攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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古来より催事はワルの狙い目と相場が決まっている

 ワールドプロセッサの元を離れた俺達は、やたら神々しい空間に設置されている階段を今度は逆に降り、ビルの最上層へと戻る。

 濃密な再会だった……ワールドプロセッサ本人とのやり取りもそうだし、ミュトスとの出会いもそうだし。ずいぶんと有意義な帰省になってくれたなあって、不思議な達成感すらあるよ。

 

「そしてミュトスはこの後すぐ、受肉体の用意も含めた現世降臨準備に入るわけか。わりかしタイトじゃない?」

「おそらくはS級認定式に合わせてやってくるのだろう。受肉申請自体は済ませているだろうから、普通に考えれば受肉体とてすでに用意できていると思うが」

 

 オフィスを通り抜けつつ──その間、すれ違う精霊知能のみなさんと軽く挨拶したりもしつつ──ヴァールと軽く、ミュトスの今後について話す。

 どうもあの子とワールドプロセッサは香苗さんのS級認定式に狙いを定めて降臨準備に取り組んでいるみたいだ。タイミング的にそれもあり、今回俺に帰ってくるよう促したんだろうね。

 

 首都圏にて暗躍する委員会傘下組織、サークルとダンジョン聖教過激派。

 すでに現地においてはアンジェさんはじめ能力者犯罪捜査官チームが大立ち回りを演じている状況ですらある。

 

 その最中に行われる認定式に、ドンピシャでミュトスを出向させる。

 そこからまあ、ワールドプロセッサの見立てが手に取るように分かっちゃうよ。俺はアフツストに尋ねた。

 

「……認定式に連中が仕掛けてくるって、あいつは睨んでるんだよな、たぶん」

「でしょうな。そしておそらくはそこにミュトスの権能まで投入されると見ていらっしゃる。わざわざ彼女を、本質的にはシステム領域と関わりの薄いイベントに合わせて投入する理由はそのくらいのものですからな」

「だよなあ。何しでかすんだか知らないけど、ずいぶん無謀な真似をするもんだ」

「名だたるオペレータの群れにわざわざ仕掛けるわけですからね。領域から見ているだけの私からしても、いささか理解しかねるところです」

 

 肩をすくめる彼。渋くてダンディな、しかもどことなくダーティな匂いさえ感じさせるイケオジ風のデザインでそんな仕草はすごく伊達男って感じで羨ましい。

 俺が同じことしても厨二病のこっ恥ずかしい黒歴史になるだけだもの怖ぁ……古傷が疼くよ!

 

 さておき、アフツストの言う通りだ。やはり敵はS級探査者認定式の日取りに合わせて何か、仕掛けてくるのだと世界維持機構は考えているのだ。

 そしてそれに合わせ、今回の件における最重要ファクターを投入しようとしている。

 

 とんでもない無謀さだ。どれだけの数のオペレータが当日、現地入りすると思ってるんだ?

 それも現地の捜査官チームだけじゃない、こっちで倶楽部案件に関わってたエリスさん達はじめS級探査者達に加えて、国内外のS級だって何人かは来るだろうし。

 しかもそこにWSOのエージェントやらSPやらが加わり、果てはシステム領域からも俺やシャーリヒッタ、ミュトスまでいるのだ。そんなタイミングを狙って動くのは悪手に思えるが、さて。

 

「……逆にさ。首都圏に戦力が集まるならそれを見越して、全然関係ない地域で悪さすることも考えられるけど。それこそ関西とか」

「当然その可能性はあるな。ゆえにすでに日本の各地方にも能力者犯罪捜査官部隊は配置済みだが……ワタシとしてはやはり、仕掛けてくるなら認定式だろうと予測はしている」

「そうなんですかー? 何か情報とか持ってたりします?」

 

 考えられる中でまあ妥当なのは、認定式に戦力が集中するってことは他が手薄だと捉え、別の地域や地方で何かやらかすかってところか。

 とはいえそこはさすがのヴァールさん、きっちり考慮して対応済みみたいだ。こないだの鬼島による天罰宣言を受けてがっつり戦力を集めるとか言ってたけど、本当に日本全土に即応部隊を設置してくれてるんだなあ。

 

 そもそも空間転移持ちがこっちにいる時点で、ある程度そういう戦法を取られたとて対応できるってのもあるしね。

 なので可能性として考え、本当にそうなった場合には備えておこうって程度だけど……ヴァールはやはり本命は認定式そのものだろうと見ているようだ。

 気になるところをリーベが尋ねれば、彼女はうむと頷き答えた。

 

「連中の……委員会を動かす概念存在どもの目的を考えれば、そう判断するほかないのだ」

「目的? ってェと、自分らの復権だったか。概念存在こそが現世の支配者であり、ダンジョンやモンスター以上に畏怖され敬われるべき存在なんだとかなんとか。サークルやらダンジョン聖教過激派やらは知らんけど」

「そうですねー。そのためにそれらを手中に収めようとしたり、あるいはオペレータを従わせようと画策してるんでしたっけー」

「そうだ。そこを踏まえれば、嫌でもオペレータが集まりかつ、世界中の人々の目が集まる今回の式典はまさにうってつけのタイミングだろうと思える」

 

 大ダンジョン時代の到来により、その存在感を薄れさせてしまった概念存在。委員会に与しているモノ達はみな、その復権のためにこそ動いていると鬼島は言っていた。

 すなわちダンジョン、モンスター、果てはオペレータの支配と屈伏。それによって現世を再び、概念存在を畏れ敬う世界に仕立てようとしているのだ。

 

 そうしたことから、むしろS級認定式は彼らにとっての好機、あるいは決戦場なのだとヴァールは語る。

 多くのオペレータが集い、世界中も注目している。そんな中をサークルとダンジョン聖教過激派が襲撃し、並み居る実力者達を屈伏させ、あるいはそこにスレイブモンスターだの、ミュトスの権能だのさえ使ったとするならば──

 そして、それをアンドヴァリあたりでも、神の力だの悪魔の施しだのとでも言えば──

 

 ──人々の畏敬は再び、概念存在のほうに向けられるかも知れない。そう考えられるのだ。

 

「その場合、間違いなくミュトスの権能は投入される。ワールドプロセッサが認定式に合わせて彼女を降臨させようとしているのも、つまりはそういうことだろうな」

「サークルと過激派、委員会にとっても認定式がある種、決戦ってことか……」

 

 人の、人による、人のための式典の裏で画策される概念存在達によるある種の革命。それが8月25日、首都圏にて起きるかもしれない。

 ここに来て香苗さんの認定式がある種の決戦の舞台となりそうなことに、俺は人知れず吐息を漏らしていた。




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