攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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大家族だぜ!!!!

 近く迫る決戦の匂いはさておき、俺達はシステム領域はとある都市オブジェクト部分、中枢ビルを出て町中に出ていた。

 時間間隔を現世地球、それもおそらくは日本のそれに合わせているだけはあって太陽も昼下がりの様相だ。といっても気温だけは熱くも寒くもない、人間の生存に適したものになってるけどね。

 

「別に人間が訪れるわけでもないのに、大したこだわりだなあ……大気の概念や構成されている成分、適用している法則さえもきっちり持ち込んでるし」

「どうせやるならそれなりにしっかりとしませんとな。まあ、我々は結局受肉していないため、味覚についてまではさすがにトレースできなかったのですがね」

 

 感心する俺に、アフツストが愉快げに語る。

 太陽から空から何から何まで、それこそ物理法則だのまで全部データ領域から引っ張り出してきたオブジェクトやプログラムなわけで……

 言うなれば今現在のシステム領域とはもはや、現世や概念領域にも並びかねない第3の知的生命体生存圏と言えるものになっている。

 

 といってもさすがに精霊知能それぞれが受肉まですることはできていないみたいで、食事についてはまったく触れていないみたいだ。

 シャーリヒッタがケラケラ笑いながら応える。

 

「そりゃそうだ。だから精霊知能達が挙って現世観光ツアーだの、父様ご挨拶ツアーだのを企画しようって息巻いてるんだしなァ」

「ああ、アレか……委員会やミュトスの件、何より世界の立て直しのことを踏まえればいささか時期尚早ではあるが、さりとてガス抜きも必要だからな」

「500年ほぼ不休で働いてきたわけですからねー。みんなも人格を持ってるんですからリーベちゃんやシャーリヒッタみたく、バカンスはそれなりに取るべきですよー。福利厚生、福利厚生!」

「うむ。それゆえ今後は現世に倣い、精霊知能達を各部署各担当各グループに細分化する。そしてそれらごとに稼働日と停止日を織り交ぜての、いわゆるシフト勤務制にすることを視野に入れている」

 

 おお……精霊知能達の中にもついに福利厚生の概念が生まれようとしている、気がする。

 これまでは事情が事情ゆえ、あらゆる精霊知能が常にフル稼働で対処にあたっていたんだけれど、今後はさすがにそこまでしなくても良くなるのは間違いないからね。

 ワールドプロセッサもさすがにそのへんはしっかり、早急かつ適切に制度を整えてくれるだろう。

 

 散々ブラックな目に遭わされた分、今後はバカンスとか旅行とかも含めて、各々のなライフバランスを楽しめるシステム領域になって欲しいもんだ。それこそ《ワークライフバランサー》、なんてね。

 っていうか、それはそれとしてシャーリヒッタの言葉は聞き捨てならない。俺は彼女に聞き返した。

 

「現世観光ツアーはともかく、俺ご挨拶ツアー? さっき帰還を歓迎してくれた精霊知能達の何人かも言ってたけど、それって一体……」

「精霊知能達が父様の家、今やオレの家でもある山形家を訪ねてご挨拶するツアーです! 父様の暮らしぶりや雅彦サンや由紀サンのお話を聞いたりして、コマンドプロンプトの人としての生に触れるすげー企画ですよ!!」

「怖ぁ……観光資源かな?」

「ちなみに類似企画としてヴァール挨拶ツアーとかWSO見学ツアー、あと決戦スキル保持者を見に行こうツアーとかも案として出てます!」

「山形公平はともかくとしてWSOだのワタシだのを見てどうするのだ、一体……」

 

 戦々恐々としてヴァールと二人、呻く。俺に会いたい子がいるっぽいのは前にも聞いてた気がするけれど、そんなツアープランなんて組んでまでやることだろうかと思わなくもない。

 まして俺の場合はなんやかや余暇も多いし構わないところはあるんだけど、よほどいろいろ大変な立場にいるヴァールなんかは普通に仕事の邪魔だったりしないだろうか。

 

 これまでもこれからも世界の探査者事情を牽引するカリスマだよ? この子。シャイニングなくせに陰キャな俺とはまるで違う、モノホンの超有名人さんだ。

 もしも精霊知能達が実際にツアーで彼女に会いに行く時が来るとして、忙しいからまた今度にーなんて邪険にされるってのも悲しい光景だなあ。

 未だ見ぬ気まずい光景を幻視して、俺はヴァールの肩を軽く叩いた。

 

「ヴァール。弟妹達がお姉ちゃんの仕事場を見学するんだ。多少気恥ずかしくても胸を張って教えてあげような」

「唐突になんだ!? というか冗談でもシャーリヒッタ専用の設定を持ち込まないでくれ、億単位で弟妹が増える! あなたにとっては娘息子だ!!」

「怖ぁ……収拾つかなくなるなそれ」

 

 仰天して俺を見てくる3女さん。システム領域にシャーリヒッタの世界観を持ち込むと実際、三姉妹どころじゃなくなるんだよなあ。

 二人して、無数の精霊知能が父様だの姉様だの言ってくるカオスを幻視してか顔を見合わせる。そうしてからこのカオスを元から内包しているシャーリヒッタにゆっくりと視線を向けると、彼女は満面の笑みを浮かべて豪語するのだった。

 

「大家族だぜ!!」

「コマンドプロンプト? どうしてくれる、ただでさえ厄介な世界観がさらなる進化を遂げつつあるではないか」

「ご、ごめん……」

 

 もはや香苗さんの救世主思想にも匹敵しかねない、システム領域家族思想……

 その成立に一部寄与してしまったことを受け、引きつった顔で笑うヴァールに謝る俺ちゃんなのでした。




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