプトの温情なかりせばすでに消滅している魂が、私と彼の間にでしゃばらないでいただきましょう」

『なんだとこの野郎! おい公平、もう良いだろ帰るぞ現世に!』

「なんでだよ」

 

 ワールドプロセッサ同士の生喧嘩をついに目の当たりにしてしまったわけだけど、正直巻き込まないでくださいとしか俺からは言うことがない。

 というか、やっぱりミュトスの魂には今、端末以外の何かしらが混ざってるよなあ……なんだ? どこかで覚えがあるんだけど思い出せないぞ。

 

 首を傾げる俺を見て、アルマとのやり取りを完全に無視してワールドプロセッサが微笑む。こいつ、アルマに散々やらかされたから本当に容赦ないな。まあ当然だけど。

 互いの紹介を終えて精霊知能達も俺たちの下へやって来た。彼女達さえ見据えて、世界維持機構の端末体はそして告げるのだった。

 

「ミュトスの役割、さしあたってのそれは異世界の神の権能……すなわち自身の半身を取り戻すこと。そのために彼女にはある種、超特例的な力を付与しています」

「超特例的な力、ですかー?」

「はい。コマンドプロンプトとリーベ、あとはヴァールもですか。その力の顕現する様を見れば一目で理解できましょう。これをもって私が本気で、委員会なる組織のモノどもを誅するつもりでいることさえも」

「…………」

 

 苛烈な物言いに一同押し黙る。ミュトスに与えた超特例的な力とは、ワールドプロセッサをしてそこまで言わしめるだけのモノだというのか。

 分かたれし権能を取り戻させる、それだけではなくそのまま委員会やその傘下組織をも粛清させるための力。彼女にとってミュトスとはある意味、対委員会用の切札なのかもしれない。

 

 そんな俺の考えを肯定するように、彼女は俺とシャーリヒッタを見て続けて言う。

 

「それゆえ彼女には、権能そのものは遠く及ばないにしろ、出力で言えば全力のシャーリヒッタにも匹敵するだけの力を持たせました」

「全力のオレ……!? って、異分子処断権限全段解放状態ってことか!?」

「ええ。あくまで瞬間的な出力値において、ですが」

 

 とてつもないことを平然という。俺達は絶句して、ミュトスを見つめた。視線を集めた彼女が頭を掻いてたはは……と冷や汗をかいて笑うのを見る。

 

 全力のシャーリヒッタって、そんなもん精霊知能の枠さえ超える領域の力だぞ。

 ワールドプロセッサやコマンドプロンプトには遠く及ばないにせよ、両者を除けば断トツぶっちぎりで最強ポジションに位置することになる。

 

 ──戦闘という場面を想定して考えた時、普通の精霊知能だと大体A級中位くらいの強さだと思う。

 そもそも戦闘に特化した存在じゃないからね。百戦錬磨のヴァールで、やっとこ香苗さんやリンちゃんクラスってところかな。

 それが異分子処断権限を全段解放した状態のシャーリヒッタともなると、文字通り次元が違う話になるのだ。

 

 具体的に言うと決戦スキル保持者やサウダーデさん、エリスさんらがガッツリ連携組んで襲ってきても、権能とか抜きにして普通に全員無傷で倒しきってしまえるレベルだ。もちろん、たった一人で。

 一言で言うけどおかしいよね。全段解放シャーリヒッタとはそれだけ異様な出力なのだ。たぶん現時点での現世では極限倍率状態の俺に次いで強くなるんじゃないかな。

 

 それに近しいレベルの力を、ワールドプロセッサはミュトスに与えたのだと言う。

 たしかに超特例的だ、控えめに言ってどうかしている。俺は思わず叫んだ。

 

「本気か!? この子の全力ってお前、メチャクチャな出力なんだぞ!?」

「ご安心を、コマンドプロンプト。首輪はもちろんつけていますし制限もあります。あくまで理論的出力値の話でありますから、そのまま全段解放されたシャーリヒッタに匹敵するわけではありません」

「にしたってお前、なあ」

「実際にたしかめてみれば、私の言っている意味が分かるかと思います。そうせざるを得なかったという事情まで含めて」

 

 不穏なことを告げて、ワールドプロセッサはミュトスを見た。

 自身に与えられた異質なまでの力に自覚があるのかないのか、ほええ? とやはりどこか古いリアクションで愛らしく首を傾げるお姉さん型精霊知能へと、彼女は無慈悲にも宣告した。

 

「ミュトス。あなたの力をコマンドプロンプトへと示しなさい──一撃だけで構いません、それですべてが分かります。全身全霊を込めた、精霊知能ミュトスとしての価値を示すのです」

「…………どひぇーっ!? ジーマーですかー!?」

 

 どひぇーって。ジーマーて。

 とんでもないことを言い出したワールドプロセッサは元より、なんか独特な、仰け反るようなポージングまでしてリアクションしたミュトスにも俺は戦慄を禁じ得ないのだった。




本話をもちまして2023年最後の更新となります。皆様ご愛読ありがとうございました!
次回はいつも通り1/1の0時からになりますのでよろしくお願いいたします!
また1/1の昼12時からは「大ダンジョン時代ヒストリア」も公開されますのでぜひぜひそちらもご覧くださいませ!
それでは、来年もなにとぞよろしくお願いいたしますー!
良いお年をー!

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