攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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唐突で悪いが伝道の時間だオラァッ!!

「────かくかくしかじかでーこぼこ。というわけでそんなこんなのシステム領域ぶらり旅をしてきたわけなんですけども」

「おお……! 今日という日はなんという素晴らしい日でしょうか救世主様の魂の故郷へのご帰還についての貴重なお話をこうしてお伺いできるだなんてしかしかの領域もまた我らが救世主山形公平様を何よりも尊く何よりも尊ばれるべき存在であると当然認識しているのですね10万もの信者を引き連れての大歓迎だなんて悔しいですがこちらではもろもろ土地や距離的な問題からまだまだ実現できそうにない大動員です我が身の力不足に忸怩たるものを感じるのはたしかですがしかし見ていてください救世の光もそう遠くない日に必ずや1億の信者によって救世主様のご降臨を歓喜とともに受け入れてみせましょう!!」

「えぇ……?」

 

 怖ぁ……分かっちゃいたけど初手からこれか。胃がもたれちゃいそうなフルスピードぶりである。

 システム領域から帰還して翌、8月21日の朝。数日ぶりにお会いした香苗さんと商店街にある喫茶店にて、軽食なんてつまみながら事の顛末を語ったところ、案の定すぎる反応が返ってきて俺は遠い目をした。

 

 この店は探査の合間とか軽く話をする際によく、利用している喫茶店だ。それゆえ伝道師さんが頻繁に句読点を飛ばす現場でもある。

 だからだろう、いきり立つ彼女には店員さんからお客さんまでまるきり反応していない。割といつものことなのでもはやスルー対象なんだね。

 

 なんなら反応した時点で伝道されかねないし、実際ソレやられて信者入りしてしまった人もいないこともない。ここの店長さんとか。

 そんなだからある種この喫茶店ならではの光景にもなりつつあるらしい香苗さんは、興奮しきったキラキラ輝く瞳で俺をガン見し、連続で句読点をモルディブあたりにまで飛ばす勢いでまくし立ててきていた。

 

「それに加えてリーベちゃんヴァールシャーリヒッタに加えてさらなる使徒候補と言えましょうアフツストさんにミュトスさんの登場とは伝道師として実に昂ぶりますシステムさんの深慮遠謀もまた翻せばそれに比肩する救世主様の偉大さを補強する形になるととれますだってそうでしょう彼女の策謀でさえ救世主様のすべてを見通す深遠なる智を秘めたその眼においては見抜かれたわけですしそもそも件の暗躍に御身の慈悲深さが大きな役割を果たしているわけなのですからたしかにあの場面私も立ち会っていましたが最終決戦の場においてなお敵だったものへの慈愛と優しさを失わず相対していたお姿はまさしく神話級の尊さでしたそれを利用したシステムさんに思うところがないとは言えませんがそれでも世界のための判断とすれば致し方ないところなのでしょうねああそれにしても救世主様の素晴らしさが留まるところを知りません改めて我が心に宿る信仰心を強く認識できています毎年毎月毎日毎時毎分毎秒毎瞬救世主様への敬意と愛情が膨らんでいきますこれを一言で言うならばそう、救世主様バンザイ!!」

「伝道おかわり!?」

 

 やめてくれもうお腹いっぱいだ、これ以上伝道されたら頭がどうにかなってしまうよ怖ぁ……

 やはりというべきか、システム領域に纏わる話は伝道師さん的には完全にストライクど真ん中らしい。信仰対象が本来いるべき領域の話で、基本的に情報らしい情報もほとんど入手できてなかった分野の話だものなあ。

 

 それがいきなり俺本人から、実体験の形で語られたらこうなるのもおかしくないのかもしれない。いやおかしいけどね、言動そのものからしておかしいけども。

 コホン、と空咳をして俺は香苗さんを落ち着かせた。軽く光ってみせて荒ぶる彼女を鎮め、その手をそっと握って宥めたのだ。

 すん……と静かになる彼女。喫茶店内に平和が訪れたけど、やはり店員さん達もお客さん達もまるで平然としている。

 ちょっと訓練され過ぎでは? 逆にドン引きしつつも俺は、香苗さんに慎重に話しかけた。

 

「えーと……まあそんな話はひとまずここまでにしましょう。今回、大事なのはそこじゃないですし」

「あなたの話以上に大事なことなんてあなたそのものをおいて他にはありませんが……まあ、少し伝道への情熱が迸っているのはありますね。これはまた動画の形で昇華するとして、今は本題に入りましょう」

 

 元のクールな雰囲気を取り戻して俺の提案に応じる香苗さん。この人いつもこうなんだけど、伝道師スイッチと探査者スイッチの切り替えがめちゃくちゃ早いんだよね。

 サヨナラ句読点からオカエリ句読点までのテンションの落差が物理法則無視してるんよ。それだけどちらの側面もプロ意識を持ってるってことなんだろうから俺としては敬意を払うべきとは思うんだけど……慣れていてもこの切り替えっぷりには内心で唸らざるを得ない。

 

 さておき、せっかく落ち着いた状態になったんだから本題に入ることにする。

 今日、香苗さんとこうしてここにいるのは別に土産話をするためだけでもなければお茶するためだけでもなく、ましてや伝道師によるゲリラライブを企画しているわけでもない。

 おそらくはそれなりにシリアスな話になるだろう、一つの連絡を昨日、彼女から受けた末にここにいるのだ。

 

「青樹さんとの面会、アポ取れたんですね……今日の午後から、一時間だけ」

「ええ。私が首都圏に行く前にどうしても、公平くんも交えてあの人とは話をしたかったのです」

 

 元倶楽部幹部、青樹佐智。人造オペレータとして火野に利用され悪事を働いた、香苗さんの師匠。

 今は県警によって確保されているその人との面会を、俺達は午後に控えているのだった。




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