攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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史上最強の後方支援ヤマガタ

 郷田さんに見送られ、県警本部施設を出る。8月下旬の15時前はまだまだ暑く、けれど空は曇りがちで太陽が隠れているからか、陽射しがきつくないため幾分過ごしやすいと言える気候だろう。

 まあ俺達は因果操作で快適な温度で過ごしてるんですけどね。駅に向かい歩きがてら、香苗さんと話す。

 

「青樹さん、お元気そうで良かったですね。いや、捕まってるのにこう言うのもなんですけど」

「逆に、捕まったからこそ持ち直したと言えますよ……火野の呪縛から解放されて己を見つめ直し、ようやくあの人はあの人自身を取り戻せたんです、きっと」

 

 先程まで面会していた青樹さんが、すっかり顔色もよく精神状態まで快復傾向にあったことに満足してお互い、顔を見合わせて笑う。

 いろいろあったし、罪を問われるべき立場の人ではあるけども、それでも永い間ずっと苦しんできた人でもあるんだ。少なくとも悪夢から解放されつつある現状は、彼女を多少なりとも知る俺達にとってはひたすらに喜ばしいことだよ。

 

 これから、倶楽部幹部は裁判を受けて法により裁かれ、償いの日々を送ることになる。

 4人それぞれ罪過の量は異なるだろうから一概にその期間の長さを予想はできないけど、それなりの日々を費やすことになるはずだ。

 

 いつか。彼ら彼女らが償いを終えた末に、真っ当な形での社会復帰をしてくれることを願う。

 俺としてはそれだけだね、もはや。倶楽部案件が終わった今、そんなことを祈るくらいしかできることはないのだった。

 

 駅について切符を買い、ホームに上がる。

 電車が来るまであと数分だ、この調子なら15時までには家の最寄り駅にまで辿り着けるね。

 ちょっと時間、浮いたなあ。家に帰っても良いっちゃ良いんだけど、なんだかもったいない気もする。

 

「夕方というにはまだ早いですね……良ければどこかうろつきますか? ああ、全探組施設に行って何かしら、依頼を見てみるのも良いかもしれません」

「良いですね。スマホでも見れますけど、まあ暇つぶしがてら」

 

 香苗さんも同じ思いらしく、全探組への立ち寄りを提案してきた。ダンジョン探査の依頼、受けるかどうかは別にして一通り見てみるのはどうかって話だね。

 最近はネットワークの発展によりスマートフォンでも依頼の確認や受諾なんてのがもちろんできる。専用アプリもあるし、使用者は少ないけど探査者専用のコミュニケーションツールまで有るほどだ。

 

 それでもやはり実際に施設に行って、いろいろこの目で見てみると思わぬ発見があったりするものだからね。それに談話室なんかだと思わぬ知り合いがいたりするかもしれないし。

 ある意味、探査者にとっての時間潰しには結構良い場所……全探組の施設はそんなところなのかもしれなかった。

 

 電車がやってきた、当然それに乗る。

 車内は人も疎らで、問題なく座席に2人、並んで座れたよ。はふう、と息を吐いてリラックスしながら香苗さんと話す。

 

「依頼を見るのもなんだか久しぶりですよ、俺。しばらくは倶楽部案件ばかりでしたし、こないだ突発的に関口くんと探査しましたけど、その時は彼が手続きしてくれましたし」

「依頼書を確認して申請、承認を受けて行う通常の探査、という意味ではエリスさんや葵さんと行った山中ダンジョンが最後でしたか。WSOの取り計らいで倶楽部案件にまつわる活動がすべて探査者活動として扱われていますから、全体で見るとやはり公平くんの仕事量は壮絶なものがあるのですけどね」

 

 なんか久々に普通の探査者らしいことをするんじゃないだろうか? そう気づいて言えば、香苗さんもそういえばそうですねと答えてくれた。

 委員会絡みのあれやこれやも軒並み、通常のダンジョン探査と同程度かちょっと色つけての評価で探査者活動にカウントしてもらってはいるから、最低限以上には仕事できてるんだけど……それはそれとしてそろそろ普通の生活が恋しいからねえ。

 

 ただ、言ってる間にまた今度はサークルだの過激派だのだよ。まったく浜の真砂の尽きるともとはよく言ったもんで、なかなかポコポコ湧いてきてはなんやかや悪さするもんだよ。

 

「とはいえ、首都圏の騒動にはそこまで俺、メインで首を突っ込むこともないっちゃないと言いますか……学校もありますしね」

「夏休み期間ほどまとまった時間、向こうで活動することは難しいでしょうね、さすがに」

「ええ。それにそもそも、先行してる捜査官チームがメインで対処してもいますし。"こちら側"の問題についてはミュトスとシャーリヒッタがメインで担当しますからね」

 

 首都圏で待ち受ける戦いにはもちろん参加する予定なんだけど、正直倶楽部案件ほどかぶりつきで関わっていくこともなさそうなのが実際のところだ。

 アンジェさんやランレイさん達、向こうの捜査官チームのお手伝いがメインになるだろうか。

 

 それにこちら側とはぼかしたけれど、ぶっちゃけシステム側の問題──異世界の神の権能については、そっちもシャーリヒッタやミュトスというカウンターがすでに動き始めてくれている。

 なのでハッキリ言うと俺ちゃん、今回も後方支援担当とか裏方仕事になりそうなんだよね。サークルに協力してるだろう概念存在の相手とか、異世界の神の権能についてとかそのへんかなあ、俺が多少なりとも能動的に動くって言ったら。

 目的の駅についた。ドアが開く電車を降りつつ、香苗さんに俺は告げる。

 

「俺にできるお手伝いは可能な限りしますけど……そもそも現世のことは現世で解決してもらえるのが一番いいってスタンスでもありますからね。すみませんがそこは承知していただけますと助かります」

「もちろん分かっていますよ、私も他の関係者のみなさんも。むしろ、それでもなおお力添えをいただけますこと、とてもありがたく思います」

「……こちらこそ。ご理解いただき、本当にありがとうございます」

 

 システム側と現世側の狭間に立つモノとしてのスタンスを語れば、香苗さんは当然のように理解を示し、笑みまで向けてくれる。

 異世界の神さえ関わっていなければ、本来はシステム側の出る幕じゃないのだ……勝手かもしれないこの物言いを、それでも理解してくださるこの人に、俺は感謝の言葉を述べるのだった。




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